Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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4

リオデジャネイロ狂想曲 26

「牧野っ!!」

司が目指した場所はつくしのいる観客席。
目線よりも高い位置にいるつくしは、肩を震わせながら涙を流して司を見つめ何度も何度も頷いている。

「…」

何かを言いたそうだが、涙とこみ上げる思いが邪魔をして上手く言葉にできないようだ。

「獲ったぜ、金」

ニヤリと笑い、右手を上に伸ばす。
つくしはしゃがみ込んで目線を司に合わせると、柵の隙間から手を伸ばして力いっぱい握りしめ、しばらく何を言うわけでもなく戦いを終えた優しい目を見つめていた。そのまま自分の左頬に司の掌を当て、その上から自分の手を添えた。

「バカ、血が付くぞ」
「…もう、なんでもいいよ…!」

そう言うと今度は落下防止柵を乗り越えて司の首に飛びついた。
飛びついた相手が怪我人であることに焦った総二郎とあきらが慌ててつくしが落下しないように支えるのだった。

「盛り上がってますけど…自分たちの置かれてる状況に気づくのはいつになることやら…」
「俺が対応しなきゃなんないんだぞ?こういうのは控室でコッソリやってくれ」

文句を言うふたりの横で、ニッコリと笑う類が呟いた。

「数分後には、ネットがザワつくね…たぶん」


***


司は最も高い位置から徐々に高くなる日の丸を見つめていた。
胸には最も美しい輝きを放ったメダルが光る。
君が代が終わると金メダルを手に持ち眺めてみる。デザインはつくしの持つ銀メダルと同じものだが、やはり輝きはもちろん重みが違う。

最初は単なる試合という位置づけでしかなかったオリンピックも、飛び込みチームと出会ったことで特別なものになった。
表彰台からの景色はこれまで上ったどの頂点よりも見晴らしがよく、正面には愛しいオンナの笑い泣く姿がよく見える。

―まったく、なんて顔してんだよ―

係員に促されて表彰台を降り、会場を一周するときが来た。
どの競技も表彰式は盛り上がる。しかも司の試合はケガのこともあって注目度は高く、観客席は決勝戦並みの観客で埋め尽くされていた。

自信がなかったわけではないが、傷口が開き激痛に耐え続けていた時はさすがにメダルを獲ることができないのではないかとも思ったし、決勝の2ラウンド目でボロボロになった時は、リタイアしかけていたことも確かである。

つくしの声が聞こえなければ、今この場に自分の姿はなかったはずだと考えると、自分の弱さを思い知らされる。

司を先頭にメダリスト4人が会場内を周回するのだが、他の選手が小さな花束を振りながら歩く一方で、司は笑顔もなく一点を見つめながら歩く。
無表情ではあるがその目は決して鋭いものではなく、むしろ優しさに満ち溢れひとりの人物を見つめている。

彼女の前に差し掛かると司は歩みを止め、愛しい人の目の前に立ち今受け取ったばかりの金メダルを首から外した。少し高さのある観客席から身を乗り出すつくしの首に、金メダルとかけると、満足そうに笑う。

その光景を収めようと報道陣が包囲していて、今の気持ちは?ふたりの関係は?などと問いかけ、シャッター音やフラッシュで賑やかな状態にも関わらず、今の司とつくしにはお互い以外に何も見えずに何も聞こえない。

首からぶら下がる金メダルを右手に取ったつくしは、愛おしそうにメダルの表面を指先で撫でると

「ホントだ、全然輝きと重さが違う…」

そう言ってニッコリとほほ笑んだ。

「当たり前だ」

試合中に諦めかけたことなど棚に上げて満足そうに言うのだった。
司の手が再び伸びてきたため、つくしはもう一度頭を下げてメダルを返そうとした。

その時、司の両手がつくしの両頬を優しく包み込み、自分の顔を近づけて唇を重ねたのだった。

シャッター音も、フラッシュもついさっきまでとは比べようもないほどの数だが、当事者は自分たちの声しか聞こえない、姿しか見えないふたりに周囲のざわめきが届くことはなかった。

そんな様子を見ていた男たち3人は、顔を見合わせて苦笑いしながらこう言うのだった。

「メダリストって確かこの後スタジオで日本と中継するよな?」
「うん、オリンピック特番のメダリストコーナーね」
「同じ日にメダル取っておいて、あれじゃなぁ…あいつら日本に帰る気あるのか?」

3人ともすでにこの先の展開を見据え、どんな騒ぎが起きるのか楽しみで仕方がない。

「たぶん、何も考えてないんだろうね。じゃなきゃ公衆の面前でキスなんてできないでしょ?」
「だよな。牧野が大騒ぎした時点で報道陣が暴走することわかってるはずなのに、何考えてんだよ…」
「これ…マスコミ対応どうすんだよ」

3人が再び司とつくしに目線を戻すと、まだふたりのシルエットは重なったままである。
苦笑いしながら静かに会場を後にした。



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-4 Comments

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2017.08.24 06:42 | | # [edit]
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2017.08.24 10:16 | | # [edit]
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2017.09.21 20:04 | | # [edit]
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2017.09.22 01:35 | | # [edit]

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