Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 18

『牧野つくし選手、準決勝で順位を落としてしまいましたね。調子が悪いというわけではなようですがどうでしょう』
『そうですね、おそらく初めてのオリンピックということもありますし、予選の試技がよかっただけにちょっと力が入ってしまったように思えます。本来の力が発揮できれば、メダルも射程圏内です。午前中の準決勝とは違ってずいぶんリラックスしている表情ですから期待できるんじゃないでしょうか』

控室でインターネット中継を流しながら、軽くジャンプをしてウォーミングアップをする。
傾けていたのは耳だけだが、チラリと画面を見ると、少し前まで目の前で顔を赤らめていたオンナがいるのだが、その表情はしっかりとアスリートの顔になっていた。

―大丈夫そうだな

司はつくしの表情を見て安心し、タブレットの画面を落として精神を集中させることに専念する。
今はそれほど傷の痛みもないが、ひとたび試合が始まってしまえば安心などできないのが格闘技である。
傷口をきつくテーピングで巻き、自分の名前が呼ばれるのを待つ。

テコンドーはトーナメント戦で一度負けてしまえばそこで終わり。したがって準決勝で負けた場合、3位決定戦で勝たない限りメダルを獲得することはできない。
しかし司の頭にあるのは最も輝く色のメダルである。この試合で負ければ意味がない。

「Domyoji!」

ついにこの時はやってきた。
司は立ち上がり、軽く唇に触れて控室を後にした。


***


飛び込み台の階段を上るときはいつも緊張で足が震える。
予選も準決勝もそれは同じだった。
しかし今日はどういうわけかいい意味での緊張感はあっても、失敗することへの不安やメダルへのプレッシャーは感じない。

つくしの表情はいつもよりも晴れやかだった。
本来の実力が発揮できれば結果は自ずと付いてくる。
そしてこの日の為に必死で練習してきたつくしだけの技を成功させることだけ考えた。

そして飛び込み台の頂上に辿り着く。
つくしは地上10メートルからの景色が堪らなく好きである。

これが最後に見る飛び込み台からのリオの景色。

つくしはセームをギュッと握りしめると10メートル下に落とす。
いつもならセームと一緒にお守りも必ず一緒に持ち歩いて自分を落ち着かせるのだけど、今日はお守りがなくても自然と落ち着いていたし、控室に置いてきたジャージのポケットに入れたままになっていた。

ただどういうわけかセームだけは手放せなかった。
ここへ来てセームを手放す時が勝負の時だと言う気持ちがつくしにはあったからかもしれない。

バサッという音が下からはっきりと聞こえてきたのを合図に、つくしは構えに入る。
目を閉じて息を止め、精神を集中させると勢いを付けて真っ逆さまに10メートル下の水面に向かって飛び降りた。


***


「牧野さん!お疲れ様でした。決勝の試技、どうでしたか?」
「あ、ありがとうございます。そうですね、すべてを出し切りましたし感触もよかったと思います。あとは結果が付いてくると思います」
「あとふたりの試技を残して現在2位ですが、心境は?」
「準決勝で順位を落としてしまったので、巻き返せるように頑張りました。どんな結果でも悔いはないです」
「是非メダルを持って帰ってください」
「そうなればいいですけど…。ありがとうございました」

インタビューに落ち着いて応じたつくしだが、実はそわそわしていて心ここにあらずといった状態だった。
それは自分の順位が気になるからではなく、早く控室に戻ってテコンドーの試合を見たかったからである。
現在の自分の順位も微妙な位置で、近いとは言っても会場にはとても行けそうにない。
せめて速報でも知ることができれば、とセームを握りしめて控え室に向かう。



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2 Comments

says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017.08.12 09:07 | | # [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
いつもいろいろと情報をありがとうございます。
痛恨のミスでしたね💦

さあ、この後どんな展開になっていくのでしょう?
ラストは決めてあるけど、スタートからずいぶんと時間が…

ラストスパートだ!頑張ろう(⌒∇⌒)
2017.08.12 21:01 | URL | #tKLq9Oy. [edit]

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