20years それから③ 


「ああっもう!いつになったら我が家は楽になるの!?」
家計簿を睨みつけながら何度叩いても同じ数字を表示する計算機の液晶画面に文句を言う。

「財閥の元御曹司に嫁いでこのザマってなによ」
もうここまで来ると笑うしかない。学生時代から家族を養う大黒柱としてバイトに明け暮れ、翼を養うために必死で働いてきた。無職のオトコが転がり込んできたと思ったら必死で育てた息子までニート生活を送り始めた。
鉛筆を放り投げ髪を掻き毟っているとオトコ達が帰ってきた。

「オマエ、なにやってんの?」
大爆発のアフロヘア状態になったつくしの髪を眺めながら司が言った。
「ちょっとね!」
つくしがこうなっているときは大抵家計がピンチの時だ。こんな時に翼と家を空けたら発狂するだろうかと司は思った。

「オイ、ちょっとこっちこいよ」
「なによ」
オイオイいきなり喧嘩腰かよ。と怒り狂うつくしと余裕の表情の司とそんな両親の状態をハラハラしながら眺める長男翼。

まあまあちょっと座れよ、と優しくつくしの手を引いてソファに座らせると、司と翼も腰を下ろした。

「翼とふたりで、1年くらい家を空けてもいいか?」
「ハァっ?!」
デカイ目を更にでかくしてそっくりな親子を交互に見る道明寺家の大黒柱であった。


*********


「なあ、機嫌直してくれよ」
司のKY発言に完全にキレたつくしは、そのまま寝室に籠って布団を被る。きちんと話をきいてくれヨ、とドア越しに聞こえる司の呼びかけにもシカトを決め込む。

するとベッドサイドに置いてあるスマートフォンから軽快な音が鳴り、LINEメッセージが届いたことを知らせた。

『ごめん母さん、大事なことだからきちんと話しておきたい』

と表示されている。
司はどうでもいいが、カワイイ息子のお願いとなるとつくしも弱い。
カチャリとドアを開け目の前にいる司の太ももにケリを入れ視界をスッキリさせると、翼のいるリビングへ向かった。

「大事なことって何?」
「とにかく座ってよ」
翼に促されて腰掛けると、つくしにケリを入れられた太ももをさすりながら、司はふたりを遠巻きに見守るようにダイニングチェアに逆向きに腰を下ろした。

テーブルにふたつ何かを置くと翼は、見て、と首を少し傾げて右手で促す。

「通帳?」
『道明寺翼』と『道明寺つくし』と表示されたふたつの預金通帳が並んでいた。

「コレって…」
「うん、父さんと母さんが結婚するときに話してた『貯金』だね」
ついさっきケリを入れたことなど忘れて思わず司を見る。

「見てもいいの?」
「オマエ名義のモノはオマエのもんだから許可はいらねぇよ。翼のは翼に許可取ってから見ればいい」
つくしはなにかイヤな予感がしたが自分の名前の書かれた通帳を手に取りそうっとページを開いた。
イチ・ジュウ・ヒャク…と最後のページを開いて残高の桁を数えているうちに、自分でも血の気が引いていくのがハッキリとわかった。

「ごごごごごごごごご5億っ!?」


*********



司は左手をハンドルから外してジャケットの内ポケットに手を入れると、何やら取り出し翼の膝上にポイと投げた。

無造作に投げられたものは通帳で、『道明寺翼』と書かれていた。
こんなもんいつ作ったんだよという翼に対して、前にハナシただろ?まぁいいから中身を見てみろヨという司。
そういえば結婚するときに貯金があるとか言ってたっけ。500万くらいあれば、母さんも少しは楽になるかな、などと思いながらページをめくった。

「!!!!!!」
「驚いたか?」
すっかり節約主夫となった司がニヤリと笑う。

「なんだよ、この金額!」
「何って…10億だろ?」

一緒に暮らし始めて2年と少し。この人…ほんとにオレの父親なのか?









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