Answer 27 

『なに?司』
「親友からの久々の連絡だってのに、ずいぶんとそっけないご挨拶だな、類」

フランスに留学中の類へ電話をしたのはつくしの行方を尋ねるためだった。
下手な探偵を雇うよりも情報収集能力に長けた道明寺にしては、あまりにもお粗末すぎる仕事ぶりに更に苛立ちを募らせていた。

―情報が遮断されているとしか思えねぇ…

「お前なら知ってんだろ?牧野が今どうしてるか」
『んん…こないだ日本から司法試験に合格したって報告はかろうじて入ったけど、牧野から連絡をもらったわけじゃなし、電話もつながらなくなって俺も探してるし調べさせてるけど、なかなか情報が入ってこないんだ』
「司法試験に合格したって話はどっから仕入れた?」
『ああ、それは合格発表だよ。法務省のホームページに受験番号が発表されるからそれを元に調べてもらった』
「じゃあ、お前にも連絡は入ってないんだな?あきらや総二郎のとこもそんな感じなのかよ」
『たぶんそうじゃないの?総二郎なら日本にいるし何か知ってるかもしれないよ。俺なんかよりも総二郎に連絡すればいいのに』

類の言うことは尤もである。
類はフランス、あきらは今南米ペルーに赴任中の身。総二郎は日本の西門邸に変わらず拠点を置いているわけだから、そこを頼ればいいのだろうけど先日の一件以来連絡は取りたくなかった。

『なにかわかったら連絡はするけど…牧野には牧野の事情もあるだろうし、あまり追いかけ回して邪魔するようなことはやめたほうがいいよ、司』
「うるせぇな、お前に関係ねぇだろ」

久々に連絡を取り合ったというのに、近況を語るわけでもなく『牧野』の行方を尋ねることに終始する司。類は相変わらずすぎる司の行動に苦笑い。

つかなくていいなら類もウソなどつきたくはない。
今は詳しいことを司に伝えることはできなかった。
とは言え類の知る情報は司法試験に合格し、間もなく司法修習に入ると言うことと、新しくなった電話番号だけでそのほかには何も知らない。
電話で話した様子ではいつもと変わりない様子だったが、司には消息を聞かれても絶対に知らせないでほしいと口止めされていたのである。

「まあいい。何かあったら知らせてくれ」
『わかった』

―合格…したんだな…

司法試験に向けて必死に勉強しているのは司も知っていた。ついにその努力が実を結んだのだなと司も嬉しく思ったのだが、たとえ今回の試験に向けて別れを決めるなど今更なわけで、あり得ないし到底受け入れられない。
そう考えると、やはり何かがあったのだと考えるのが自然だろう。

スマートフォンを放り投げると、司は大きく息を吐く。

「なんでだ、なんでなんだよ牧野…」


******


雪乃の仕事ぶりは想像以上に見事だった。

まずは上がってきた決裁書類をのサインを振り分ける簡単な作業を任せたわけだが、そのまま決済するものはもちろん、再検討のトレーに振り分けたものに関して司が尋ねると、アライアンス(業務提携)のメリットとデメリット、さらには思わぬ穴まで見抜く才能を発揮した。
司も決済をする上でかなり慎重に検討をするのだが、雪乃の仕事には一切無駄がなかった。

雪乃の投入は今後多大な利益を生みだすに違いない。現に少しではあるが雪乃の登場によってわずかに業績が上向き、会社が好転しているのが数値を見てもわかる。

違法スレスレの方法を取ってきた司との差は一目瞭然だった。

コンコンとドアをノックする音が聞こえると、雪乃が静かに『ハイ』と応じる。
すぐに西田が入って来て、社長がふたりを呼んでいるので付いて来くるようにと告げた。

用があるならてめぇが来い、と内心思う司だが社長命令とあれば顔を出さないわけにもいかない。副社長室を出て廊下の一番奥にある社長室へ向かおうとして西田に

「このままエントランスにお向かいください。車を回させますのでお二人ともそちらへどうぞ」
「どこへ行くつもりだ?」
「プライベートな会食だと聞いております」

朝から晩まで知らない女と行動を共にし、嫌気がさしていたところへプライベートな会食とは。

「プライベートなら俺は行かねぇぞ。社長とこの女で仲良く食いにいけばいいだけのことじゃなねぇか」
「副社長も必ずお連れするようにとのことですので、申し訳ありませんがお向かいください」
「チッ」

半ば強制的にメイプルNYの最上階へと連れて来られたふたりは、すでに席に着いていた楓の姿を見つける。

「なんだよ、何の用だ」
「まずはお座りなさい。ああ、雪乃さん、お疲れ様」
「お疲れ様でございます、社長」

自分には労いの言葉のひとつもかけたことがないくせに、と不貞腐れながら司は準備された椅子を乱暴に引き、まず雪乃を座らせた。
それから自分も席に着き、不機嫌そうな表情を敢えて隠さなかった。

「こうしてみると、お似合いよね西田」
「はい、私もそう思っていたところです…」
「え…?そんな」

―なるほど、そういう魂胆か…

確かにプライベートな会食だなと乱暴に言うと、司は楓を睨みつけた。









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2 Comments

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2018/11/30 (Fri) 08:53 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

こんばんは、返信遅くなりました。

なんか、こんなにみなさんの心を揺さぶりまくって、書き甲斐ありますね(悪趣味)
シリアスというよりもドロドロの方向に向かっていて、なんだか私も着地点がわからなくなってきてます。

がんばろ…

2018/12/01 (Sat) 21:21 | REPLY |   

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