Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 16

試合開始の合図とともに間合いを取るふたりのうち、青いヘッドギアを付けているオトコが果敢に相手に向かっていく。

モニターでその表情を窺うことはできないが、特徴的な髪型と相手より頭一つでた長身、それから恐ろしいほどの殺気が、道明寺司であることを示していた。

そこには試合前に見た弱気なオトコは存在せず、貪欲に勝ちにこだわるオトコの姿しかなかった。

どう気持ちを切り替えたのかはつくしにはわからない。
とにかく勝ちに行こうとしている姿がつくしの目には映っていた。

「おい、そろそろ出番だぞ」

控室のモニターに気を取られて自分の出番まで集中することすらできずにいたつくしは、あきらの声で我に返り紫色のセームを手に取ると、控室を出た。

「大丈夫か?調子悪そうだぞ」
「負けるわけにいかない、やるしかないの」

―アイツは弱気な自分に勝ったんだ、アタシも負けてられない―

「それより、なんか汚れてるぞ」
「え?」

あきらがセームを指差して汚れが付いていると指摘した。
見るとさっきまでは気が付かなかったがマジックで文字が書かれていた。


***


準決勝はふたつ順位を落として4位で通過。
このままの順位をキープしても入賞ではあるがつくしの目標はメダルの獲得だ。

準決勝での試技は、調子の悪さをなんとか修正できたものの、アメリカとロシアの選手がそれぞれ調子を上げてきたため僅差で順位を落としてしまう。

集中力はなんとか元に戻りつつある。
後は16時の決勝にどうつなげるかがメダル獲得へのポイントだろう。

「どうなることかと思ったけど、しっかり修正してきたね。僅差だしまだいけるよ」
「このままでも日本歴代ではトップだぜ?あまり気負わず楽しめよ」
「うん、ありがとう。落ち着いて頑張る。ところでテコンドー、どうなった?」

総二郎と類は顔を見合わせてから少し微笑むと

「ああ、勝ったぜ。お前の決勝と同じ時間に準々決勝だな」
「そう…勝ったんだ…」
「気になる?」
「え?」

ニコニコする類にそう言われて我に返る。
試合直前にあれだけ弱気なところを見せられたわけである、気にならないほうがおかしい。

「うーん、試合前にちょっとだけ会って少し話したからさ、どうしたかなと思って」
「そっか、なるほどね」
「?」

準決勝前のつくしの不調の原因にピンと来た類と総二郎は、顔を見合わせてニヤリとした。
ふたりのしぐさに気づかないつくしは、右手に持ったセームをギュッと握りしめる。

「おい、ホテルに戻るだろ?」

決勝まで少し時間がある。
このまま会場にいてもいいのだが、緊張感で少し疲れもある。
僅かな時間ではあるがリラックスできる環境が欲しいのが正直なところだった。

「迎えの車が来てる、少し休んでリラックスしろよ」

つくしはコクンと頷くと、会場を出て少し離れた場所に停まっていた車に乗り込んだ。
チーム道明寺のワゴン車に乗り込みフカフカのシートに腰を沈めると、不思議なことに余計なことを考えることもなく心地よさだけが全身を包み込んだ。

会場からホテルまでは20分もかからない距離なのに、シートに座ってちょっと目を閉じただけなのに、強烈な睡魔に襲われた。

―ダメだよ、これから決勝もあるしすぐホテルなんだから今寝ちゃ…―

そんな気持ちとは裏腹に、つくしは夢の世界へと落ちていく。
車が停まりつくしの体がフワリと宙に浮くが、そんなことにも気づかずにいた。



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