分かれ道シンドローム ~類 Short episode~ 

高等部を卒業し、今後来ることもなくなるであろう非常階段。

特に秘密にしていたわけじゃないけど俺はある医科大学を受験した。

ただ進学するかどうかは決めかねている。
今まで何不自由なく、金持ちな親のもとで好き勝手生きてきたけど、もし行くとなれば寮に入るとはいえこれからは自分のことは自分でしなければならない。

覚悟があってすることなのか、と言われればそうでもない。

ただ、くだらない「アソビ」に興じていた頃に牧野に啖呵を切られたことがいつまでも心から離れない。

静を追ってフランスに行ったとき。
俺はただ何をするわけでなく静を待ち続ける日々を送っていた。

日本に戻ってきて

相変わらずひとりで戦う牧野を見ていた俺の中で、少しずつ何かが変わっていくのを漠然と感じながら、それでも何をするでもなくただ日々を送る。

これまで幾度となく母親と揉めてきた司が、父親が倒れたことをきっかけに、牧野を日本に残してNYに行くことを決めたとき、俺の中で何かがはじけ飛んだのを感じた。

流されるままに生きていていいのだろうか。

医学の道を志そう、そんな大層な思いはなかった。
それでも、少しでも興味を持った世界へなら飛び出せるかもしれない。

正直親の会社を継ぐとか、経営者になることに興味はなかったし、今の時代世襲制なんてダサいと思った。

ただ、医学部に進むと両親に言えば絶対に反対されることはわかっていたわけで、勘当覚悟で受験するならお金のかからない方法を見つけ、最低限度の生活を確保する必要があった。

そこで行きついたのが、この医科大学の存在だった。

まるで志望の動機が牧野っぽいな、と思いながらも俺はこの大学に賭けてみた。
もちろん受験勉強をしたわけでもないし、自信があったわけでもない。
もし不合格なら、英徳大学に籍を置いたまま、違う道を模索するのも悪くないと思っていた。

そして今、俺の手にある合格通知。

この世界に足を踏み入れてしまえば、おそらく20代のうちは苦労することになるのは目に見えている。
合格通知を両親に見せれば、案の定大反対で取り付く島もない。

行くか否か。

その選択肢ができたはいいけど、両親との更なる修羅場を皮切りにこれから起こりうるさまざまなことを考えると、めんどくさいし気が滅入る。
ただ、このままでいいわけがない。

まだ少し考える時間はある。

俺の人生で一番重要な問題であることには間違いないし、じっくり考える必要はあるかもしれない。

目を閉じ深呼吸をする。

校舎の中に入って牧野の教室に行く。
昼休み中で誰もいない。

牧野の席に座って壁の時間割を見ると5限は現国と書いてある。

教科書に付箋を付けて教室を出た。



******



「・・・」
「・・・い・・・」
「花沢類・・・きたよ・・・」

風が心地よくてついうっかり居眠りしている間に牧野が来たようだ。

「ごめん、花沢類。アタシ。来たよ」
「んんっ」
「桜子とお昼食べてたら遅くなっちゃった。すぐ午後の授業始まるから行かなくちゃなんないの」

授業なんてまともに出たことがない俺には牧野の必死さなんて理解しようとも思わなかった。

「なんだ、牧野か」
「…あのさぁ、アンタが呼んだんでしょう?」

確かに牧野の現国の教科書に『いつもの場所』にいることを示す付箋を貼ってきたのは俺だ。

「で、どうしたの?ごめんね、あんまり時間取れないんだ。もうすぐ昼休み終わっちゃうし」
「え、いいじゃん。もう進級も決まってるし。午後サボっちゃえば?」
「いやいやいや、アタシはアンタたちとは違ってボンビー学生なの。授業料払ってる分、しっかり学ぶの」
「そっか…」

そうだ、牧野はそういう女だ。
その時、俺は自分の中で何かが弾けた。

「牧野には言っておこうと思って」
「何を?」

この時点で決心してたわけじゃない。
両親のことも解決していなければ、ひとりで生活することの自信とかそういうのもない。
それでも牧野のまっすぐな目を見た瞬間、自分でも驚くほど自然に言葉が出た。

「俺、英徳大学には行かない」



fin



あとがき

ラブ・シンドロームの番外編、類目線のお話を書いてみました。
はたして需要があるのかわかりませんけど、連載を始めたばかりの頃、類が医師を目指すことに対して驚きの声とか、あり得ないというお言葉が多かったのを思い出しまして…。

