Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
-

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




3

ラブ・シンドローム 91

「…せい…牧野先生」

ハッ

北山に声をかけられて我に返る。
さっきまで普通に診察をしていたのに、ちょっとした隙間時間にボーっとしてしまう。

今朝道明寺が少ない荷物を持って仕事場へ移って行った。
過去には日本とNYで何か月も会わない恋人時代もあったっていうのに、船で数十分の距離だというのになんだか妙な気分。

医者がこんなことでどうすんのよ。


「すみません、ボーっとしちゃって」
「疲れてるんじゃないですか?午前中の診察は終わったし、午後の往診はお休みしませんか?今のところ症状の重いお年寄りはいませんし」
「いえ、行きましょう。あ、北山さんお休みしたいですか?」
「私は構いませんけど、先生がお疲れなんじゃないかなと思って」

北山はニコニコしながらそう言うのだけど、何か言いたそうでもあった。

「先生、寂しいですか?道明寺さんが引き上げちゃって」
「そ、そんなことはないですよ。北山さんたら何を…」
「医者だって人間ですよ。患者さんと同じように医者にもそれぞれ人生があります。例えすべてを失うことになって目の前真っ暗になっても、なんとかなるもんです」

妙にリアルな北山の言葉が気になった。
そういえば北山のプライベートはほとんど聞いたことがない。

「そういえば、北山さんはこの島の出身ですよね?看護学校は本土でしょう?よく戻ってきましたね」
「ああ、そういえば先生には話したことありませんでしたね」

なんとなく気軽に聞けないような気がしていたのだが、看護師になるためにはこの島の教育機関だけでは無理がある。

「中学を出て下宿をしながら高校、看護学校に進んだんですよ。最初はこの島に戻るつもりなかったんだけどね…どういうわけか」
「差し支えなければ聞かせてください」

北山はは少し恥ずかしそうにしながら話し始めた。

「看護学校時代に付き合ってる人がいたんです。今思えば本当にダメな男でね、あの頃は満足な仕送りもしてもらえなかったんで学生しながらアルバイトしてその男を内緒で養ってたんですよ」

北山の年齢を考えれば当時としてはかなり壮絶だっただろう。

「愛してたんですか?」
「実は途中からもう別れたくて仕方なかったの。でも居座られちゃたし忙しくて追い出せなくてね。軽くだけど暴力受けることもあったし」
「そうだったんですか…」
「あれは卒業間近で看護師試験にも合格していざ就職、ってときだったかしら。もうどうにでもなれって自暴自棄になりかけてたらね、島の中学を卒業して漁師を継いでた今の旦那が突然訪ねてきたんですよ。しかも婚姻届けを持って」
「ええっ」
「ビックリでしょ?どうでもいいと思いながらも一応付き合ってる人がいて一緒に暮らしてるのに婚姻届けよ?当然修羅場」

想像するだけで震えが来るのに笑いながら話している。

「学校を卒業するまで我慢してね…卒業と同時に旦那が計画的に『キレちゃった』のね。逃げるように島に戻ってきて、そのまま役場に婚姻届けを出したのよ」
「そ、その日に?!」

北山は懐かしそうに当時を振り返る。

「そう、交際日数0日、すごいでしょう?」
「すごいです…北山さん」
「旦那は数少ない島の幼馴染でね、当然恋愛感情なんてなかったんですよ。それでもなんとなく暮らしていくうちに、一緒にいることがとっても心地いいことに気づいたんです。それからかな、本当の夫婦になれたのは」

こんな夫婦のカタチもあるんだ、ごく一般的な働く主婦だと思っていただけに衝撃だった。

「そりゃね、大変でしたよ。資格はあっても働く場所はないし、漁師の稼ぎだけでは最低限の暮らししかできない。そうこうしてるうちに子供はできるし…。数年は借金しながら暮らしてました」
「大変だったんですね」
「今は笑って言えますけどね。苦しいながらも暮らしていたら診療所の看護師に空きができたんですよ。それからここで働き始めてなんとか人並みの生活ができるようになったんです。今はもう子育ても終わって私が働かなくてもなんとかなってますけど、苦しい時期に助けてくれた島やこの診療所への恩返しだと思って老体に鞭打って働いてるんですよ」
「後悔…してませんか…?」

北山の話を聞いて一番気になるのはそこだ。
いつも笑顔で患者さんに接している姿に不幸さは感じない。それでも話を聞く限り、流されるままにここまで来てしまった感はぬぐえない。そんな人生を本人はどう思っているのかが気になった。

「後悔?どうかしら。確かに若い頃は自分の意思とは関係のない方向に行ってしまったし…。子供たちは幸いまっすぐに育ってくれたし、旦那のことは島に戻ってからどんどん好きになれたけど…」
「けど…?」

北山は一呼吸おいて満面の笑みでこう言った。

「そりゃね、小さな後悔はたくさんありますよ。でも旦那や自分が死ぬときになって『こうすればよかった』って悔やむようなことがないようにと精一杯生きてるつもりです」



該当の記事は見つかりませんでした。

-3 Comments

says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017.05.16 07:48 | | # [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
こんばんは!

そりゃ寂しいですよ。大好きな坊ちゃんいなくなちゃったんだし(・∀・)ニヤニヤ
お話は(たぶんですが)だいぶ大詰めを迎えております。
グダグダなつくしちゃんもそろそろ年貢の納め時❤
もう少しお付き合いくださいませ。

CDですが、悩んでいます。
アルバムならねぇ限定版買っちゃおう!って感じですけど(通常版はレンタルか中古で買います)
シングル全部買ってると大変なことに(´;ω;`)ウッ…
2017.05.16 20:30 | URL | #- [edit]
やこ says..."みわちゃん様(拍手コメ)"
拍手おみくじが中吉とのことでしたがいいことありましたでしょうか?
私は素人で運試し的なことろが大きいですが、それ1日頑張れるなら嬉しいです(^▽^)

当初の予定よりもかなり駆け足ですが、そろそろお話も大詰め。
もう少々お付き合いくださいますようよろしくお願いいたします(o^―^o)
2017.05.16 20:33 | URL | #- [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。