Answer 5 

「そんな…こんな言い方は失礼ですが虫が良すぎませんか?経営とは無縁だから別れろ、でも法律家として支えろ、なんて。しかもあたしはまだ法律を学ぶ段階で、将来性なんてそんなのわからない。そもそも本試験に合格できるかどうかもわからないのに、いきなりスカウトだなんて…」
「もちろん日本とアメリカの法律を完璧にモノにできるよう、貴女の才能を最大限に活かせるようバックアップはします」
「あたしのことをそんな風に評価してくださるのは…ありがたいことです。でも…これまで通りの生活を変えるつもりはありませんし、こんな言い方はしたくないけど…道明寺グループの事情なんてわかりません…」
「それは、正式な契約不成立の返答と考えていいのかしら」
「契約とか不成立とか…そんな堅苦しい言葉で片付けられるような話じゃないです。どうなるかもわからないことの為に、今からあたしたちの将来を決めてしまうことが納得できないんです。道明寺だって寝る間を惜しんで頑張ってるのを知ってるし、センスがないとか決めつけるのは…」

すると楓の表情がこれまでの柔らかいものから、冷酷なものに変化した。

「貴女に断るという選択肢は…ないわ」
「そんな…」
「私の提案を断るということがどういうことか…貴女が一番よくご存知よね…」

そう言い捨てると楓はソファから立ち上がってつくしを見つめた。

「司に4日間の休暇を与えたのはご存知ね?司のことですから真っ先に貴女と会う約束をしているでしょう…。その4日で…結論をお出しなさい」

そのままドアへ向かうと、一度振り返り

「それでは…失礼させていただくわ…」

そう言って応接間を後にした。


******


「先生…聞いてる?」
「あ、ごめん。なに?」

塾で中学生に問題を解かせている間、昼間の出来事を思い出していた。
恐らく楓の提案を断ればつくしの大切なものを再び壊すだろう。
両親も地道に仕事をしているし、進だってまだ高校生でお金がかかる。

「うん、きちんと解けてるね。そしたら似ている問題で応用力をアップしようか」

プリントに丸を付けながら子供達の相手をしていても、なかなか集中できない。

「先生、今日はどうしたの?具合でも悪いの?」

中学生に心配されてるようでは先が思いやられる。

「ううん、大丈夫。ね?集中力散漫だとこんな風になるから気を付けてね」

子供達にすり替えてなんとかその場を切り抜けた。
チャイムが鳴って、最後の生徒を送り出すと、つくしもスタッフに挨拶して外へ出た。
教室からアパートへ帰る間も、ずっと頭から離れない。

すぐにアパートに到着し、鍵を開けようとした。

「牧野様」

背後から男性の声が聞こえた。
聞き覚えはもちろんあって、しかも昼間聞いたばかり。
つくしはゆっくりと振り向き

「西田さん…」

そう応えるのが精いっぱいだった。

******

湯気の立つコーヒーを一口すすったところで西田が口を開いた。

「先ほどは驚かれたことと思います、大変申し訳ございません」
「いえ…」

アパートは狭くとても人を招き入れる状態ではない。
そもそも道明寺側の人間を簡単に部屋に入れるほどつくしもバカではない。
近くにあるコーヒーショップに誘いだした。

「社長の提案ですが…実は私も反対したのです」

敏腕秘書である西田が楓にもの申すなど、つくしにはとても信じられずすぐには言葉が出なかった。

「司様と牧野様を引き裂くようにと仰ることは、これまで幾度となくございましたので、失礼ですがそれほど驚きはしませんでした。しかし、お二人を引き離した上で牧野様を財閥の発展のために傍に置いておきたい、ということには、この私も心底驚きました」
「西田さん、そのことなんですが…」

やっとのことで口を開いたつくしだが、すぐにまた西田が続けた。

「社長もそれがどれだけ身勝手で虫のいい提案であるかはわかっているのです。そしてお二人に申し訳ないことをするということもきちんと理解しておられます」
「それならなぜあんな!」
「社長の本意は昼間お話されていたことと相違ありません。司様に道明寺を率いていく力が不足していると感じられ、それを補う意味でプロを娶らせたい。牧野様が経営を学んでおられればお二人を全力でバックアップされたでしょうが、牧野様の選んだ道は法律の道でした。そしてその実力と将来性を非常に評価されていて、是非ともお傍に置きたいとお考えになっておられます」
「道明寺と付き合うことと、あたしが法律の道へ進むことは別物です。例えあたしが道明寺と別れたとしても、誰の助けも受けないで本試験を突破するつもりでいますし、法律家として一人前になります」
「牧野様がそう仰られることも重々承知しております」

西田は何度も何度も申し訳なさそうに頭を下げるのだけど、昼間の件を詫びるためだけにやってきただけとは思えなかった。

「理不尽な要求には従えません」
「牧野様…」
「当然ですよね?あたしにはメリットなんてひとつもない。一流の教育を受けさせてくれるみたいですけど、別に望んでませんし」
「経営を学び直していただければ、司様との将来は約束されるのですが…」
「そんな敷かれたレールに乗るとでも?道明寺のことは好きです。でもそれとあたしの夢は別物です」

どれだけ穏やかに話されても平行線であることに変わりはない。
西田が必死であるということはつくしにも理解できたが、理不尽な要求に従うほど単純なことじゃない。

このままではつくしを説得できないと悟ったのか、西田は深くため息をついた。

「どうしても、でございますか?」
「納得できないことには従えません」。身勝手過ぎて返す言葉もないです」

すると西田は姿勢を正すと、絞り出すように呟きだした。

「わかりました。では社長がこのような強引な方法をお取りになる本当の理由をこれからお話します。本来ならこのようなことを私の一存ですることはできません。ですが、やはりお話しておいた方がよろしいかと思います」









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2 Comments

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2018/11/08 (Thu) 07:12 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

おほほほほほ

こんばんは。

楓さん、書くのにチョー気を使いますのですわよ。
普段楓さんのような人間と接する機会なんでないですからね。
っていうかあんな人いるんだろうか…。

楓さんは基本的に変わることがない、表面的な優しさはなく不器用な優しさを持っている、みたいに書きたいなぁってずっと思ってましたので、登場させるなら原作みたいに冷徹な感じを出したいな、って思ってたんです。
出てるかな…💦

さてさて、第5話、どうなることでしょう(・∀・)ニヤニヤ

ジレジレしちゃうかもよ

2018/11/08 (Thu) 22:35 | REPLY |   

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