私はつかつく書きに属しますけど、決して他のメンズ3人が嫌いなわけではないんです。
原作が大好きなので書いてはいますけど、書けるものなら他の3人のお話も書いてみたい。
(と過去には思ってました)

ラブシンは同じ道を志す類をかなり重要な役どころ、司のライバル的な位置づけとして登場させました。
もちろんつかつくハピエンありきでしたので、司とつくしはくっつける、けど類にも幸せにする。その為に沙織というオリキャラとくっつくところまでを計画し、割と丁寧に書かせてもらったつもりです。

本編では類がなぜ医学の道を志したのか、という部分の細かいところまでは書いていません。だから類にとって医学の道に進むという決断の陰に、つくしが大きく影響を及ぼしたということを書いておきたかったのです。

ですからつくしと司がハッピーになるということを望んでいる読み手の方々にはあまり面白くないお話だったのではないかと思っています。

読んでくださり、ありがとうございました。









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

10 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/30 (Tue) 06:29 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/30 (Tue) 07:10 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/10/30 (Tue) 11:11 | REPLY |   

やこ  

なあなあ様

コメントありがとうございます。

私、あまり登場人物を一度に多く書くのがすごく苦手で、特に司と総二郎を一緒に書くとどっちがどっちだかわからなくなるんですね。しかもあきらなんて空気だし(笑)
類つく作家さんとの交流がすごいもんですから、きっとルイルイルイルイ呪いをかけられてしまったのかもしれません(笑)
でもムキーの声が多かったお話ですけど、私も結構好きでした。

イラストは表示されないものが多いもんですからいったん下げさせてもらいました。
ただ、記事数が結構な数なので、ひとつひとつ確認して再表示、となるととんでもないことになるかもです。
ヤル気が出た時にまた再掲載しよっかな。
新たに描くのはどうかなぁ…
全然描いてないので…。

機会があれば、ということで気長にお待ちください(^▽^)/

2018/10/30 (Tue) 17:36 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

類の心情書いてどうすんだ、と思いながらですが、なんか気持ちよく書けました。
なんていうか、穏やかな感じ?

司を書くとどうしても情熱的になりますんで、戦闘モードていうかね(笑)

ただ私は司つくしか書けませんからね。類よ、スマン。

今のところ踊り狂うN子さんは来てませんね(笑)
読んでくれてると嬉しいけど(・∀・)ニヤ

2018/10/30 (Tue) 17:39 | REPLY |   

やこ  

kachi様

コメントありがとうございます。

いやいや、暑苦しいなどとはとんでもない。
恥ずかしがり屋の読み手さんの多い我が家で熱いコメントいただき、その節は燃え上がらせていただきましたよ(笑)

類がつくしと司の恋を邪魔する、というのではなくて、類は自分の気持ちにまっすぐなだけなんだと思うんですよね。
ただ他の人おかまいなし、という(笑)
でも類はそれでいいんだと思います。
きっと沙織という女性を愛しても、つくしのことは死ぬまで好き。そんな類君でいてほしいな。
ムキーは多いかもだけど(笑)

2018/10/30 (Tue) 23:55 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/11/03 (Sat) 10:36 | REPLY |   

やこ  

さとぴょん様

こんばんは💜

類くん医学部進学の影につくしあり。
一瞬で決めちゃうあたり、類っぽいでしょ?

普段ボーっとしてるように見えて、ちゃんと考えてるんだぞー!ってのを書いておきたかったんですよ。
だって自分の将来だもんね。

地位や名誉、富を捨ててまで自分の信じる道を進む。
これは静さんを参考にしてます。
類君にとって静さんはなんだかんだと特別ですし。

2018/11/03 (Sat) 20:01 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/11/04 (Sun) 06:20 | REPLY |   

やこ  

N子♫様

釣れた(笑)

二次から離れてリアルにドップリ漬かってしまう気持ち、よくわかります。
なんせ私がそうですから(;^ω^)
強豪校なのかな?だとしたら熱も入るね💜
是非落ち着いたら二次に戻っておいで(・∀・)ニヤニヤ
その頃には消えてるかもだけど( ̄∇ ̄;)ハッハッハ

2018/11/04 (Sun) 22:53 | REPLY |   

Leave a comment