Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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リオデジャネイロ狂想曲 2


「ま、まるさん!?」

「ん?」


思わず出た言葉を飲む込むようにつくしは口を両手でおさえた。

『まるさん』とは『2か月で廃棄処分』となった名刺持ち主の総称である。

比較的一度見た顔を忘れないつくしは、いつも心の中で名刺の人物を3通りに分けていたのがつい口に出てしまったのだ。


「高飛び込みの女子はオマエだけだよな?コーチやスタッフはどこだ?」

「え、あの…あそこに…」


何がなんだかわからない状態だったがかろうじて質問に答えていた。


「行くぞ」

「えっ?!」


気が付くと待っているはずの車とは明らかに違うバスに、コーチとともに乗せられていた。

空港には日本からかけつけた芸能リポーターや女性の黄色い歓声だけが残された。

乗せられたバスは外からは完全に内部が見えないようになっていてとても、いやすごく怪しい。

バスの内部は豪華なキャンピングカーのようになっており、運転席から後ろはダイニングキッチン風で、その奥には個室と思われる扉が見えた。


―なんて怪しいバスなの…?下手したらブラジルの治安よりも危険なんじゃないの?―


「あの…コーチ…」

「おい、なんで連絡してこねーんだよ」


つくしは自分と一緒にバスに乗せられた美作あきらコーチに話かけるが、『まるさん』に遮られた上に怪しげな扉の向こうにコーチともども押し込まれてしまった。


「きゃっ!」

「滅多に人に渡さねぇプライベートな名刺を渡したのに、なんで連絡してこねぇんだよ!」

「ひぃっ!だ、だって…初対面だし…気持ち悪かったし…」

「なんだと!?」

「いえっ!なんでもありません、こっちの話です!」

「まあいい。オマエも今日から合宿だろ?リオもそうだがサンパウロもそれなりに治安が悪いから、帰国するまでオレのチームがまとめて面倒みてやる」


確かに高飛び込みの女子代表はつくしひとりだが、男子の代表とサンパウロのプールで落ち合うことになっている。

異国の地で日本人に身辺警護してもらえるのはありがたいが、そもそもほぼ初対面のオトコにそこまでしてもらう筋合いはない

つくしはコーチに助けを求めるが、この様子を眺めていた美作コーチは首を横に振り、『あきらめろ』と目で言っている。


「あの~、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「なんだよ」


ただの質問にこれだけ怖い顔をされたことがないつくしは、冷や汗をかきながら聞かなきゃよかったと後悔した。


「あ、いえ。種目も違うし面識もないアタシ達をなぜこんなに親切にしてくれるのかな…と思って」

「試合日程もかぶるしオレもオマエも日本からの代表選手はひとりだけだろ?会場もお互いバッハ地区だし、ちょうどいいじゃねぇかよ。なんか文句あるか?」


文句しかありませんけど、と喉から出かかる言葉を無理矢理飲み込むが、言っておかなければならないことがあると思ったつくしは勇気を出して言ってみる。


「いえ、サンパウロで男子選手2名と落ち合う予定になってるんですが…」

「なに?男子選手だと?!」

「ひぃっ!あ、ハ、ハイ。えっと、あの…3m板飛び込みの西門総二郎選手と花沢類選手です」


すると道明寺司は中年の男性ひとりを手招きし、何やら打ち合わせをし始めた。

その間つくしは美作コーチに近寄り、無駄だとは思ったがこの事態が何なのかを聞いてみる。


「コーチ、どういうことなんですか?」

「俺も詳しいことはわからないが、噂によると道明寺司は相当な金持ちらしい。普段海外遠征は自家用ジェットで行くって聞いたことがあるな」

「じ、自家用ジェット?!」

「今回はサンパウロまでどういうわけか俺達と一緒の便で来たらしい。かなりレアなことだ」


他の競技にあまり興味のないつくしは、他の競技の代表選手がどのようにして遠征しているのかなど知るはずもない。
しかし海外の選手でさえ自家用ジェットで移動するなんて聞いたことがなかった。

エコノミーに乗ってきたつくし達がサンパウロに着いてから出くわしたということはファーストクラスに乗っていたのだろう。

高圧的で傲慢に見えるが、育ちの良さとか何事にも動じない余裕みたいなものは感じていた。


「おい」

「ハッ ハイ!」

「そのオトコふたりもこっちで面倒みてやる。予約してあるホテルはキャンセルしろ」


そう言って怪しげな個室から出て行くように促された。

つくしも美作も開いた口が塞がらない。

水泳連盟が用意したホテルに宿泊することになってるっていうのに、つくしはおろか板飛び込みの男子選手まで面倒見るとは。

美作と目を合せて呆然としていると、先ほど道明寺司が話をしていた中年の男が近くに座った。


「この度は強引な形でお車のほうにお乗せしてしまい大変申し訳ございません。チーム道明寺、事務方の責任者をさせていただいております西田と申します」

西田と名乗った男はつくしと美作に名刺渡して深々と頭を下げた。

つくしはテーブルにあったボールペンを手に取り、名刺の裏側に大きく『①』と書き込んだ。



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3 Comments

aoi says...""
西田さんは①なんだw
2016.08.08 18:06 | URL | #gEFj/EIQ [edit]
千冬 says..."a*i様"
コメントありがとうございます!
西田さんをマトモな人だと見抜いたんでしょうねぇ。
そのほかは全員危険人物!
パラレルでコメディ、しかも三人称にチャレンジです。
大好きなオリンピックネタ、楽しんでるのは私だけのようですが、頑張ります!
2016.08.09 02:42 | URL | #- [edit]
千冬 says..."m*m*様(拍手コメ)"
いつも拍手コメントありがとうございます!
我ながら妥当な判断だとつくしに成り切って書きました!
2016.08.09 02:44 | URL | #- [edit]

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