20years ago アノトキのふたり ⑥ 


「先生…今…なんておっしゃいました?」

その問いに深く息を吐きながら目の前の医者が告げたコトバ。

「牧野さん、あなたは妊娠されてますよ」
「に…妊娠って…何かの間違いじゃないですか…?」

カルテを見つつ事務的に医者は言う。
「間違いありません。花沢さんのご紹介なので、特別に今から産婦人科の医師を来させます。予定日は12月28日です。7月の半ばから終わりくらいには胎動を感じる時期に入りますね」
「12月…28日…?」
その日はつくしの誕生日。
自分が今妊娠していて、よりによって出産予定日が誕生日ですって?
父親は道明寺司しかいない。驚きしかない。

しばらくして産婦人科の医師が来て、あれこれと検査を受ける旨を告げる。
診察台に乗り超音波検査をすると言われ、エコー画像を見ながらあれこれと説明を受けるが、あまり頭に入ってこない。

「この動いているのが赤ちゃんの心臓ですよ」
「!!」
まだ豆粒くらいの大きさだろうか。それでも力強く鼓動する心臓の動きを見ていると、これまで信じられず、数分先のことさえ考えられなかったつくしだが、次第に気持ちが落ち着いてきて、別の感情が湧きあがっていた。

「学生さんですよね。未婚ですね?どうしますか?今ならまだ間に合いますよ」
「間に合う…?」
医師の言うことの意味が理解できない。目を合わせようとしないので何を考えているのかも読み取れない。

「先生、間に合うってどういうことですか?」
するとこれまで事務的にしか答えなかった女医がつくしをまっすぐ見つめてこう答えた。

「牧野さん。あなたはまだ18歳の学生さんよね?大学1年生。未成年なのよ?どういう結論を出すかはご両親やパートナーとよく話し合って決めないと…」
「先生、それって堕ろすってことですか?」
「その選択肢も考えて結論を出してください。紹介者の花沢さんを含め、このことは一切漏れることがありませんので心配しないでください」

産婦人科の診察が終わると、念のため今日は入院するように類が手配をしていたようで、病室に戻された。

―両親やパートナーと話し合ってどうするか決めるですって?

そっとお腹に手を当てる。

―ココに…道明寺の…子供がいる…。道明寺に電話して知らせよう。アイツ、どんな反応するかな?

「アタシ、この子を産むよ」

静まりかえる病室で、力強く言った。









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2 Comments

かなた  

病気ネタ(ガン)かと思って居りました。妊娠で良かった。良かったのか?

2016/04/28 (Thu) 18:21 | EDIT | REPLY |   

やこ  

かなた様

いや~、病気とかはもっともっと勉強しないと難しいですよ!時系列がおかしいんですが、本編の20年前なので…ね。

2016/04/28 (Thu) 21:01 | REPLY |   

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