教習所物語 番外編 後編 

「はーい」
「あ、隣の山田です。すみませんまたイッちゃったみたいで…」


誰だ?若い男の声だ。
イッたとはどういうことだ?
浮気の相手はこの山田って男なのか?

クソッ、浮気相手が登場してるってのにじっとしてなんかいられるか!


「おい」
「ど、道明寺!バカっ!中に入っててよ」


中に入るのはムスコだけで十分だ!


「どういうことか、説明してもらおうか?」


男は色白のヒョロっとしたモヤシみてぇなオトコだ。
黒縁のメガネをかけていかにも「2ちゃんねるでアスキーアート投げてます」みたいな雰囲気じゃねぇか。


「あ、お客様でしたか、すみませんでした」
「てめぇ、何者だ」
「隣の山田と申します。すみません、ボクの洗濯物が牧野さんのベランダに『また』入り込んでしまったみたいで…」
「『ボクの洗濯物』だと?」
「もういいよ。中入っててってば…」
「アナタもいかがですか?最高ですよ」


コイツ…何を言ってるんだ?
Tバックがコイツのモノで、サイコーだからドウゾとオレに勧めるとはどういうことだ?


「気にしないでください…次から気を付けて頂ければいいですから…」
「すみませんでした。お邪魔しました」
「おいっ!待て!…」


オレの叫びは空しくドアに跳ね返された。


「どういうことだ、牧野…」
「だから、アレはお隣さんのものなの」
「アイツ、男だろ?嫁でもいんのか?」
「独身だよ。ひとりで暮らしてる」


なんだと?独身のひとり暮らしなのになぜ牧野はアイツにTバックとブラジャーを渡したんだ?
しかも相手はモヤシみてぇな白いオトコだ。


「オレは…何を信じればいいんだ…うおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


両手を額にあてて大きく仰け反る。
もしかすると超絶カッコいいオトコのオレよりもあんなモヤシ男のほうが牧野はいいのか?


「そんなに叫ばなくても…」


おい牧野。
オマエはなんでそんなに余裕なんだ?

オレは我慢できずに立ち上がった。


「ど、どこ行くの?」
「安全確認だ」


オレは『ミラー・ミラー・目視』を済ませて牧野の部屋を出た。ついでに指差し確認も完璧に。
牧野の部屋の右隣、『山田』と書かれたプレートを指差すと、そのままチャイムを押す。


「はい…」と弱っちい声がしたと思うと、モヤシ男が恐る恐る顔を出す。

オレは小さく開いたドアを思いっきり開くとモヤシ男に詰め寄り部屋に入り込んだ。


「な、なんですかいきなり!」
「オマエ、牧野と浮気してんのか?さっきの下着はなんだ?」
「ちょっと、困ります!」
「わりぃな、入るぞ」


オレは靴を脱いで山田の部屋に入り込んだ。
すると夜だと言うのに部屋の中は真っ暗で、PCの灯りだけが異様に光っていた。
堪らず電気のスイッチを入れた瞬間、オレは目の前の光景に愕然とした。

無数の洗濯ピンチにぶら下がるおびただしい数のひも状のモノ。
よく見ると色や素材に統一感はなく、レース状のものもあればキラキラと光るものまである。


「なんだ…コレは…」
「ああ…見られちゃいましたね」


コイツ…変質者の類いか?
こんな男が隣に住んでるなんて、ソッコー引っ越しだ牧野!


「これはボクの趣味なんです。女性に限らず男性のTバック集めるの。たまに女性用のモノを穿いてみたりすることもあるんです」
「なんだと!?」


モヤシ男の話はこうだ。

ひょんなことから手に入れたTバックを穿いてみたところ病みつきになったのだとか。
興味本位で女性用のモノを穿いてみたら、あまりの気持ちよさに虜になってしまったというのだ。
特にレースが最高だとか得意げに言っている。
実は昨日穿いたらしく、洗濯してベランダに干していたところ、古いアパートで竿が繋がっていたため牧野の部屋に入ってしまったらしい。
こんなことはよくあるらしく、牧野は毎回黒っぽいビニール袋に入れて返すらしい。

最初はTバックコレクターで女性用まで愛用している変態モヤシ男にかなり警戒していたのだが、話をしているうちにどんどん引き込まれてしまい、すっかり意気投合してしまった。
聞けば勉強熱心な苦学生だというし、なかなかの好青年。このオレ様もモヤシ男・山田を応援してしまいたくなってしまった。

隣の部屋でヤキモキしながら待っているであろう牧野のことをすっかり忘れていた楽しい1時間。
類たち以外のダチができたようで嬉しくなっていた。

長い時間牧野を待たせてしまったことに気づいたモヤシ山田は『お二人で楽しんでください』と紙袋をオレに手渡した。
紙袋の中身がなんとなくわかるだけに苦笑いするしかないオレだが、好意に甘えて礼を言い山田家を出た。

牧野の部屋へ戻ったオレは、先ず誤解して責めてしまったことを素直に詫びた。
普段なら謝ることも稀だが、勝手に誤解したのはオレのほうだ。


「悪かったよ、事情も知らねぇで責めたりして」
「ううん、アタシもハッキリ言えばよかったんだろうけど、ホラ山田さんのプライバシーもあるからさ」


なんて思いやりのあるオンナなんだ。

改めて牧野に惚れ直したオレは、牧野に近づき甘く口づける。
こうなれば冷蔵庫の中にあるケーキよりも甘い時間の始まりだ。

ウットリとオレを見る牧野の向こうに、先ほど山田がオレに手渡した紙袋が見えた。
山田の奴め、なかなかいい仕事するじゃねぇか。
オレたちいいダチになれそうだな。

お互いにTバックを穿かせてあんなことやこんなことしろってことだろ?

オレは紙袋を手に取る。


「山田が迷惑かけたからってよこしたぜ」
「え、やだ」

やだじゃねぇよ牧野。オマエもすぐにコレの虜だ。
ガサガサと紙袋を開けワクワクしながら中身を取り出す。

Tバックマニア・山田。オマエの見立てが楽しみだぜ。



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4 Comments

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2016/09/14 (Wed) 11:23 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

笑っていただけました??
いつもより控えめかもしれないと思っていたんですが、笑っていただけて私も嬉しいです。

ネタ提供者ですか?ははは、実はとっても仲良しの二次作家さんなんですよ。
書いてるお話はすっごく美しいんですけどね、エロネタの宝庫でウブな私は相談するたびに赤面しっぱなしです。

ハイCD発売になりましたね。
初回限定版の予約はしなかったんですが、近所のTSUTAYAに売ってたので購入しようか迷っているところです。
来月にはアルバムも発売になるし、「ご近所嵐会」のJ担に借りてしまおうかと思う今日この頃。
真正MJファンにブン殴られそうです(・・;)

2016/09/15 (Thu) 00:36 | REPLY |   

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2016/09/15 (Thu) 09:00 | REPLY |   

やこ  

悠香様

MJ=マイケルジャクソン
数か月前に、まったく同じことを私に言った人がいます(笑)
いいですか、松本潤ですよ。嵐の。やこの愛する人のことです。

まとめ読みでも一気読みでも(同じか?)読んでいただけるだけでとてもありがたいです。
小説は頭も使いますので本当に難しい!ない知恵絞って頑張っていけたらと思います。

2016/09/15 (Thu) 21:31 | REPLY |   

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