Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
-

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




3

リオデジャネイロ狂想曲 25

周囲の誰もが諦めかけていたにも関わらず、いきなり観客席から立ち上がり大声を張り上げて叫んだつくしに周囲の目線が集まった。

中継カメラの一部もつくしに向けられており、会場は一時騒然となる。

一番驚いているのは叫んだ本人、つくしであった。

周囲の目線が自分に集まっていることに気づくまでそう時間はかからなかったが、同時に自分がとんでもない行動に出てしまったことにも気づき、体中に震えが来るのを感じていた。

あきらと総二郎は目を合わせて苦笑いし、類に至っては肩を震わせて笑いを堪えている。

会場全体の視線がつくしに集まる一方で、1分間のインターバルがそろそろ終わる。
つくしの叫びを聞きどう動き出すのかと再び視線が司に集まると

「おう、あたりめーだろ。オレは金もオマエも絶対に諦めねーからな」

右の口角を上げて再び立ち上がった。
一連の騒ぎを呆然と見ていたチーム道明寺の面々は、立ち上がった司を見て慌てふためくが、時すでに遅しで最終ラウンド開始の合図とともに相手に向かっていく背中を眺めるしかなかった。
1分前まで立っているのがやっとの状態だった司は、何事もなかったかのように攻めて行く。

つくしは後ろの席の外国人から座れと言われる声も耳に入らず、身を乗り出して司の戦う姿を見て声を上げる。

集中してしまえば声が届くはずもないのは承知の上だし、聞こえなくてもよかった。
それでも声を出さずにはいられず、無意識に司に向かって叫び続けていた。

果敢にアタックし、相手を怯ませる。

しかし無情にも残り時間が30秒となり、ポイントの上で勝ち目はない。
当然残り時間が少なくなり、自分が圧倒的に不利であるということは司も把握しているはずで、これまで以上に防御よりも攻めを重視した戦いになっている。
積極的に行かなければ負けてしまう。

その時、相手の右足が司の側頭部目がけて飛んできた。
ビュンッと空を切る音がしたとき、相手の渾身の一撃が司を目がけて迫ってくる。

―腕が折れても止めてやる!―

司が渾身の一撃を腕でクロスしながらカットすると、相手がバランスを崩してよろめいた。

―今だ!―

よろけた相手の胸に軽く押し蹴りし、さらに体勢が崩れたのを確認すると、そのまま重心を低く落とした状態から相手の側頭部に目がけて回し蹴りを入れた。

同時に傷口からも血が溢れ、司は膝をつき痛みを堪えていた。
激痛を堪えながら震える脚のままなんとか立ち上がり、審判を見る。

審判は司の姿を確認し、続いて相手の状態を見極める。
どうやら相手は失神してしまっているようで、これ以上の試合続行は困難と判断。

試合時間は残り3秒を示したところでストップ。
次の瞬間、音が完全に消えた司の耳に入ってきたのは、割れんばかりの大歓声だった。

―何が起きたんだ…?―

司は大騒ぎの会場をぐるりを見回し呆然と立ち尽くす。
時計の針が止まって試合が終了したことまでは理解できたが、今の状況が把握できていない。

そして一点を見つめると、愛しい女性が胸の前で自らの手を握りしめ大粒の涙をこぼしてこちらを見ている。

そして審判が司の左手を高く持ち上げたときに、ようやく自分の置かれている状況を知ったのである。

―オレは…勝ったのか?―

条件反射のように相手と審判に向かって頭を下げると、ヨロヨロとチーム道明寺に向かって歩き出した。
コーチ陣やチームドクターが喜び勇んで駆け寄るのだが、司の目線は他のところにあった。

何かに憑かれたように一点を見つめ、次の瞬間右足を引きずりながら目的の場所へ走り出した。

「牧野っ!!」



該当の記事は見つかりませんでした。

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。