Answer 13 

つくしは目の前にそびえ立つビルの最上階を見つめていた。
大きめのトートバッグを右肩にかけ、持ち手部分をギュッと握りしめる。
大きく深呼吸をすると、目線を前に戻してガラス張りのエントランスに入っていった。

「道明寺楓社長をお願いします」

応対した受付嬢は怪訝そうな顔でつくしを見る。まるでこんな小娘が社長になんの用だと言わんばかりの目つきだった。

「お約束はございますでしょうか?」
「いいえ、ありません。牧野つくしが来た、と取り次いでいただくだけで構いません」
「ちょっと…それは…」
「いいから取り次いで!」

煮え切らない受付嬢に腹が立ったつくしは、大きな声で一喝する。
すると奥から警備員らしき大柄な男性が数人現れて、つくしを取り囲むようにして立ちはだかった。

「どいて、社長に会わせて」
「できません」

道明寺側の人間にしてみれば、当然の対応だろう。
どこの誰かもわからない人間が、いきなり社長に会わせろと騒げば拒否して排除しようとするはごく当たり前の職務である。

大柄な警備員を無視してエレベーターへ向かおうとするが、強い力で腕を掴まれどうすることもできない。

「離して、社長に会わなきゃいけないの!」
「そんなことができるわけないだろう?」
「一本内線してくれればいいだけじゃない!それで社長に断られれば大人しく帰るわよ!」
「どうします?警察に通報しましょうか?」

ロビーで大騒ぎするつくしと警備員の周囲にはいいつの間にか人だかりができていて、何事かとザワつき始めていた。

「乱暴なことは控えてください。私が対応しますので…」

背後から聞こえた声を聞き、つくしは安堵する。

「西田さん!」
「君たち、手荒な扱いに謝罪を」

受付嬢と警備員は不満げな表情でしぶしぶ会釈し持ち場へ戻る。

「あなた方も持ち場へ戻りなさい」

取り巻いていた野次馬に向かって叫ぶと、いそいそと散っていく。

「ありがとうござ…」
「突然来られては困ります。名刺を差し上げたはずですしご一報いただければ…」
「すみません…」

西田の言うことは当然のことだった。連絡をしたいと名刺を要求したのはつくしのほうで、言い訳のしようがない。
平謝りをしていると

「とにかく、ここでは落ち着きませんのでまず私についてきてください」

そう言って来客用のIDカードを手渡した。
6基あるエレベーターの一番奥、おそらく最上階への直通エレベーターのボタンを押すと、しばらくして扉が開いて西田が先に乗り込んだので続いてつくしも乗り込み少し後ろに立った。

グーンという振動とともにエレベーターが上階へと昇って行く。

「実は…今日は社長のお加減があまり良くありません」
「え、すごく悪いんですか?」
「デスクワークはこなされておりますが、あまり顔色もよくありませんし息苦しいご様子です。約束があるわけではございませんので、一応お取次ぎは致します。ですが、このような状況ですので、あまり期待されないほうがよろしいかと」
「そうですか…」

体調がすぐれないと聞きつくしは突然乗り込んで騒ぎを起こしたことを後悔し始めていた。
理不尽な要求をしてきたのは楓の方だが、相手は大病を患う病人だ。次はアポイントを取って来なければならないなとため息をつく。

「牧野様、社長の病気を知ったことをお話されるおつもりですか?」

西田は静かに言った。
つくしにトップシークレットである楓の病気を明かしてしまったことを怯える様子も、非難する様子もない。

「いけませんか?」
「いえ、私は構いません。ですが牧野様が辛い思いをされるのではと…」
「おかげ様でこういうことには慣れました。西田さんにご迷惑がかかるようなら今日はやめておきましょうか?」
「いえ。私のことはお気遣いなく…」

エレベーターが止まり、扉が開く。
西田に促されて個室に入ると、そこで少し待つように指示された。
ほどなくして西田が戻り、つくしに向かって静かに言った。

「お会いになるそうです。気を張ってらっしゃいますが、あまり長時間は難しいかと…」
「わかりました」

立ち上がって個室を出ると、西田のあとに付いて行く。

黒いプレートに金で書かれた「PRESIDENT」の文字。
レバーを回してゆっくりと扉を開けた。

「なかなか賑やかな登場ね、牧野さん」
「どうも…お邪魔します…」









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2 Comments

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2018/11/16 (Fri) 07:02 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

返信遅くなりました。
今回のお話は、グダグダ悩むつくしじゃなく、運命に振り回されるつくしを書きたいと思っていました。。
けど実はあんまり違いがわからないという笑
そこはわたしの力不足ですねー

2018/11/17 (Sat) 07:15 | REPLY |   

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