ラブ・シンドローム 97 

『道明寺さんと交換みたいな感じであたし花沢先輩の島に連れていかれたじゃない?』
「うん」

休暇でアタシに会いに来ていた筈の沙織を、類が道明寺と引き換えに連れて行ってしまってからどうなったのか気になってはいたのだがこちらもバタバタしていて気が回らなかった。

『全然理由がわかんないんだけど、花沢先輩に懐かれちゃって…』
「な、懐かれる?!」
『そうなのよ、島を出るときに名刺を置いてなんとか脱出してきたんだけど、2日前に名刺を頼りにここまで来ちゃったの!』
「ええっ!?」

類が他人に興味を持つなんて…。
確かに大学時代は高校の狭い交友関係に比べればずいぶん社交的になったと感じていたが、それだって同性の友人限定で異性に対して興味を持つなどとは想像もできなかった。

『島根も群馬も区別がつかない人だってのにここまで来たんだから追い出せないでしょ?仕方ないから泊めたんだけどね…』
「へぇ、そっちに旅館なんてあるんだ」
『違うよ、うちの診療所に』
「し、診療所に泊めた?あの類を??」

名刺だけを頼りに人を訪ねていくなんてことだけでも驚きなのに、初めて訪れた無医村の診療所に泊まった…?

『でさ…なんちゅーか成り行きで…ね…』
「なんのこと?」
『やっちゃったのよ』
「へぇ、そうなんだ、ビックリ!」

ん?

ん??

え???

「さ、さ、さ、沙織…や、やっちゃった…って…」
『いたしたのよ、花沢先輩と。エッチを』
「はあっ???」


***


なんだかおかしなことになっている。
すぐに類と電話に代わってもらって、島に戻るように言うと、次の日の夜疲れて眠そうな顔をして戻ってきた。
アタシは本島の診療所で類を待ち構えていた。

「ちょっと。こっちきなさい」
「わかったよ、大人しく行くから引っ張らないで!」

診療所内ではとてもできない話である。
人のなくなった海辺まで類を引っ張って行くと、大きな岩に座らせた。

「どういうことなのか説明して」
「どういうことって…」
「なんで類が群馬の沙織のとこまで追いかけていくわけ?」

あ、なるほどね、と言いながらニコニコして話し始める。

「ほら、牧野と司を会わせたでしょ?あの時ここに連れて帰ってきたんだけどさ、なんかチョコマカしてカワイイわけ。なんか傍に置いておきたいなーって思って名刺をもらったんだけど、気づいたら休暇取って群馬?に行ってた、で、気が付いたらやっちゃってた」
「だからっ!そういう露骨なこと言わないっ!!」
「いたっ、怒らないでよ」

あまりにもサラッというもんだから思わずポカポカと叩いてしまう。

「最初は名前も覚えるつもりなくて、あ、今でも怪しいけどね。でもなんか見てると可愛くてさ。観察してたら自分のものにしたくなっちゃったんだ」
「自分のものって…沙織はモノじゃないよ…」
「うん、わかってる。モノって言うのは冗談だけどね、もっとこの子のことを知りたいと思ったら止まらなくなっちゃったんだ」

大学時代のふたりの関係を知るアタシにとって、今の展開は謎でしかない。
当時沙織は類を『カッコいい』と言っていたのは知っているが、類は沙織の顔も名前も覚える気がなかったはず。まともに話しているのも見たことがない。

「好きなの?沙織のこと」
「うん、好きだよ」
「どんな風に?」

”好き”にもいろいろある。
類が人を好きになるなんて珍しいことだけど…。

「どんなって…そうだな、年とってからもこの子と一緒にいていろんな発見したいな…って感じ?」
「発見って…」
「なんて表現していいのかわかんないけど…誰彼構わずやっちゃうほど俺もテキトーじゃないよ。それなりに愛情があるからできたわけだし…」
「ってことは…沙織を愛してるってこと?」
「うーん、愛してるとか好きだとか…昔からそういう表現は難しくてよくわかんない。ただ静に対して抱いていたのとも、牧野を好きだと思った感情とも少し違う。大げさに言えば彼女のすべてを占領したい、って感じかな…」


***


類が沙織に恋をしている。

異性に恋をするのは自然な感情であって、驚くことではないけど…。
あの類が…である。
アタシは医薬品の発注書を前に頭を抱えてしまった。

「おい、なにしてんだ」

そしてここにもアタシを悩ませるオトコがひとり。
あの夜から特に進展はなく今もこのオトコとの関係は曖昧なまま。

「ああ、ごめん。なんでもない。どうかした?」
「書類取りに来た」

道明寺は週に一度、工事に関わる人の怪我人や病人をリストにした書類を取りに来る。これまで大きな怪我も病気もなくほとんど形式的な書類で元請けの総責任者がわざわざ取りに来るものでもない。

「次回から島から来る患者さんにお願いするからわざわざ取りに来なくてもいいよ」
「いいんだよ、オレが好きで来てんだし」

なんというかあの夜からなんとも気まずい状態が続いている。こんなところを北山に見られてはもっとやり辛い。

「今日は書類のこともあるけど、オマエと少し話がしたくて来た。ちょっと時間取れねぇか?」









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

8 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/22 (Mon) 06:45 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/22 (Mon) 07:47 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/22 (Mon) 07:49 | REPLY |   

やこ  

kachi様

類が恋に…

一度書いてみたかったんです。類つくさんでは幸せにしてもらってますけどつかつくさんではほとんど当て馬(もしくはフェードアウト)ライバルとして設定したからには、どうにかして幸せにしてあげたいと思ってました。
実は沙織ちゃんを出した時からこのふたりをどうにかしてやろう((・∀・)ニヤニヤ)と思ってたんです。
はぁ、長かった(笑)
主役のふたりが霞んでますけど、お話全体のなかでは気に入ってるシーンです。

2017/05/22 (Mon) 15:38 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

この展開、結構気に入ってます。N子さんの反応が怖いですが(笑)

残りわずかとなりましたが、二人はどんな話をするんでしょうか。
「なにこれ、この終わり方って…」みたいな空気になたらどうしようΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン

2017/05/22 (Mon) 15:43 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/05/22 (Mon) 18:01 | REPLY |   

やこ  

凪子様

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

類君、ヤッちまいましたけど、何か??(爆)
めっちゃ怒られるのではないか、だけど反応見てみたい(笑)
いえ、ワタクシドMとかではありませんが(゚Д゚;)

さおりん、類君の見た目は「カッケーッ」って感じですけど、付き合うとか恋におちるとか思ってなさそうな感じを出したいと思っておりました。
まさか凪子母さんが薬品落としたりガチャガチャやってるとはΣ( ̄ロ ̄lll)

番外編でこのふたり、もうちょい登場させますのでまた来てくださいね

2017/05/22 (Mon) 21:46 | REPLY |   

やこ  

かなた様


リスとかハムスターのような感じってことですね。
キャラの性格付けがあまりできていなかった沙織ちゃん。こんな感じになりました。

2017/05/23 (Tue) 22:02 | REPLY |   

Leave a comment