Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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ラブ・シンドローム 82

「オマエが医者を志したくなった気持ちも今ならわかるような気がするわ」
「え?」

道明寺はまっすぐアタシの目を見てそう呟いた。

「医者なんて、なるのに時間はかかるし忙しい上に病気やケガなんかと向き合わなきゃいけねーだろ?最初はなんでそんな世界に入ろうなんて思うのか理解に苦しんだ」

道明寺に医者になりたい理由や自分の気持ちをきちんと説明したことがなかったことに気が付いた。
言えばきっと反対されるからと思い込んでしばらく言わないでいたし、進学先に至っては特に慎重になっていた気がする。

「あのさ…えっと…そういえばきちんと説明してなかったよね。この道に入ろうと思ったこととか夢とかさ」
「そうだな」

今なら冷静に道明寺に説明できるし、気持ちを伝えられるはずだ。

でも

今更それを道明寺に話したところでアタシ達の関係はもう終わってる。
言いかけてみたものの、再び黙ってしまったアタシに

「そろそろきちんと話してくれてもいーんじゃね?っていうか今聞いておかねーとオレが後悔しそう」
「道明寺…」
「話せよ、って今日はもう疲れてダメか?」
「聞いてくれるの?」
「オマエが話したいならな」

正直少し迷ってはいる。
今さら話したところであの頃に戻れるわけじゃない。本来なら医学の道に進むと決めたときにきちんと話してお互いに納得できるまで話し合うべきことだったから。

「とりあえず、あっちで座るか?ここで正座するよりマシだろ?」

道明寺は診療所の待合室に目配せし、そこにあるソファへ移動しようと言う。
確かに椅子もない畳の部屋では長い話は疲れてしまう。
アタシは静かに頷くと道明寺に続いて待合室へ向かい、あちこち傷んで擦り切れかけているソファへ腰を下ろした。

「最初は医学なんてまったく興味がなかったの」
「へぇ」
「てっきり英徳大学に進むと思ってた類が医学部に行くことはアンタがNYに発って少ししてから聞かされて、温室育ちのお坊ちゃんが敢えて茨の道を進むのが理解できなかったんだ」
「ま、そりゃそうだろな。今じゃ立派な医者先生だし」

道明寺は軽く笑うと再びアタシの話を聞く姿勢になる。

「高校3年の春から夏くらいだったかな、担任に進路指導室に来るように言われてね、類の進学した大学の制度がアタシの生活水準に合ってるから受験してみてはどうかって言われたの。その時は医学部に行くなんて全然考えてなくて。でも、あの頃のアタシは、アンタと釣り合うようなオンナになるために医師って道もあるかもしれないって思ったの」

何を思って聞いているのかはわからないが、道明寺は腕を組んで静かに聞き入っていた。

「それで?」
「あ、うん。この道に入ったきっかけは類の医学部進学かもしれないんだけど、知れば知るほど医学に興味を持ち始めて、何度か見学にも行ったんだ」
「で、産婦人科医になりてーの?」
「どうかな。普通は大学卒業すると大学病院の医局に入って専門分野をみっちり現場で学ぶの。だけどアタシ達は卒業から数年は都の医療施設に勤務することが奨学金を返済しなくていい条件なの。今は奨学金を返済している途中って感じで総合診療医として働いてはいるけど、専門分野を持とうとするとまた数年間学び直さなきゃいけないんだ」
「ま、そうなるだろうな」
「医学部を卒業した今も産婦人科に進むことができない状態でこの島にいて、また都内に戻って数年働いてたら30歳なんてあっという間に過ぎちゃうじゃん。そこからまた数年実務経験積んで専門医に認定される時のことを考えたらね…婚期逃しちゃう」

今だからこうして笑って言えるんだろう。
あの時は本気でそう思っていたけど、喧嘩腰になって上手く説明できないことも多かった。
こうして別々の道を歩んでる今になって、きちんと説明できるなんて本当に皮肉なことだと思う。

「今更信じてもらおうとは思ってないけど、あの時のアタシはアンタとの将来を自分なりに考えてたつもり。でも…たぶん将来を決めるには若すぎたんだと思う」
「今は?自分の将来どう考えてんの?」
「え?」

自分の進むべき道…義務年限の件を抜きにすれば今すぐにでも産婦人科の医局に入って学び、産婦人科医としてやってきたいとは思う。昔に比べたら経済力がそれなりにあるとは言っても、一気に返済して医局に入る余裕はない。

「このまま都の職員として与えられた職務を全うしたあと、どこかの医局に入局して産婦人科医を目指したい…かな」
「なるほどな」

そう相槌を打った後、道明寺はアタシをまっすぐに見てニヤリと笑った。

「なら、結婚しようぜ、オレ達」



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4 Comments

says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.05.03 08:57 | | # [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.05.03 10:14 | | # [edit]
やこ says..."かなた様"
直球!
そうそうこれこそ坊ちゃんの本当の姿です。あれこれ考えるよりも本能のままに動く!サイコー
2017.05.04 17:47 | URL | #- [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
こんにちは❤
私も今日は久々に朝寝坊いたしました。やっとお休みって感じですけどコチラはけっこうな事件が起きております(笑)

そう、お話って結構降りてくるんですよ。私はどちらかと言うとなんとかひねり出すタイプですが、今回は最高にリラックスしているときになんとなく浮かんだので1時間くらいで一気に書きました。
ちょうどお昼に間にあったので喜んでくださった方も多かったようです。
2017.05.04 17:50 | URL | #- [edit]

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