Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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ラブ・シンドローム 65

「長野社長、と、とりあえず診療所に移動しましょう。詳しい説明は診療所で聞きます」

北山の運転する車に意識のない男性を乗せて診療所へ急ぐ。
大きな男を小型車に乗せるのは至難の業だったが、何とか男たちの手を借りて後部座席に乗せる。
心拍は問題ないし少し荒いようにも感じるが呼吸も正常の範囲内。

ただ―

アタシの心臓が破裂しそうだった。

なんで?
なんでこんなとこにいるの?
なんで港で倒れてるの?

「牧野先生、ヘリ搬送要請しますか?それから患者さんの身元ですが…」
「北山さん、診療所に着いたらとりあえず本島の花沢先生に連絡取って。たぶんだけど…ヘリは必要ないと思うけど…本島への移動はしなきゃいけないかも…」
「わかりました、長野社長に身元を聞きましょうか?」
「ああ…そうですね」

そんな必要ないよ北山さん…

だって、誰よりもこの人のことアタシがよく知ってるもの。


***


「ん…」

ゆっくりと長いまつ毛が開き、朦朧と天井を眺めている。
事務長と北山の手を借りて診療所のベッドに寝かしつけ、必要な処置はおこなった。
もちろん命に別条はない。

「気が付いた…?」
「…」

目の前の男はここがどこであるかも、アタシが誰かもイマイチ把握しきれていない様子だ。
意識が戻って痛みが蘇ったのか、顔をしかめている。

「一応、痛み止め入れた点滴してるから、少しは楽になると思うよ」
「お、オマエ…」
「うん、久しぶりだね道明寺」

目の前のオトコ。
7年前、お互いのことを思って別れた人だ。

「こんなとこでなにしてんだよ」
「何って…勤務だよ。僻地医療がうちの大学の義務だって昔話さなかったっけ?」
「ああ…、そうだな…そういや…そんな…イテッ」

無理に起き上がろうとしたのだが急に起き上がったため激痛が走ったようだ。

「虫垂炎だよ、盲腸。ここはCTないから超音波で検査させてもらったけど、虫垂の内部に膿が溜まってる。投薬は無理だからすぐ東京に戻って手術したほうがいいよ」
「虫垂炎だと?」
「うん、最初の痛みはお臍の部分だったでしょう?そこからだんだん右下のほうに痛みが移動しなかった?吐き気とか実際吐いたり…あとは便秘になったりやたらガスが出たり…」
「そう言われてみればな…」

すると背後から

「牧野先生、本島からお電話入ってます」
「はい、今行きます」

道明寺は不思議そうにアタシを見ていたが、黙って目を閉じた。

「ちょっと待ってて、すぐ戻るから」
「ああ…」


***


「牧野です」
「ああ、俺。急患だって?容体は?」

「27歳男性、急性虫垂炎でオペの必要ありですね。森先生こっちに来るの明日でしたよね」
「森は今東京に戻ってるんだ。明日は俺が代わりにいくつもりだったんだけど、これからそっちに行こうか?」
「可能ですか?」
「島の人でしょ?知らない人じゃないし」
「知ってる人には変わりないですけど…」
「じゃあ決まり、準備でき次第行くから」
「はい、おねがいします」

類とのやり取りはプライベートと仕事では完全に切り離してやっている。
向こうはどう思ってるのかわからないけど、これはアタシなりの仕事のルール。いくら仲のいい友人でも命を扱う仕事である以上緊張感を持って接するべきだと思っている。

類との電話を切ると道明寺のいる部屋に戻った。

窓の外に広がる海を眺めながら、口を開いた。

「医者に…なったんだな…」
「そりゃ…なるために大学6年もいったしね」
「元気でやってんのか?」
「うん、おかげ様でね。東京での研修は寝る時間もないくらい忙しかったけど、ここではのんびりやらせてもらってる」

意外だった。
この人くらいになれば、アタシの居場所くらい人に調べさせればすぐにでもわかっただろうに、アタシがここにいることも、医者として働いてることも知らなかったようだ。

「アンタは、なんでこんな小さな島にいたの?」
「長野建設の社長に会うために来た」

なるほど、大手ゼネコンの社長が直々にこの島へ来た理由がわかった。

「じゃあ、無人島のリゾート施設建設って…」
「ああ、うちで発注したプロジェクトだ」
「アンタがわざわざ来るから長野建設の社長もここにいるわけね。ところでアンタは秘書とかSPとか連れてないの?」
「極秘プロジェクトだからな…」

こんな風に話す日が来るとは思わなかったよ。
アタシ、きちんと返せてるかな…。



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7 Comments

says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.01.11 09:27 | | # [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.01.11 09:49 | | # [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.01.11 10:06 | | # [edit]
やこ says..."スリーシスターズ様"
コメント読んでギョッとしましたが、遅刻せずに学校へは行けたのでしょうか…。
実は定時9時じゃちょっと遅いかな、と朝6時に変更しようかと考えていたところです。

お話はやっと(笑)7年ぶりの再会になりましたけど、ふたりとも結構落ち着いてますよね(・。・;
まあ、7年もたてば両方ともかなり大人になっているという想像のもとでお許しくださいませ。
2017.01.11 15:21 | URL | #- [edit]
やこ says..."2525yuko様"
切ない気分を味あわせてしまって大変申し訳ありません。
もともとコメディ書くのが好きなので、シリアスは逆に難しくって皆さんに怒られながら書いてます(ウソです)
拍手のオマケは前回のものと同じ「司語録」なんですが、原作でややカッコいいセリフを抜粋しておりますので…。

拍手コメはついつい返信をこぼしてしまいがちになります(;´・ω・)
2017.01.11 15:24 | URL | #- [edit]
やこ says..."じゅんこ様"
一度離れても再会してしまうふたり。
いえ、私が会わせているんですけどね…ははは。

高校生→医大生→研修医と時間が流れております。医者として一人前になるころにはハッピーエンドを迎えたいんですけどね。
150話くらいで完結できれば…いや、それ以上か…。

オマケの返信です。
そうなんです。素人ですし不特定多数の方すべてに満足していただける作品作りは難しいですー。
読みたくないという人がいても仕方ないですけどね( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
2017.01.11 15:44 | URL | #- [edit]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2017.01.11 21:00 | | # [edit]

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