ラブ・シンドローム 102 完 

牧野を送り出してから、オレの選択は本当に正しかったのかと何度も何度も考える。
オレが提案した精一杯の妥協よりも、牧野にとってこれ以上なくいい話が舞い込んだ。
アイツの性格を知ってるオレは昔みたいに強引にはなれなかった。

たった1年。

7年も離れて過ごしていたんだ、1年なんてすぐ、という気持ちに負けたと言えばそうなんだろう。
1年後、迎えにいけばそれで済む。
そう思って送り出したが、オレは今、強引にでも引き止めればよかったんじゃないかと後悔し始めている。

牧野がセキュリティチェックの為に扉の向こうへ姿を消した後、第1ターミナルの展望デッキへやってきた。
飛び立つ飛行機を見送ろうと思ったわけではなく、牧野の乗った飛行機がこの地を離れれば未練がましい気持ちを断ち切れると思ったからかもしれない。

「アホくさ」

牧野の乗る飛行機が滑走路に入ってくると、グングンスピードを上げでやがて飛び立った。

ああ、アイツは夢に向かって行っちまった。

人を見送ることなどほとんどなかったオレは、胸が締め付けられるような切ない気持ちに襲われ、オレがNYへ発つと決めたとき、牧野はどんな気持ちだったんだろうかと思いを巡らせた。
あの時アイツを残していくべきじゃなかったんじゃないか。ふとそんな風に考えてしまう。
ただ今回の渡米は牧野にとって夢を叶えるための願ってもないチャンス。きっと大きく成長し、もっといいオンナになって戻ってくるだろう。

応援してやろうじゃねぇか。いや、黙って応援すべきなんだ。

牧野を乗せた飛行機が空の彼方へ消えると、ガラにもなくオレの目から涙がこぼれ落ちた。

「天下の道明寺司も泣くことがあるんだね」
「おまっ、何してんだよ…」

振り返るとそこには先ほどアメリカに向けて飛び立ったはずのオンナが立っている。
オレは夢を見てんのか?
それとも感情をコントロールすることが出来ずについにおかしくなったのか?

目の前の女は開いたパスポートをオレに見せつけるのだが、そこには『VOID 出国取り消しにつき本証印を撤回する』というスタンプが押されている。

「どういうことだよ…」
「アタシ、苦労するのが好きみたい。アメリカに行って1年で奨学金を帳消しにするよりも、世界の道明寺司に多額の借金することを選んだんだから…」

牧野が言い終る前にオレの体は勝手に動き、小さな体をすっぽりと腕の中に閉じ込めると、もう決して離すものかと心に決めた。

「いい度胸だ、オレから借金するってことはオレから一生離れらんねぇってことだぞ」
「そんなの聞いてないよ」
「うるせぇ、今決めたんだ」
「一応ねそんなこと言われるんじゃないかって覚悟はして戻ってきたから」

多分今のオレ、誰にも見せたことがない顔をしているはずだ。
そして目の前にいるオンナの表情も今まで見たことがない。

「アタシは後悔なんてしない。だけどねアンタに後悔させるのがイヤだったから戻ってきたの」
「ずいぶん上からだな」
「当然よ、美味しい話を蹴ってまで残ってあげたんだから」
「よく考えろよ、オマエは今日からオレの債務者だぞ、大きな顔して後で泣くなよ」
「泣いて借金が帳消しになるならいくらでも泣いてやるわよ。いい?きちんとした借用書作っておかないと踏み倒すからね」
「まったく…」

オレと牧野らしいやり取りがここまで心地いいとはな。
もう一度牧野を力いっぱい抱きしめ

「いいか、もう離れんなよ!」
「望むところよっ!」

お互いにそう大声で叫んだ。


~fin~




■あとがき■

途中お休みをいただきながらも長い連載にお付き合いくださいまして本当にありがとうございました。
当初の予定よりだいぶ早い完結となりましたので、最終的にきちんとまとまったのか大変怪しく思っております。
「え、なにこの終わりかた」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは力量不足だから仕方ない、と温かい目で許してやってください。

