Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 14

予選を2位で通過したつくしは、日本からの報道陣にメダルの感触について問われ

「まだ明日の準決勝、決勝とあるのでなんとも言えませんが、自分らしい試技をするだけです」

と答えて足早に会場を後にした。
明日順当に進めば午前10時に準決勝が行われ、16時には決勝となる。

予選では予想以上にいい成績が残せたが、リオのプールは屋外で風の影響を受けやすいことがよくわかった。
世界ランキングでつくしよりも上の選手が数名いることを考えれば、今日の試技は奇跡であり、明日はこうはいかないだろうと気持ちを引き締める。

ホテルに戻り、ストレッチと軽い筋トレをこなしていると、部屋の外がザワザワと騒がしくなる。
恐らく道明寺一行が戻って来たのだろうと思っていると、カードキーの開くピーピーという音とともに重厚な扉が開いた。

道明寺司を先頭に、黒いスーツの男たちをが周囲を固める光景は異様であり、数日間その光景を見続けているつくしでさえ未だに慣れない。

「お、お疲れ様です」
「おう」

明日はテコンドーも試合が始まる。
しかも1回戦から決勝までを明日1日で行うわけだし、決勝まで行くとなると明日だけで4試合も行わなければならない。
集中力を切らさないためなのか、いつもよりも殺気立っているように感じられた。

ところが、黒いスーツの男たちが部屋を出て誰もいなくなっても道明寺司は個室に入るわけでもなくリビングスペースのソファに座ってリラックスしている。
耳にはイヤホンが挿しこまれ、音楽を聴いているのか目は閉じられている。

つくしも明日は大事な試合だ。コーチやスタッフと入念な打ち合わせも済み、風呂に入って軽く汗を流して早々に睡眠に入ろうとする。

すると

「お互い、明日だな」

そう司が話しかけてきた。

「そうですね…あの…本当に傷は大丈夫なんですか?」
「またそれかよ」

そう言って微笑んだ。

「なあ、まだ時間平気なら、少し話さねぇか?」
「はぁ…」

司が戻ってきて居場所がないから入浴して早めに寝ようかと思ったところだし、まだ十分余裕はある。

ソファに腰かけると

「今日の試技、よかったぜ」

この男に飛込競技の何がわかるのか。
つくしはなんだか可笑しくなってつい頬が緩んでしまった。

「そうですね、今日は風が強くてどうなることかと思いましたけど、ラッキーだったと思います」
「飛び込み選手にだって屋内と屋外で選手によって得意不得意があるんだろ?」
「ええ、私はどちらも苦手ではないですけど、今日みたいに風の影響を受ける分屋外は難しいと思いますよ。タイミングと風の計算が瞬時にできる選手は屋外でも強いと思います」
「なるほどな…」
「テコンドー、明日は1日で予選から決勝なんですってね」
「そうだな、一番キツイのは準々決勝から準決勝の間じゃねぇか?試合の間隔が1時間しかねぇし」
「疲れ、1時間じゃ取れないですよね」
「疲れはそれほど影響しないが、1時間集中力を持続させなきゃなんねぇのが辛いな。ま、それも1回戦で負ければ関係ないけどな」
「ずいぶん弱気ですね。メダル、取りに行くんじゃないんですか?」

すると司は驚いたようにこちらを見てこう言った。

「試合前はナーバスになりやすいのかもな。いつもこんな感じだぜ。ただいつも誰と話すわけってわけじゃねぇし、気づかなかったな、弱気に見えるのか?オレ」
「弱気って言うか…いつも堂々として自信に満ちてる人の口から1回戦で負けるなんて出ると思わなくて…」
「オレだって人間だ、普段見せないだけで弱気になるときもある」
「そうなんですね…」
「ただ、オレは明日、負けるわけには行かねぇんだ」

つくしはそのあとに続く言葉を聞くのが怖かった。
金メダルを取ればこのオトコとの交際を考えなければならない。
競技と恋愛を絡ませるのはおかしなことだが、妙に意識してしまう自分を感じていた。

「こないだのあれ…変に考えることはねぇぞ」
「こないだのアレって…」
「オマエを手に入れるためにメダルを取るなんて、考えてみれば動機が不純すぎる。そもそもオレはこの競技で世界を獲るためにやってきた。オマエもそうだろ?オンナを手に入れるために試合に臨むなんてオレもどうかしてた」

つくしは目の前のオトコが発する言葉が意外で仕方ない。
もちろん言ってることは正論だしスポーツマンとして当たり前のことだ。
しかし今の司はつくしが見てもかなり精神的にナーバスで、これでは決勝どころか1回戦で消えてもおかしくない状態である。

「変なの…」
「?」

つくしはつい口に出してしまう。

「なんかガッカリだわ、メダルにあれだけ貪欲だった道明寺司のこんな弱気なとこ見るなんて。そんなんじゃ1回戦突破も無理なんじゃない?いい?アタシは誰がなんと言おうとメダルを日本に持ち帰る。そのつもりでやってきたんだから絶対できる、ううんメダルがアタシを選ぶはずよ!」



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6 Comments

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2017.06.19 07:44 | | # [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
お話を再開させてみたものの、季節外れ感が半端なく、調べると言っても情報が少ないため苦戦しております。
しかも「書けない病」を患っておりますので、ダブルパンチでもあります。
私もかつてはアスリート(もどき)でしたが、試合前には精神を集中させなければなりませんので大変だと思います。
オリンピック選手ともなれば重圧もあるでしょうし、そこにラブを挟むのが不謹慎なんじゃないかとさえ思ってしまいます。
緊張感が伝わるようなお話が書ければいいのですが…ね…(笑)
2017.06.20 22:21 | URL | #- [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.06.21 07:54 | | # [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.07.03 14:10 | | # [edit]
やこ says..."かなた様"
返信が大変遅くなりました。
このお話、当然構想はリオオリンピックの直前に練られたもので、当時の情熱がぶっ飛んでしまっております。
なんとか当時を思い出し、完結を目指そうと思います。
2017.07.12 20:45 | URL | #- [edit]
やこ says..."K研究員様"
申し訳ありません、なんとか生きております(笑)
ワクワク学校のグッズをスーパー読者S様に送っていただきまして、テンション高くなっておりますが、PCに向かう元気はまだございません。Shake It!でもヨダレを垂らしながら見ればなんとかなるでしょうかね?この夏はダメかもしれませぬ💦
2017.07.12 20:49 | URL | #- [edit]

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