Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 15

ブラジル・リオデジャネイロの日付は8月18日。時計の針は午前9時半を指している。

つくしは10メートル飛び込みの準決勝に出場するため、飛び込みプールの控室で集中力を高めていた。準決勝の始まる10時まであと30分、せっかく2位で通過したのだから順位を落とさず自分らしい試技をしたいと思っていた。

一方、テコンドー男子68キロ級の1回戦はすでに9時にスタートしており、日本代表の道明寺司は第3試合、10時15分から1回戦が始まる。

お互いに10時過ぎに競技がスタートする司とつくし。
司は昨日のつくしの言葉が頭から離れない。

確かに大きな試合を前に弱気になっていたし、ケガのこともあってメダルが無理なんじゃないかとも思いはじめていた。

そんな気持ちを見透かされたようでつくしの言葉に一瞬腹を立ててはみたものの、考えてみればその通りのことであり、こんな弱気な状態では1回戦も突破できないだろう。

―やってやろうじゃねぇか―

司は控室を出て試合会場へと向かう。


***


―ガッカリだわ―

プールで軽くアップを済ませたつくしは、セームで体を拭きながら昨日のやり取りを思っていた。

間もなく準決勝、本来なら余計なコトなど考えずに試技に集中すべき時間でもあるにも関わらず、頭の中は道明寺司のことでいっぱいだった。

雑念を振り払いたくて軽く頭を振り、そのまま3m台へ向かう階段を上るのだけど、見たこともない自信なさげな司の顔が頭から離れない。

飛び込み台で軽くジャンプして、指先から飛び込んでみたものの大きな水しぶきが上がってしまう。

「おい、牧野の様子が変だぞ」
「うん、なんだか調子が悪そう。あんなに大きな水しぶきを上げてるところなんて見たことないよ」

観客席でつくしを眺めていた総二郎と類も心配そうにしている。
10mに向かおうとしているが、あきらに止められているのが観客席からも見えた。

「おい本番前だぞ、体壊すからやめておけよ」
「本番前だからこそでしょ、行くよ」

コーチの制止も振り切って10m台へ向かうのだが、本人よりも周囲がハラハラしてしまう。
大きく頭を振って息を吸うと、一気に10m下目がけて飛び込む。

「ダメだな、アイツ大丈夫か?」

水しぶきは上がらなかったが、入れなければならない回転がひとつ抜けていた。

「あと15分くらいで始まるぞ?ホントに大丈夫なのか?」
「うーん、どうしたんだろう、牧野らしくないよね…」

異変を感じていたのは周囲だけではない。
当の本人がここへ来ての不調に一番気付いているのだが、認めたくないのか両手でパンパンと頬を力いっぱい叩いてどうにかして雑念を振り払おうとしていた。

ただ振り払おうとしても浮かんでくる道明寺司の弱気な顔。
つくしは一度控室に戻ることにした。

控室に戻って椅子に座る。
これから準決勝に臨む数名の選手がすでにそこにいて、集中力を高めているのがわかる。
当然この選手たちはこれから戦う相手でありライバルだ。
つくしはこのピリピリしたムードを感じ取り、控室に来たことを後悔し始めた。
これならプールサイドの端でうずくまって待っていた方がまだマシだと。

すると視界の端にチラチラと動くものを感じてそちらを向いた。

「あ…始まったんだ…」

そこには赤と青のヘッドギアを付けたオトコがふたり向き合って立っている。

見間違えるはずもない。
モニターに映るオトコの表情は、今朝見たそれとはまったく違うものだった。



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