20yearsシリーズはアットホーム、Take it easy!シリーズは司既婚者、教習所シリーズはチョイエロコメディ、そしてリオデジャネイロはパラレルってな感じで、どうも何かが物足りない。
坊ちゃんがライバルとバトルを繰り広げる展開をと考えていたところ、類君をライバルにしたお話が思い浮かんだわけです。王道コースですね。
ところがお話を一気に7年後にふっ飛ばしたことで、一部の読者の方より「さよなら宣言」やら「え?いきなり?」みたいなコメントもございまして、ぶっちゃけテンションダウンしました。
例えばですけど7年の大学生活プラス研修時代、そのまま書いてたらきっとまだ2年生に上がったくらいの亀ペースだったと思います。しかも司とは一度も会っていない状態ですし。
あのまま書いてたら完結までどれだけの時間がかかるのかと思うだけで、ゾッととします。
そして運悪く(?)個人的な事情も重なり、連載ストップとなりましたが、4月のオフ会で「書け!書くんだやこ!」という生の声を受けまして、自分に檄を飛ばしなんとか完結させることができた次第です。

再開してしばらくは、正直ちょっと辛かったんですが、お話を進めていくと次第にノッてきてストックもすこしできるようになり、リクエストに応えることもできるようになりました。
これはですね、お話に併走してくださったコメント常連の皆様、また拍手ボタンやランキングボタンを押してくださった方々の支えがあったからにほかなりません。

そしてブログ村のランキングも私のヤル気をUPさせたもののひとつでした。
本当にありがとうございました。

さて、今後の連載についてです。

明日の6時からは「ラブ・シンドローム」の後日談、番外編を数話お届けします。
実はこの番外編ですが、本編にくっついていたお話で、本編がもう少し長くなる予定でした。
ところが読み直してみたら、「なんか違う」という感じで102話以降に最終話を持ってくると変な終わり方になりそうな気がしました。
「このつくし、まだグダグダ考えてるの?」
と怒られそうで…。


私のサイト運営のスタイルは、おおもとになるお話があって番外編を増やしていく、というものがほとんどです。
ラブシンはこれだけ長く連載しましたのでやっぱり思い入れがあり、このまま終わらせるのは忍びないですし当然番外編も考えておりました。
以前ある方のコメント返信に書かせていただいたのですが、主人公を結婚させてしまうと「20yearsシリーズ」に見られるように、書けることが「出産」「育児」「孫誕生」みたいな感じになりラブとはちょっと違うテイストになってきます。
そういった点を考え、ラブシンのふたりは結婚させず番外編への含みを持たせる感じで完結させました。
この調子だと結婚はまだ先かな…とも思いますがどうでしょうね?

少し話が逸れましたが、明日からはラブシンの番外編、番外編終了後は半年以上放置している「リオデジャネイロ狂想曲」の完結を目指します。パラレル作品ですしオリンピックもずいぶん前に終わってしまい、パラレルはあまり好きじゃない等あまり人気はありませんが、お待ちいただいている方がいるのも確かです。
やはり始めたものは終わらせなければなりません。
元々それほど長くなる予定のお話ではありませんので、興味のある方はお付き合いいただけると嬉しいです。

そして「リオデジャネイロ狂想曲」終了後、今のところ新連載の予定はありませんので、既存のお話の番外編とその時浮かんだ短編を公開していく予定です。

最後に…長い間お付き合いいただき、たくさんの叱咤激励ありがとうございました。
このお話を完結させるまで、いろいろなことがありすぎて少々ロスっております。
このまま花男の二次小説を続けるか、ずっと書きたいと思っていたものを書くか、イラストブログに戻そうか、キッパリ足を洗うかも含めて、少し考える時間を取ろうと思います。

やこ









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

12 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 06:09 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 06:27 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 07:09 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 07:12 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 10:13 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 10:34 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 15:27 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 17:45 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/27 (Sat) 17:57 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/28 (Sun) 03:30 | REPLY |   

やこ  

rinrinemilly様

コメントありがとうございます(^▽^)/
うちのつくしは決めるところは決めます(とか言ってみる)

確かにつくしがアメリカに行って研修を終えて帰る、というお話も一瞬だけ考えてみたこともありました。
でもそれって酷かな(笑)と。
「そうきたかぁ!」みたいに言われるのが好きなんですよね。つかつくってもう出尽くした感じがあって、どんなお話を書いても誰かがすでに似たようなお話を書いているってケースが多いと思うんです。
なるべく今までにないお話を書ければ、と思ってるんですけどね。コレがまた難しい。
「裏切りやこ」(笑)う~ん、いい響き(・∀・)ニヤニヤ

2017/05/28 (Sun) 20:55 | REPLY |   

やこ  

シズ様(拍手コメ)

一気読みされたんですね、さぞかしイライラされたんじゃないかとお察しいたします(笑)
類君をライバル的な位置づけに決めたはいいけど、イマイチライバルになりきれなかったのが心残りです(笑)もっと揉めたら超怒られてたかな。
限定記事もどうぞお楽しみくださいませ!

2017/06/04 (Sun) 13:57 | REPLY |   

Leave a comment