Answer 28 

「で?この会食の目的は?この女との婚約云々とか言い出すつもりか?」
「わかっているなら話は早いわね」
「何度も言うようだが俺は自分で決めた…」
「牧野さんとは完全に別れたという報告が入ってきています」

―何を白々しい…テメェ等が仕組んだことだろ?

「経営者としてまだまだ半人前の貴方が結婚相手云々に文句を付けるなど笑わせないでほしいわね。いいかしら、これは道明寺家と久我家できちんと取り決めたことです。雪乃さんにはそのために専務として道明寺に来ていただきました。これは決定事項で貴方にどうこう言える問題ではないわ」
「私に異論はありません」
「バカじゃねーの?半人前の俺が結婚?笑わせんなよ。道明寺の恥さらしだってのに」
「何も今すぐに結婚しろとは言ってません。婚約を内外に宣言し、その上で一人前になれるようにふたりで協力する。そのために雪乃さんを貴方の一番傍に置き、信頼関係を築きなさいと言っているのです」

バンッ

「バカバカしい。帰る」
「お待ちなさい、司」
「勝手にやってろ、俺はこの女とは婚約も結婚もするつもりはねぇ。この女が来たなら親父が復帰できなくても道明寺がどうにかなることはねぇだろな。俺は降りるぜ」
「そうはいきません」

楓は強い口調でそう言うと、腕時計をチラリと見て西田に目配せする。
西田はスマートフォンを取り出して操作すると、そのまま楓に渡した。
楓は渡されたスマートフォンを耳にあて、呼び出し音を聞きながら司を見つめた。

「おはようございます、道明寺です」

電話の相手は誰なのか。
司はその光景を無表情で見つめていた。

「ええ……はい……そうね……では司にかわります」

電話の相手にそれだけ言うと、今度はスマートフォンを差し出した。

「誰だよ」
「出ればわかります」

めんどくさそうにスマートフォンに出る司。

「誰だ…」
『道明寺……?』
「!」


******


朝7:00。

毎朝目覚ましをかけなくても5:00に目が覚めてしまう習慣は今でも続いていた。
もう誰もあんな時間に電話してくることもない。
無理に早く起きる必要もないのに、自然と目が覚めてしまうことに虚しさを感じ、毎日無理矢理布団に伏せている自分が時々堪らなく嫌になる。

ごく一部の人にしか教えていないスマートフォンは、ほとんど時計の役目しか果たしていないし、ガラケーに戻してもいいんじゃないかなどと冴えてしまった頭で考えていた。

すると普段滅多に鳴ることのないスマートフォンがピロンと鳴る。

「LINE?」

画面を見たつくしはなんとなく重苦しい気分になった。
相手は西田。
メッセージは

”おはようございます。今から社長が電話をします。司様も同席されていて途中で電話に代わると思いますので、対応お願いします”

「え、ええ?!」

対応とはどういうことなのか。
焦ったつくしは西田に返信しようとして画面をタップする。
するとすでに着信が入り、心の準備もできないまま応答してしまう。

「も…もしもし…ま、牧野ですが…社長…これはどういう…ちょっと」
『ええ、西田から連絡がいった通りです』
「道明寺が同席しているって…」
『はい。その通りです』
「どんな話をすれば…」
『そうね、質問に答えるだけで構いません。では司にかわります』
「ええっ!しゃ、社長!!」

ろくな心の準備もできないまま、急に避け続けていた司と話しをしろとはどういう展開なのか。慌てて電話を切ろうかと一瞬迷っていた瞬間に

『誰だ』

かつて狂おしいほど愛した男の声がつくしの心に直接響く。

「ど、道明寺?!」
『牧野…か?牧野なんだな?』
「…うん…」
『おまっ、何か月も音信不通にしやがって、どういうことなのか説明を…』
「道明寺」

司が途中までまくしたてるように言うのをつくしは遮って、自分に言い聞かせるかのように言葉を絞り出した。

「あんたとあたしは、あの時終わったんだよ。今後一切会わないし、それはあんたのお母さんにもきちんと説明してある」
『お袋に何かされたのか?』
「違う、そうじゃない。遠距離に疲れちゃったんだよ。あたしにも夢がある。それを叶えるためには愛だの恋だの言ってられない。現に司法試験に合格してこれから忙しくてあんたのことを考えてる暇なんてなくなる」
『別にそれでもいいじゃねぇか!今までだってそうやって…』
「……なの…」
『えっ?』

自分でも言ってるのか言っていないのか。当然司には聞き取れるはずもない言葉だったが、つくしは涙声になりそうなのを必死で堪えて言った。

「邪魔なの。あたしが夢を叶えるためには恋愛が邪魔なのよ」

それだけハッキリと言った後、返す言葉もなく呆然としている司の言葉を待たずに電話を切った。

―邪魔なんかじゃない。あんたはあたしの頑張る活力なんだよ

そう言えればどれだけ楽か。
いつか司の隣に肩を並べて立った時、恥ずかしくない自分でいたい、ただそれだけの為に頑張ってきたはずだった。

これからはどれだけ頑張っても、司と肩を並べて語り合うこともなければ微笑み合うこともない。

愛し、愛された思い出だけを心の支えに、生きていくしかないんだと何度も自分に言い聞かせる。
それしか自分に残された道がないことはわかり切ってるのに、涙が止まらない。









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8 Comments

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2018/12/01 (Sat) 07:27 | REPLY |   

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2018/12/01 (Sat) 08:22 | REPLY |   

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2018/12/01 (Sat) 11:47 | REPLY |   

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2018/12/01 (Sat) 13:22 | REPLY |   

やこ  

あきまり様

こちらこそ面倒な手続きを突破して、さらにコメントいただきましてありがとうございます。

限定記事、読めました??
頑張りますので応援よろしくお願いします!

2018/12/01 (Sat) 21:22 | REPLY |   

やこ  

と様

ほんとですね。
一刻も早く幸せにしてあげたいんですけど…
のんびり書かせてもらっちゃってますので、もうちょいお付き合いお願いしますm(__)m

2018/12/01 (Sat) 21:23 | REPLY |   

やこ  

まりぽん様

こんばんは!
ここへ来て悲鳴がチラホラ聞こえてきます💦

やっぱりね、試練を乗り越えてこそのふたりですし、悪者を登場させないと面白くないでしょー?(悪趣味パート2)

つくしが傍にいてこその司、っていうのは私も同意ですね。
でも引き離されてしまった上で傍で働くふたりがどうなるか…
ぶっちゃけ私もきちんと終わらせられるか不安になってきちゃいました( ノД`)シクシク…

頑張ります

2018/12/01 (Sat) 21:27 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

ここのところ総ちゃんターンだったりしてダラダラお話が進んでいましたし、数少ない(オイ)司とつくしの絡みがコレですから悲鳴も聞こえますわな(笑)

ハピエンになるとわかっていてもやっぱりドキドキしちゃうものですか?
お話はまだまだ続きます、頑張って付いてきてくださいね、応援団長!!!

2018/12/01 (Sat) 21:29 | REPLY |   

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