Answer 11 

ふたりが心穏やかに過ごせる時間は、思った以上に早く過ぎ去った。
つくしは4日間、司にできる限りの愛を捧げ、司も離れていた分以上の愛情を注いだ。

つくしが希望したように、特別に出かけることもなくピッタリと寄り添い、まるでふたりの体が離れることが罪でもあるように一時も離れることはなかった。

「4日なんてあっという間だな。もっと長く一緒にいられるような気がしてた」
「そう?あたしは充分あんたとの時間を過ごせたと思ってるよ」
「まだまだ足りねぇし」
「でも、そろそろ準備しないとでしょ?」

こんな風に理解を示すつくしに見えるが、本当は司の気持ちが痛いほどよくわかっていた。何故なら司は今離れてしまっても、『次』があると思っているから。

しかしつくしは違う。

恐らく数分後には恋人として最後の時を迎えることになる。
それがわかっているだけに、このわずかに残された時間が地獄の苦しみにさえ思えた。

―今は辛いけど、きっと時間が解決してくれる…

何度も何度も自分に言い聞かせ、どんどん早くなる鼓動を落ち着かせるのに必死になるのであった。

「さーてと、だりぃけど戻っか」

司がそう言った瞬間だった。

バタン!

別荘の扉が大きな音を立てて開き、外から数人の大柄な男性が入り込んできた。

―ああ、いよいよなんだ…この時がきちゃったんだ…

「お、おい!なんだてめぇら!勝手に…」
「司様、お迎えに上がりました」
「なんだと?迎えなんて頼んでねぇぞ!自分で東京まで戻るし必要ねぇ!」
「いえ、そういうわけには参りません。司様には我々と共に、このままNYへお戻りいただきます」

必死で抵抗するのだが、司と同じかそれよりも大柄な男性数人に取り抑えられてどうにも身動きが取れない。

「牧野!牧野!!クソッ!離せ!ぶっ殺すぞ!」

必死の抵抗も空しく、そのまま玄関の方向に引き摺られながら、顔をつくしの方に向けて叫ぶ。
そしてつくしの表情を見た司は愕然とするのだった。

「お前…」

司が得体のしれない集団に取り囲まれているというのに、つくしは表情ひとつ変えないどころか司に冷たい視線を送っていたのである。

「大人しく、行ったほうがいいよ。しなくていいケガするから」
「ま…まき…の…?」

目の前にいた女は、つい数分前まで共に穏やかな時間を過ごし、無償の愛を捧げた女性とは全く別人のような表情で司を見つめていた。

「これは…どういう…」

全く身に覚えのないことで体を拘束され、唯一の味方だと信じて疑うことのなかった女は自分を助けるどころか別人のようになってしまっている。

「さようなら。末永くお元気で」

冷たく言い放ち、つくしが男性のひとりに合図すると男たちは司を強引に玄関の外へ連れ出し、ドアを閉めた。

しっかりと閉じられたドアの向こうからは、抵抗しつくしの名前を叫ぶ声。
エンジン音と共に叫び声が消え、空しく遠ざかる音を確認したつくしは、ガクリと膝を落とし、今この瞬間まで必死で我慢していた涙をボロボロと流すのである。

「…うっうっうっ…」

大粒の涙がフローリングにポタポタと流れて落ちた。

「ごめん道明寺…あたしを…絶対に許さないで…ごめん、好きになって…ごめん…」

つくしは突っ伏せたまま子供のように大声を上げて泣き叫ぶ。
カチャリと静かに玄関が開き人が中に入ってきたことにも気が付かない。

別荘に入ってきた西田は、暫くその姿を見つめて動かなかった。
その表情は切なさを通り越し、苦痛ですらあった。

「うっ…うっ…」
「大丈夫で、ございますか?」

激しく泣いたせいで吐き気を催したつくしに気づいた西田は、慌ててつくしに駆け寄り、背中をさすろうとする。
その様子に気づいたつくしは、西田をギロリと睨み

「…これで…これで…あいつは救われるんですよね…」
「少なくとも、司様が道明寺を率いる間は安泰かと…」
「あいつに…」

西田を睨み続けたまま、つくしはこれ以上なく憎しみを込めた声で

「あいつに…あいつを今以上に辛い目に遭わせないと…約束…約束してください!」

西田はそんなつくしを、憐れむようなまなざしで見つめたまま、無言で頷いた。









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3 Comments

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2018/11/14 (Wed) 07:11 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

ええっ!?電車のなかで倒れたりしませんでしたか?
昨日までのんびりラブラブなふたりが突然引き裂かれちゃったわけだし、つくしはつくしでめっちゃ冷たいし(゚Д゚;)
でも、あんなこといきなりされたら司じゃなくたってキレるし暴れるよね…?

司以外のCPって、まず司との別れが前提ですよね。
記憶喪失からの分岐でそのまま、ってお話もあれば、無理矢理別れさせたりするものもあります。
それって難しいよなぁ、っていつも思って類つくとか総つくさんに大して、大変だな、って思ってたんですよ。
しかーし!実は私も教習所とリオ以外はすべてふたりを別れさせてることに気が付きました(笑)読み直してみたら、そこめっちゃサラッと流してるし(爆)
そして今回も懲りずに別れさせました。

今回は、3人くらいに泣いてもらえることを目標に、頑張りたいと思います(少なっ!)

2018/11/14 (Wed) 11:23 | REPLY |   

やこ  

koko様(拍手コメ)

こんにちは。拍手コメ、ありがとうございます。
まだ始まったばかりなのに泣かないで!!!
と言いたいところですけど、結構ヒドイ別れ方書いちゃいましたしキツイですよね…。
こんなの無表情で書いてた私って、鬼かな…。
これまで書いたことのないお話を書き始めてしまって、どうなることかと自分自身も迷走中です。
皆さんの心を揺さぶりつつ、最後は幸せな気分で「fin」と書けることを目標に頑張ります。
またコメントお待ちしています(^▽^)/

2018/11/14 (Wed) 11:27 | REPLY |   

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