Answer 51 

西田から最後に連絡が来たのは2週間前。
つくしの仕事は楓の遺言書を公開し執行することだが、楓が亡くなったことはまだ伏せられているし、西田からゴーサインが出なければどうすることもできない。
何もしないというわけにもいかず、西田が回してくれていた法務処理を細々とこなすことでなんとかここまでやってきたが、なんとなくソワソワとして落ち着かない日々が続いていた。
遺言書は手元に置いておくことが出来ずに、銀行の貸金庫に保管してある。
とにかく目の前の仕事を進めるしかないと、道明寺にいた頃からやっていた司の女性関係の仕事を続けていた。

この仕事も慣れてくるといろいろとおかしなことが見えてくる。
多くの訴えがほぼ同じ内容であることもそうだが、接触した女性のほとんどが精神的苦痛を受けているようには見えなかった。
どこか自分のことではないような、婦女暴行の被害を受けているにも関わらず、悲壮感がない。示談金を提示すると、笑顔を見せる女性までいる。
とにかく不自然で違和感だらけだ。

両方の蟀谷を人差し指と中指で軽く押しながら上を向く。
少し休憩しようとコーヒーを入れてソファに深く腰掛けテレビを点けた。
そして画面に映った見覚えのあるビルを見て、つくしは持っていたコーヒーカップを落としてしまった。

「道明寺…」

彼に危機が訪れていることは経営に疎いつくしにも一瞬で理解できた。
報道陣に取り囲まれた司と雪乃が車に乗り込んでいくシーンが繰り返し映し出されていたが、その表情は硬く緊張感が漂っている。
楓の死去については報道されていないようだが、それではこの騒ぎはいったい何なのか。

道明寺ホールディングスは子会社を傘下にすることで成り立つ持ち株会社であり、子会社の株価が下落を続ければひとつひとつを切り落としていくなどの対策が必要だ。
これがひとつふたつならまだ何とか持ちこたえられても、次々に切り離していくことにでもなれば、道明寺は倒れてしまう。
そして何より怖いのが、世界経済に与える影響の大きさだ。
今や道明寺の力は会社を支える社員や下請け孫請けだけではなく世界各国の経済に多大な影響力を持っている。

楓亡き今、この危機を司はどう対処するのだろうか。


******


楓の死去が外部に漏れ出ているという様子は今のところないようだった。
ただ、これだけの事態に陥っていながら会社のトップである楓が姿を見せないのは不自然で、仮に今株価の下落を食い止め上向きにできたとしても再び同じようなことが起きるのは目に見えていた。
かなりのリスクはあるがここで楓の死去を国内外に発表し、何重にも重なったピンチを一気に片付けるのが得策かもしれない。

―どこが『ちゃんとしてあります』だよ!

このままでは共倒れだ。

「会議だ」
「すぐに幹部を集めます」

山本に言った司の視線はすでに前を向いていた。

「行くぞ、久我」
「はい」

雪乃も司の後に続いて会議室へと向かっていった。


******


「ちょっと…これ、本当のことなの?」

大河原グループ本社の専務室で響き渡る滋の声。
秘書に声が大きいと制され両手で口を押えた滋だったが、目の前に置かれた資料に何度も目を通し、信じられないと言う表情で呆然としていた。

「マジでこんなことが起きてるっていうなら、これは司に勝ち目はないよ…」
「どうされるおつもりですか?」
「どうもこうも…大したことのない傷なら司にだって十分対処できるでしょ?あたしなんかよりずっと才能あるんだし…でもこれは…」
「わが社とは少しですが業務提携もしておりますし、道明寺ほどの影響力のある会社では打撃が大きいかと…」
「だよね…まったく、こんなことになる前にどうにかできなかったの?」
「いえ、ここ数日で一気に起こったことですので…」
「ウラがあるって言いたいの?」
「おそらく」
「ねえ、あたしのスケジュールってどうなってるの?」
「ここ一週間は社内業務です」
「ちょっとパパのところに行ってくる」

それだけ言うと滋は専務室を出て社長室に向かう。
単なるワガママで済むか、ビシャリと切り捨てられるか。
一か八かの賭け。
滋は大きく深呼吸して社長室のドアをノックした。

「どうぞ、お入りください」









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4 Comments

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2018/12/22 (Sat) 18:32 | REPLY |   

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2018/12/22 (Sat) 21:20 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

こんばんは。
すみません、私こそコメ返が追い付かなくて💦
今日1日バタバタしていたのと明日子供の部活で1日朝っぱらから遠出なので、今日はまとめて返信することをお許しください。
スリーさんも無理に全部コメントせずにたまに入れてくだされば充分嬉しいですよ!!

さてさて、えーとそうなんです。気付いちゃいました?ミステリー化してますよね、完全に。
ラブどこ行った的な感じになってますがそこはスルーで…。
株価が上がったり下がったりのくだりは、軽く調べてはみましたが、お手上げ。
こうなったらもうテキトーで乗り切ろうくらいの勢いですのであまり深く考えずにお願いします(笑)

1日3話更新って展開がものすごい(笑)
ちょっと後悔し始めててますけど、このペースで年内厳しいと4話5話とかになるかも(爆)
なんとかスッキリと新年を迎えていただきたい私です。

2018/12/22 (Sat) 22:39 | REPLY |   

やこ  

たかあややん様

こんばんは。
コメントありがとうございます。全然長くありませんでしたよー。
なんせ毎日私の書くお話よりもすごい勢いでコメント下さる方がいらっしゃいますのでお気になさらず懲りずにまたコメントお待ちしてます。

私は父も母も健在で、ごく近しい人を見送ったことがないんです。
(去年母親のように慕っていた叔母が亡くなりましたが、ここ数年疎遠になってましたし、叔母は叔母の家族がありましたので…)
実は楓さんの旅立ちをどう書いたらいいのかすごく悩みました。
読んでくださる方の中には、似たような境遇でご家族を見送った方がいらっしゃるかもしれないし…。
キャラをお借りして書いた空想の世界ですが、皆さんに様々なことを感じていただけるのは本当にうれしいことです。
これに懲りずに、また応援コメントをお待ちしてます!!

2018/12/22 (Sat) 22:49 | REPLY |   

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