Answer 49 

※お知らせ※

なんとか年内完結を目指し、本日より3話ずつ更新したいと思います。

6時 12時 18時を予定しております。

都合により更新されない時間帯もあるかもしれませんがが予めご了承ください。





ベッドの横にある椅子に腰かけたまま静かに眠る楓を見つめていると、これまで楓との間に起きた数々の出来事が次々と脳裏をよぎった。

初めて会ったのは高校2年の時、司の誕生日パーティだった。見つめられるだけで凍り付きそうなほどの威圧感と恐怖は今でも忘れることができない。
つくしが家族と暮らしていた家に司から手を引くようにと大金を持って現れたり、NYの屋敷で偶然出くわした時まではつくしにとって楓は明らかに住む世界の異なる存在だった。

しかし司が港で刺された事件の後、見舞いに訪れた姿を見て、彼女には彼女なりの息子への愛情があったことを知ると、つくしの中で道明寺楓という女性へのイメージが少しずつ変わっていく。
そして彼女は司の将来の為に、つくしを傍に置こうとした。

―本当に、不器用な人…。

本来なら痩せて弱りきった姿などつくしに見せたくはないだろう。
そんなことを思うと自然に涙がこぼれて落ちる。

「……情け…ない…わ…ね…」

ふと声のする方を見ると、瞳だけをつくしに向け楓が呟いている。

「社長…来るのが遅くなって、本当にすみません」

何か言いたそうにしてはいるものの、苦しさで思うように言葉にならない。
楓の左手を握りながら顔を近づけると弱々しく呟いた。

「…司を…道明寺を…頼みます…」
「ええ。決して社長との契約を反故にはしません、約束します」
「遺言…遺言通りに…」
「大丈夫、完成させてあります、心配しないで…」
「……牧野…さん…」
「なんですか?社長?」

それほど言葉は多くなかったが、それでも限界に近い楓は苦しそうに顔をゆがめている。

「先生を呼びますね。もうしゃべらないで」
「ま…まき…のさ…ん」
「はい」
「ごめ…ごめんな…さ…い、ありが…と…う、つか…さ…を…たの…みま…す…」

謝罪と感謝と―そして

哀願。

つくしの目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
これまでかけられたことのない言葉。
どんな気持ちでこの3つ言葉を残したのか。

弱々しい左手を握る両手に、力を込めてつくしは応じる。

「安心して休んでください。私も…社長に…お母さんに感謝してます。本当にありがとうございました…」

『お母さん』などと呼ぶつもりはなかった。それでも目の前の消えそうな命を前に、つくしの口から自然とその言葉が口を出た。
握りしめた手をしっかりと握り返していた楓の手の力は次第に弱くなり、呼吸が荒くなり始めた。

「お姉さん!社長が!先生を呼んでください!!」

椿が病室に入ってきて、楓のもとへ。つくしが椿に場所を譲った直後に、バタバタと医師や看護師が慌ただしく入り込んできた。

医師はモニターや点滴をチェックすると椿に

「ご家族をお呼びください」

そう呟いた。


******


病室のすぐ横にある控室で待っていると、再び病室の周囲が騒がしくなる。
どうやら司が到着したようで、山本の姿が少しだけつくしのいる場所から見えた。
続いてタマが到着し、つくしのいる場所にやってきた。

「まったく、早すぎだよ。こんな年寄りを遺してなんだっていうんだい…」
「先輩…」
「さ、行くよ」
「え…どこへ?」
「病室だよ。大丈夫、こんな時だ、坊ちゃんもあんたのことに気づく余裕なんてないはずさ」
「でも…」
「なら西田か山本みたいな大男にでも隠れてりゃいい」
「…」

言われるがままにタマに付いて病室の端に入り込んだつくしは、ベッドの横に呆然と立ち尽くす司の背中を見つめていた。
185cmの大きな体が今日はやけに小さく見える。

「なんだよ、もう逝くのかよ」
「司…お母さまの手を握ってあげて…」

椿に促されて手を握った司は思う。

記憶に残る母の手は大きく、偉大だった。
それが今は自分の手の何分の一にも小さく、そして弱々しい。
だけどその小さな手は温かく、確かに血が通っていた。

「お母さん…」

朦朧としている楓の目をまっすぐと見つめて司が呟く。
椿も涙を流しながら楓を呼び、司とは反対の手を握った。

「つ…ばき…つか…さ…」

楓は自らがお腹を痛めて産んだふたりの我が子の名前を呼び

「しっ…かり…たのむ…わ…ね…、わた…くし…のもと…へ…きて…くれ…てあ…り…がとう…おと…う…さま…を…たの…みま…す…」

そしてゆっくりとふたりを交互に見つめ、やがて目を閉じていく。

「お母さん!」「お母さま!!」

完全に目を閉じると苦しそうにしていた呼吸がみるみるうちに穏やかになっていく。
せわしなく上下していた胸の動きもだんだんゆっくりになり、やがて呼吸自体が弱くなる。

とても安らかで…静かな旅立ちだった。









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2 Comments

やこ  

ku***n様(拍手コメント)

おはようございます。
朝イチでも拍手コメント等、ありがとうございます。
普段コメント返信は夜などにまとめてさせていただいているのですが、いてもたってもいられず返信いたしました。

楓さん、ついに旅立ちました。
この49話は少し前に書きましたが。すごく気を使って書いた覚えがあります。今回楓さんの病名は敢えて触れていませんが、ご想像の通りだと思います。
私の血縁で病に倒れた人がいないので、想像と少し調べた程度で書かせていただきましたが読まれている方の中には辛く悲しいことを思い出させてしまうのではないか、そんなことを思いながら書いていました。
そして「お母さん」の言葉。私の書くお話をお読みいただくとわかるかと思うのですが、司が楓を呼ぶ、もしくは指すときに「ババア」という呼び方は滅多にしないんです。Answerでは1~2回くらいしたかな?二次のつかつく書き手さんはよく使われますが、私はあまりこの表現が好きではなくてね。「お袋」という表現を使わせてもらってるんです。
原作の司の誕生日パーティでこわーい楓さんを「お母さん」と呼んでいるのが印象的で、今回敢えてこの表現を使わせてもらいました。
読んでくださる皆さんにたくさんのことを感じていただけるよう、頑張りたいと思います。
ありがとうございました。

2018/12/22 (Sat) 06:49 | EDIT | REPLY |   

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2018/12/22 (Sat) 10:27 | REPLY |   

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