Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 10

現地時間8月17日15時


いよいよ女子10m高飛び込み予選が行われる。
つくしのコンディションは最高だった。前日緊張で眠れるかどうか心配で仕方なかったが、気が付けば朝でしっかりと朝食を食べ、軽くアップをした後今は美作コーチとともに昼食を摂っている。


「フォームの改善が間に合わないかと思ったが完璧に仕上げてきたな」
「そりゃね。最高の舞台で最高のパフォーマンスをしたいですから」


つくしの問題点は飛び込んだ後に体の軸がずれるところだった。
着水にはかなり自信があったが、軸がブレることで数回に一度大きく水しぶきが上がることもあった。その数回に一回がオリンピックの舞台では困る。
スタッフ総出でフォームの改善に務め、この場に臨む。

中学から始めた飛び込み。
元々競泳選手だったつくしは小学生時代はそれなりに成績も残したが、思春期に入り体型が変化したことでスランプに陥った。
そんなときに競泳プールの隣にあった飛び込みプールから飛び込むひとりの女性に魅了されて飛び込みの世界へ入っていった。

藤堂静

つくしが憧れ目標とした選手だ。
しかし彼女は不慮の事故によりプールを去り、今はどこで何をしているかもわからない。オリンピックでメダルは間違いないと言われ、その美しいビジュアルも注目を集める要素のひとつだった。
彼女に憧れ、飛び込みの世界に入ったつくし。
人に話したことはなかったが、どこかでつくしの成長を見てもらいたいと思っていた。


「静のことだが…」


美作コーチは選手時代の藤堂静を知っている。コーチになる前にスタッフとして彼女と同じ時を過ごしていた。


「どうも類と一度フランス遠征のときに会ったらしい」
「え、そんなことは全く話してませんでしたよ」
「おそらく静から口止めされたんだろう。あのふたりは幼馴染だし、今でも連絡を取り合っていてもおかしくはない」


つくしが静に憧れていることは花沢類も知っている。
元気かどうかくらい教えてくれたっていいのに、とつくしは心の中で膨れていた。


「お前が活躍すればきっと向こうから連絡してくるだろう。とにかく余計なことは考えないで予選突破することだけを考えろ」
「はい…」


今日の予選を突破すれば明日の準決勝に進むことができる。
準決勝は10時、決勝は16時だ。

明日と言えば…。

9時からテコンドー68キロ級の1回戦が始まると聞いた。順当に勝ち進めば決勝は明日の22時。同じ日ということもありお互いの試合結果をリアルタイムで知ることは難しいかもしれない。
金メダルを取ってつくしを手に入れると言った道明寺司。

先日の怪我の具合はどうなんだろうか。

お互いに試合が近づくと、同じホテルのスイートルームにいてもほとんど顔を合せることもない。


「おい、食いすぎだぞ。何考えてんだ」
「あ…」
「13時半になったら少し走ってこい」
「わかりました」


考えても仕方ない。いつも通りの演技をすることだけ考えようと母が持たせてくれたお守りを握ろうと右のポケットに手を入れた。
が、肝心のお守りがない。
もしかすると替えのジャージに入れたままなのかもしれないとつくしは思った。


「すみません、ホテルに一度戻りたいんです。忘れものしちゃって」
「それなら13時半にボディガードを連れてホテルまで走ってきたらどうだ?」
「はい、そうします」


正直なところ市街地を出歩くのは怖かった。比較的治安も安定している選手村とは少し距離もある。
チーム道明寺のボディガードにホテルに戻って忘れものを取りに行きたい旨を告げ、ひと先ず控室に入った。
時計を見ると12時30分。
あと数時間でつくしのオリンピックは始まる。

ついにこの日が来た。

つくしは夢の舞台に立つ。



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