Answer 14 

「騒がしい登場ね。そろそろ来ると思ってましたけど…」

楓は先日会ったときよりも心なしか痩せているように見え、化粧で顔色の悪さを誤魔化してはいるが、真っ赤な口紅だけが異様に目立っていた。

「会社のトップに会うためにはね、アポイントというものが必要なの。電話の1本でも寄越せばこんな騒ぎにはなりません」
「あなた方もあたしに会いに来るときはいつも突然ですけど…庶民にアポイントは必要ないとでも?」

その問いには答えない。

「まあいいわ。それで?今日は先日の契約の結論を出しにいらした、ということでいいのかしら?」

結論など出るわけもないことをわかって言っていると思うと無性に腹が立ったが、相手は病人だ。手加減するつもりはないが、穏やかに応対しなければ、と心を落ち着かせる。

「申し訳ありませんが、まだ社長の愛情表現に賛同したとは言えませんし、自分の将来の一部をここで諦める決心が出来ているわけでもない」
「ではなぜここへ?」
「社長の本心を聞きに来ました」
「本心ですって?それは先日きちんと…」
「社長のご病気のことは存じてます。そのことでいろいろと急いでらっしゃるということも理解しているつもりです。でも社長の提案は今の状態じゃとても受け入れられません。あたしも捨てるものが多いわけだし、腹を割って話したい。そう思ってここへ来ました」
「腹を割る…ねぇ…」

コホコホ…
楓は少し苦しそうに咳き込んだ。

「すみません、お加減が…?また次にしましょうか?」
「コホ…いいえ、かまわないわ。『次』が今以上に調子がいいとは限らないし」
「…」

楓に関わることでいい思い出などひとつもないが、それでも辛そうな姿を…余命宣告されていると思うと切なくなってくる。

「先日のお話は本当に社長の本心ですか?」
「もちろんです。貴女が経営を学んでくださるというなら、別の方との婚約はなかったことにして、司と貴女の結婚を認めてすぐに籍を入れてもいいわ」
「…」
「でも貴女は法律の夢を諦めない。そうよね?そして法律家としての才能は無限大。そんな逸材を逃すのはこちらとしても惜しい。ですが司の結婚相手として法律家の貴女は必要ないわ」
「結婚相手としては不要でも、道明寺の発展のためには必要、そういうことですね?」
「その通りよ」
「あたしはまだ司法試験にも合格していないただの学生です。会社を支えるとかそんなのは正直よくわからない。それに、道明寺との結婚だってこれからもお互いに好きでいればそういうことだってあるかもしれない、ってレベルで許可するしないと決めつけられるのは心外です」
「貴女の仰ることも一理あるわね。でもね、ご存知の通り私は貴女が一人前になる前にこの世を去ることになるでしょう。これでもこの財閥を取りまとめてきて先を見通す力はまだはありますし、先日の条件を飲んでくだされば、貴女は必ず一流の弁護士になれると確信しています。今回の提案は決して貴女にとっても悪くはない話だと思いますけど」
「それだけの力があるなら、道明寺を立派な経営者に育てればいいじゃないですか。それに経験豊富で百戦錬磨の法律家がゴマンといるんだし、ヘッドハンティングでもなんでもしてくればいいだけのことじゃないですか」
「司は…やはりこれだけの所帯をまとめるには力不足…と、言ったはずよ」
「そんなのはわかりません!」

楓はコホコホとまた少し咳き込んで苦しそうな表情を見せた。
そして話がこのまま平行線だと悟ったのか

「私は司と貴女との交際を終わらせろとは言いました。ですが…別の女性と結婚しても傍にいてほしいと思っているのです。法律家云々以前に…ね」









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2 Comments

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2018/11/17 (Sat) 09:57 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

相変わらず鋭すぎる推察に、どうすればスリーさんを「マジか!!!!」と言わせるか、もうそれしか私に残された道はないのではないかとさえ思えます(笑)

あれもこれも書きたいとプロットに殴り書きしてると、これっていつ終わるんだろう、って変な汗が出てしまいます。
う~ん、ちょっと長くなりそうな気がしてきました。
今は順調に書いてるだけに、チョットだけ心配ではありますね。

2018/11/17 (Sat) 22:19 | REPLY |   

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