20years 修正版⑫ 


東京に向かう車の中でウトウトしていた類は携帯電話の振動で目を覚ます。
「はい」
『牧野です…牧野…翼』

ぼーっとしながらも、ああ、と応えた。
「うん、どうしたの?」
『あの…もうだいぶ遠いですか?』

「そうでもないと思う。なんで?」
『花沢さんに聞くのが一番いいような気がして。母と道明寺さんのこと』

「ちょっと待ってて」
類は運転手に来た道を戻るとどれくらいの時間がかかるか確認した。
「30分くらいで戻れるみたい。さっきのお店に行けばいい?」

『ご迷惑でなければ…』
「いいよ、コーヒー飲み損ねたし」
ソコかよ、と心の中でツッコミつつ、翼は待ってます、と言って電話を切った。

30分後にバイト先の喫茶店に到着した類は、
「司と総二郎が飲んでたコーヒーちょうだい」
ドアを開けると同時に言った。

内心人選を間違えたかと思う翼にお構いなしにカウンター席に腰をかけた。
「で、何?息子」
「翼です」
ああそうだったね、それで何?翼君、と言い直すと男でも惚れ惚れするような顔で微笑んだ。

「他の皆さんとは別行動ですか?」
「ん、そう。これでもみんな大企業の重役だしね。みんなそれぞれ仕事先に戻ってるはずだよ」

「花沢さんは大丈夫なんですか?」
「うん、オレは今日牧野に会えるからオフにさせた」

「道明寺さんのこと、教えてもらいたくて…」
「司?うーんそうだね。バカで凶暴で単純?」
翼は完全に電話する人を間違えたかもしれないと、期待することなく後日美作あきらに電話しようと気持ちを切り替えた。

「母はそんな人のどこが好きだったんでしょうか?」
「うーん、それは今でも謎だね。オレも牧野に一度でいいから本音を聞いてみたい」

「そうですか…」
コーヒーを類の前に出すと、嬉しそうに口を付けた。
「でも司はまっすぐな奴だよ。すべてにおいてYESかNOしかない」

「それってどういうことですか?」
「20年間ただキミのお母さんを思い続けてきたってこと。司にとってオンナは牧野だけ、あとはただの人」

「それって本当なんでしょうか?」
「うん。そうだよ。司はずっと牧野のことを思いながら生きてきた。もちろんキミのこともね」

「オレにはよくわからないんです」
「そうだろうね。司や司のいた世界のことを数分で理解しようと思うのは無理がある」

「オレは正直、母が幸せになるなら道明寺さんと一緒にさせてやりたいと思ってるんです。でも18やそこらの感情が今でも続いてるって信じられないんですよ」
「なるほどね」

「だから花沢さんに聞くべきだって思ったんです」
「あのふたりの気持ちは…司が牧野を思う気持ちは今でもホンモノだし、牧野も司のことしか愛してないと思う」

「どうしてわかるんですか?」
「オレは一番近くでふたりを見てきたからね。」


*********


このドアを開けたらすべてがわかるんだろうか。中に道明寺司、オレの父親がいる。
オレはあの人に会って何を話す?何を聞く?
ドアノブに手をかけながら深呼吸をする。
ガチャ

「ただいま」
揃えて置かれている高級そうな革靴。いつもデカすぎて邪魔だと言われる28センチのオレの靴と同じくらいか?履き心地がよさそうだ。
「おかえり、翼」
つくしが奥の部屋から出迎える。

「道明寺さん…中にいるんでしょ?」
「ああ、うん。でももう帰ってもらうよ」
泣いたんだろうか、ちょっと腫れぼったい目を隠すように俯いて目を合わせようとしない。

「いいよ、オレ話したいっていうか聞きたいことあるから」
「アイツに?いいよ後で母さんが答えてあげるから」

「それじゃ意味がない。母さんも一緒に聞いててほしいし」
鞄をダイニングチェアの背もたれに引っ掛けると、道明寺司のいるリビングに入っていった。
「よう」
「先ほどはどうも」

