Answer 31 

山本に弱い自分を見せたときに、司の気持ちは決まっていた。

自分を捨てた女を忘れることができないなら、一生恨んで生きる。
そして恐らく自分たちを引き裂くキッカケを作った母親も憎んで生きようと。

あの時から2年の時が経ち、仕事に打ち込み成果を上げてきた。
酒と睡眠薬の力を借りて眠る生活は変わらなかったが、憎しみだけが司を突き動かしていた。

雪乃との婚約だけは頑として認めず、宙に浮いたまま2年と言う月日が流れていたが、以前のように邪険にすることはなくなり、お互いにビジネスパートナーという意味では良好な関係を築いてきたと言ってもいい。
時には意見の相違に激論を交わすこともあったし、協力しながら目的を達成したこともあった。
ただ、それはビジネスにおいての関係で、決してプライベートでふたりの距離が縮まることはなかった。

「今日最後の案件です。中途採用の書類ですが、一応目を通しておくようにとの社長の指示です。どうします?代わりに決済しましょうか?」

雪乃がバインダーを持って司の元へやってきた。

「中途採用?この時期にか?何も聞いてねぇぞ」
「法務部門の採用のようです。あそこは法務部長に権限を一任してますので…。どうしますか?」
「まあいい、それくらいは俺が見る。置いといてくれ。お前もそろそろ帰れ」
「わかりました」

部屋を出ていく雪乃を見送った司は、ドカリと椅子に腰を沈めた。
ただ仕事だけをこなし生きてるのか死んでるのかわからない毎日。目に見えるものすべてがグレーに見え、怒りと悲しみ以外の感情が生まれることもなかった。
どうせ、この目の前に置いてある書類を見ても何も感じない。

そう思っていた。

何気なく手に取った書類をみた司の表情が、一瞬歪んだのを山本は見逃さなかった。


******


つくしは思った。
人はこれほどまでに変わってしまうものなのか、と。

目の前に立つ男の自分を見る目は、敵を見る目だった。

「今更、ここへ何しに来やがった」

司の言うことは尤もで、『夢を叶えるために邪魔』になった男の前に現れた女を軽蔑するのも無理はない。
理由はどうあれ自分は司の人生を狂わせた人間で、つくしにそれを責める権利はなく、つくし自身もそれは覚悟の上だった。

「法務部門に配属されました、牧野つくしです」
「そんなのは言われなくてもわかる。俺が聞きたいのは何故この場にお前がいるのか、だ」
「NYと日本の弁護士資格を活かせる場がここだったからです」
「ふざけんな、俺は認めた覚えはねぇ」
「楓社長に採用していただきましたので、副社長のお許しは特別必要ないかと」
「なんだと?!」

つくしが司を変わってしまったと思っている以上に、司もつくしの変わりように驚愕していた。コロコロと変わる表情、優しく自分を見つめる目はそこにはない。
ただ「モノ」として相手を見つめる冷たい瞳が、司に向けられていた。

「人を踏み台にしてまで欲しかった弁護士バッジとやらを手に入れて、満足だろうな」
「踏み台にしたかどうかはわかりませんけど、自分の今の立場には満足しています」

かつて目の前の男の隣に立った時、恥ずかしくないようにと目指した弁護士という仕事に就いたけど、果たして今の自分はどういう人間に見えるのだろうか。
予想していたとは言え、司の刺すような視線と態度につくしの心は折れそうだった。
それでもこの2年間、自分の気持ちを抑え込み、感情を押し殺してまでして手に入れた弁護士という資格と道明寺の法務部門での地位を今失うわけにはいかない。

つくしは司を睨みつけ、動揺を悟られないように心を落ち着かせた。









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4 Comments

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2018/12/04 (Tue) 07:18 | REPLY |   

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2018/12/04 (Tue) 09:03 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

いや~、ついに全くの他人としてふたりは再会してしまいました。

この描写は、司と雪乃の扱いにちょっと悩みましたね。
婚約もいいけど結婚させとこうかな、とか(笑)
でもTakeitで司既婚者ネタで結構衝撃を受けたという声が多かったんで、ここは婚約も拒否っている設定にしました。

さてさて、再会したけどギクシャクしてるふたりです。
ここからどう料理してくれよう(・∀・)ニヤニヤ

逃げないでね!スリーさん!!!

2018/12/04 (Tue) 21:50 | REPLY |   

やこ  

りりあ様

そうなんです、2年の時を経て再会することとなりました。でもなんか希望に満ちた再会ではないですよね…。
ステキな瞬間が訪れるように、私も必死で唯を動かしたいと思います。
コメントありがとうございました。

2018/12/04 (Tue) 21:52 | REPLY |   

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