Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 24

1年越しで、やっと…書きたかった場面が書けました。







試合が始まると、司の耳には審判の声しか届かない。

もちろんどの大会のどんな試合でも観客の歓声は響いているのだが、試合に集中している司の耳に会場の歓声が届くことはない。

テコンドーは日本の空手を起源としているが、空手との大きな違いは蹴り技が多彩なことで、跳ぶ、跳ねる、踏むなどの足技を中心に攻め、拳は突いたり叩いたり防御するといったスポーツである。

ルールに詳しいわけではないが、足技を中心に戦う格闘技であることは理解できているため、ケガの状態を知るつくしは不安だった。
しかも利き脚である右のケガである。あれだけ長い脚を持っていても、厳しい戦いになることは素人目にみても明らかだった。

―脚が千切れても―

試合中に本当に千切れることはないとしても、ケガが悪化すれば選手生命に関わってくる。
「金を取れ」とばかりに発破をかけてはみたものの、本音は無理をせずにダメな時にはリタイアしてもらいたいとつくしは思っている。
ただあの性格を思えば到底リタイアなどするわけがなく、攻め続けるのは目に見えていた。

これまで一回戦、準々決勝、準決勝と余裕を持って順当に勝ち進んできた司だが、決勝戦ともなると一筋縄ではいかないようだ。
試合の間隔は対戦相手も同じで、疲労度も同じ。世界ランキングを見ても司のほうが劣勢である。

そうこうするうちに、相手にポイントを取られるなど司はますます不利な状況になっていた。

しかし相手に攻められても司は決して引くことをしない。

攻撃は最大の防御とばかりに果敢に攻めていた司の異変につくしが気付いたのは1分間のインターバルを過ぎ2ラウンド目に入ってすぐのことだった。
肩で息をしていて呼吸が苦しそうである。
たった1分間とは言っても体を休めた後にあれだけ疲労が表に出るのはどう見てもおかしい。

「なぁ、あいつおかしくねーか?」

隣で観戦していた総二郎が司の異変に気付いたようでひと言呟いた。

「うん、なんか動きが変」

滅多に飛び込み以外の競技に興味を示さない類も同様だ。
あきらは特に言葉を発しないが、腕を組んだまま険しい表情で試合を見つめている。

「あっ!!」

その時だった。
相手の左脚と司の右脚が頭よりも高い位置で中途半端な状態でクロスしたままお互いにバランスを崩す。相手選手はなんとか持ちこたえたが、司は顔をしかめてそのまま床に倒れ込んでしまった。
大きな声で叫んで目を逸らしてしまったつくしだが、恐る恐る目を開けた瞬間、視界に入ってきた光景を見て、衝撃を受けてしまう。

「開いたね」

―開いた―

それが司の傷口であることは誰の目にも明らかだった。
白い胴着がみるみるうちに真っ赤に染まり、その大きさがどんどん広がっていく。

「ああ…」

つくしの体はついに脱力し、握っていた拳の力も抜けてしまう。
力なく背もたれによりかかると、

「牧野、大丈夫?」

類が声をかけ、肩に手を置いた。

「なんだってこんな時に…」

総二郎も悔しそうに血が広がっていく様子を眺めている。
あきらは指導者側の立場から冷静に判断したようで

「そろそろお終いだな。もう立っているのもキツイだろう。審判が止めに入ったらアウトだな」

―アウト…?―

あきらの言葉を最後まで聞くと、どういうわけか周囲の音が聞こえなくなった。

―もう…いいよ、アンタは十分戦った。ホントに…もういいんだよ―

どんなに倒れても、顔をしかめても戦うことをやめようとしない司を見るのがつらいのに、どういうわけか司から目を離せない。

目だけがギラギラと血走って、その場に立っていることが不思議にさえ思えるほど疲弊してるのは異様な光景だった。

2ラウンド目を何とか耐えた司は、再び1分間のインターバルに入るが、ちょっと休んだところで復活できそうにないほどボロボロになっている。

そしてインターバルの最中、審判が司に近づき何か話しかけているのがつくしの目に入ってきた。恐らく試合の続行が可能かどうかの確認だろう。

傷口より下の部分が血に染まった胴着、そして真っ赤な血液が流れ落ちる素足を見て、もう充分戦った司がリタイヤすることを望んでいた。
そもそも試合前に彼を刺激するような言動で発破をかけたことを後悔していたからである。

審判からの呼びかけに首を横に振って拒絶する姿を見て、それでいい、立派な銀メダルだよと叫びたかった。
当然チーム道明寺のスタッフも、これ以上の試合続行は危険であると判断し、リタイアしろと呼び掛けている。

しばらくして観念したのか鋭かった眼光はなくなり、拳を握りしめて俯く司の姿がつくしの目に入ってきた。

―そう、それでいい。しっかり治して一緒に東京を目指そう―

そう、心から思っていた筈なのに…
次の瞬間、観客席から立ち上がって、まったく別の言葉を叫んでいた。

「なに…やってんの?!アンタ道明寺司なんでしょ?!ちょっと血が出たくらいで何弱気になってんの?メダル…金メダル獲ってアタシの首にかけてくれるって言ったじゃない!!銀メダルなんか自分で獲ったんだからかけてもらっても全然嬉しくないしっ!!リタイアするくらいなら戦う前に諦めればよかったのよっ!脚が千切れても戦うって言ったじゃない!立ちなさいよ、最後まできちんと戦うべきでしょ?!」



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8 Comments

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2017.08.22 06:24 | | # [edit]
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2017.08.22 07:20 | | # [edit]
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2017.08.22 08:38 | | # [edit]
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2017.08.22 08:43 | | # [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
そんない拍手おみくじで喜んでいただけるとは!!
もういつ作ったかも謎のおみくじなのに、恐縮です(笑)

今日と明日のシーンは書き始めてからずっと書こうと決めていたところなんですね。
まさかこんなに長くかかる(サボる)とは思わなかったですし、途中すっかり忘れてたし( ̄∇ ̄;)ハッハッハ

山場は過ぎたかな。もうちょいです。
2017.08.22 20:54 | URL | #tKLq9Oy. [edit]
やこ says..."kachi様"
はい!遅ればせながらファンクラブに入りましたよ。
しかもスリーさんに言われて慌てて(爆)
今年のコンサートはどうでしょうね…
行きたい、行きたい、行きたい!!!イキたいっ!!(コラ)
2017.08.22 20:58 | URL | #tKLq9Oy. [edit]
やこ says..."みわちゃん様"
ご無沙汰しております。

なんていうかもっとドラマチックに書くつもりだったけど、どうなんでしょう??
自分的にはイマイチ…。でもま、やっとここまで来たって感じで感無量ではありますね。

さあ、どうなるのか、私もわかりませんっ!!
2017.08.22 21:00 | URL | #tKLq9Oy. [edit]
やこ says..."かなた様"
1年以上便秘してていきなりスッキリした感じですね(コラ)
最初からここが書きたかったのに、たどり着けないジレンマ…。
難しい、二次小説。
2017.08.22 21:01 | URL | #tKLq9Oy. [edit]

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