ラブ・シンドローム 80 

おお…再開したばかりだけど、もう80話…
よくここまで書いたものだとビックリです。

でもまだまだ続くよ。


ではどうぞ







ドンっ

これからひとりでどう対処すればいいのかと考えると心臓が口から飛び出しそうだ。
落ち着いて、今ここに医師はアタシしかいない。アタシがこんな状態じゃ稲垣さんも赤ちゃんも救えない。
どうにか気持ちを落ち着けて乱れた心を元に戻そうとするのだけど、どう考えても自分一人の力では無事に出産させる自信がない。
どんな手を使ってでも類をここへ連れてきてもらえないかと、道明寺に頼んではみたけど厳しそうだ。

もう何が何だかわからない状態で取り乱していると突然目の前が真っ暗になった。

「あ…」
「いいか牧野、落ち着け。オマエは何だ?」
「アタシは…」
「よく聞け。オマエはオレとの将来を捨てて医師になる夢を追いかけてその夢を叶えたオンナだ。今ここに医師はオマエしかいない。オマエがやらなきゃ妊婦も赤ん坊も死ぬぞ!しっかりしろ!!」

道明寺は力いっぱいアタシの体を抱きしめ、右手でアタシの頭を撫でながらそう叫ぶ。
すると今まで強張っていた体からスッと力が抜けていった。

そうだよ、アタシは総合診療医。島民の健康を預かる存在じゃん。どんな状態にも冷静に対処しなければならないんだ。

「…アタシは医師だよ。誰も死なせない…」
「そうだ、オマエは医師だ、オレも付いてる」

ダラっとぶら下がった状態の両腕に力を込めると、その腕を道明寺の背中に回して力を込めた。なぜこんな行動を取ったのかはわからないけど、そうすることで落ち着けるような気がしたからだ。

ああ、もう何年も前に別れた人なのに、なんでこんなにアタシを安心させるんだろう…。

道明寺から離れて着衣を直すと、外に向かって気合を入れるように力いっぱい叫んだ。

「北山さん!出産に入ります!稲垣さんの受け入れ準備を始めましょう!」
「そうだ牧野!しっかりしろっ、オレは類に連絡を取って待機するよう話しておく」
「お願い!」

覚悟を決めて出産に臨もうと決めたけど、自信があるわけじゃない。
あの頃みたいに抱きしめてもらって我に返り、覚悟を決めることはできたけど…。

どうしよう、こんな時にこんなこと言い出したら怒るよね、軽蔑されるよね。
でもあともうひと押しが欲しいの。

「道明寺…あの…ね、お願いがあるんだけど…」


***


準備が整い最後の消毒を済ませると、稲垣美智が診療所に運ばれてきた。
陣痛はまだ来ていないが心配していた通り前日の熱が悪化しており、体調がいい状態とは言えない。
破水をしたからにはできるだけ早く出産させないと。

大丈夫、きっとうまくいく。

道明寺が本島にいる類と連絡を常に取れるように手配してくれているし、ベテラン看護師の北山もいる。

稲垣美智の熱は高めで単なる風邪の症状ではあるものの顔を赤くして呼吸も荒い。これから促進剤を投与すれば間もなく陣痛が起き出産に入ることになる。

「稲垣さん、熱で辛いと思うけど、今から陣痛促進剤入れますね。徐々にお腹が痛くなって苦しいし辛いけどしっかりね」
「は…はい…」

なんとも頼りない返事だが、破水したからには出産させるしかない。
産むほうも産ませるほうも覚悟して臨まなければ。









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4 Comments

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2017/04/30 (Sun) 08:46 | REPLY |   

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2017/04/30 (Sun) 19:25 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

その後携帯は直りましたでしょうか?

大野君のコーナー、私もスキですよ。
なんというかあのダラ~っとした感じがなんとも言えないです(笑)

2017/05/02 (Tue) 10:12 | REPLY |   

やこ  

kachi様

出産してから干支がひと廻りしてしまったので、思い出すのに必死です。
ここ最近司放置してましたので少しカッコよく書こうと思ったのですが大丈夫でしたでしょうか??

2017/05/02 (Tue) 10:13 | REPLY |   

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