緊迫した雰囲気につくしはオロオロするばかり。
バイトは終わったのか?という問いかけに
「ええ、おかげさまで今日は貸し切りにしてもらいましたけど、店番頼まれたんでマスターが戻ってくるまではとりあえず」

もう見てられない…とつくしが口を開いた。
「翼、なんか飲む?冷たいモノでも買ってこようか?」
「母さん」

「何がいい?」
「座ってよ」
思いがけない答えに、つくしはソファに腰掛けるしかなかった。

「オレに話したいことがあるんだろ?」
「はい」

「なんでも言ってくれ」
「はい」
自分のペースで会話をしようと気合いを入れながら帰ってきたのに、半端ない緊張感で逆に押しつぶされそうになる自分に気合いを入れた。
「なぜ20年も放っておいたんですか?」
「それは…」

「財閥のことは花沢さんに聞きました。仕事のことはオレもなんとなく理解できます」
「長い間、なんの援助もせずに放っておいて悪かったと思ってる」
まっすぐ自分を見つめる目に吸い込まれそうで、リビングテーブルに置かれたままになっていたヨレヨレの写真を手に取った。
「コレ…」
撮った記憶は全くないが、1歳になるかならないかくらいの翼と、翼を抱くつくしの写真だった。

「ああ、オレが持ってたオマエ達の唯一の写真だ」
「これだけ…ですか?」

「ああ」
「ほかにも手に入れることできたんじゃないですか?」

「確かにな。でもなんでかそれしか持ってねぇんだ。秘書に頼めばいくらでも手に入ったっていうのにな」
何度も眺めただろう写真を愛おしそうに見る顔は、これまでみた道明寺司の表情のどれよりも優しさにあふれ、慈愛に満ちていた。
聞きたいことは山ほどあったし、今まで放っておいたことをどう責めようかということばかり考えてここに戻ってきた。
でも翼の口から出たのは全く別のことだった。

「この写真の母とオレを思う気持ちと、今のあなたの気持ちに違いはありますか?」
翼の言葉に少し驚いた表情を見せた。
「ちょっと翼、何を言ってんの!」

慌てて制止するつくしを横目に司はまっすぐに翼の目を見て
「ないな」
と答えた。
「オレのこと、邪魔だと思ってますか?」
「思ったことねぇな」

「母を本気で愛してますか?20年前と変わらず」
「ああ」
「ちょっ…翼…」

「オレ達が、何か事件を起こしして、世の中から抹殺されるようなことがあっても寄り添えますか?」
「当たり前だ」
「……」

「母が、明日死んだらどうします?」
「お前を道連れにしてオレも死ぬ」
「ええっ?!」

「オレを道連れはちょっと困ります…」
「安心しろ、お前も牧野も死なせない」
「アンタね…」
大真面目に聞いたつもりが、プッと噴きだしてしまった。

「翼…アンタほんとにいい加減にしなさいよ…」
そういうつくしも少しニヤけている。
「母さんは?どうなの?」
「どうって何が…」


「お父さんが死んだら、どうするの?」









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4 Comments

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2016/04/11 (Mon) 10:06 | REPLY |   

やこ  

**長→*み*ち様

ハイ、お父さん言わせてしまいました。翼君は素直でいい子設定です。
業務連絡、了解いたしました。確認しに行ってきます(`・ω・´)ゞ

2016/04/11 (Mon) 10:52 | REPLY |   

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2016/04/11 (Mon) 13:55 | REPLY |   

やこ  

*ic*様

うん、気持ちが変わらないって理想だけどなかなかイナイ。
つかつくカップルは来世もラブラブな気がします。
ウチは出会って20年弱ですが、ラブラブですΣ(゚д゚lll)
ごめんなさい、ウソつきました(笑)

2016/04/11 (Mon) 15:21 | REPLY |   

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