Answer 44 

「ふん、まあそれくらいのことあの女はしそうなもんだな」

控室で椿にこれまでの経緯を知らされても、司は特に顔色を変えることもなく淡々と聞いていた。

「まさか親父よりも先にアイツのほうがくたばるとは…」
「口を慎みなさい、司」
「姉ちゃん、そんなこと言ってる場合かよ?現に道明寺楓の命は消えかけてるじゃねぇか。俺はあの女の息子である以前に、周囲がどう思ってんだかは知らねぇが道明寺の実質的な経営者なんだぜ。あの女が抱えてそのまま放置してある仕事だってあるだろ?それをどうするつもりなんだよ」

司の尤もな言い分にさすがの椿も黙ってしまった。

「社長の抱えていらっしゃる仕事は、すでに大方完了しています。病院にいらっしゃる間もオンラインでされていました」
「さすがだな、去り際も見事なもんだ」
「司…」
「で?なんで弁護士までここにいるんだよ。赤の他人のくせに」
「それは…」
「遺言書のことだと思われます」

椿が言葉を濁しているところをすかさず西田が答えた。

「牧野様は道明寺の弁護士です。社長もそのお人柄と誠実さを買っていらっしゃいますので、遺言書の作成を依頼したと聞いております」
「フン、遺言ねぇ…」
「これだけの規模ですから、後々揉めることがないようにと専門家である牧野様にご依頼されました」
「俺は財産分与云々に興味はない。なんなら姉ちゃんが全部相続したっていんだぜ?」
「そういうわけにはいかないわ。私も財産が欲しいとは思わないけど、遺言って家族やお世話になった人達に遺す最後の愛情じゃない?」
「愛情だと?」

楓に最も縁のない表現に司は大声を上げて笑っていた。

「結局あの女の愛情ってのはカネのことなんだな。そうだな、そうだろうよ」
「ちょっと…司…」
「まあいいさ。そんなのはわかり切ってることだしな。で?あの女はいつまでもちそうなんだ?」
「なんて言い方を…」
「主治医の先生からは、1週間程度ではないかと…」
「フン、で?道明寺のトップの死去ともなれば、大騒ぎになるだろうな。その対策はどうするつもりなんだよ」
「それをあなたに相談したいと思っていたのよ」
「相談だと?今の今まで俺には黙っていたくせに、先が見えてバレたのをいいことに『相談』かよ。笑わせんな」

司の言い分もわかるだけに椿は複雑な気持ちだった。
現に自分にも知らされずにここまで来たという意味では司とそう変わらなかったし、そもそも椿はすでに道明寺の人間ではない。

「おそらくこの時点まで司様にも内密にされていましたので、公表されるおつもりはないのではないかと」
「あのなぁ…死んじまった人間はどう公表されようが関係ねぇだろ。ようは残されたほうの対応のことを言ってんだよ。まあ誰が何を言わなくても、マスコミが勘づくのは時間の問題だ」
「もしかしたらお母さまが公にしたくない何かがあるのかもしれないし…それを明らかにしてからでもいいんじゃないかしら」
「フン」

そうこうしていると、控室のドアをノックする音が聞こえ、静かに開くとつくしが立っていた。
化粧で誤魔化してはいたが、その目がかすかに腫れているのを司は見逃さなかったが、つくしが泣いても暴れても今の司にはどうすることもできず、ただ黙ってやり過ごすことしかできない。

つくしと入れ替わりで司は楓の病室に向かい、静かに扉を開く。

先ほどはベッドに横たわって弱々しい姿を見せていた楓だったが、今は上体を起こして司を見つめている。
僅かだが目じりに涙の痕のようなものが見えた。

「座るぜ」

楓は黙ってゆっくりと頷いた。









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2 Comments

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2018/12/17 (Mon) 07:14 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

こんにちは。
例の件は朝お知らせした通りです(笑)まあわかるよね。

楓社長の病気が事態をより複雑にしたのは確かです。そして複雑になりすぎて辻褄合わせに私も頭がいたい(笑)

つくしと別れてしまった今の司は、以前の人でなしみたいな人格をしていますけど、一度つくしに出会ってしまって心を持っています。なので完全な悪に成り切れないところもまた彼の葛藤なんでしょうね。
さあ、明日は親子の対話。いったい何を話すんでしょうね?知ってるのは私だけ、ヒャッホー(・∀・)ニヤ

2018/12/17 (Mon) 14:49 | REPLY |   

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