20years それから② 


「おはよう」
週末の朝はいつもゆっくりめ。特に道明寺家で唯一働いて家計を支えている大黒柱・つくしは土日だけはゆったりと過ごさせてもらっている。
特に昨晩はいい年した野獣に何度も襲われ、ヘロヘロ状態。一方その野獣はと言えば、毎日決まった時間に起きて、すっかり手慣れた手つきで朝食など用意している。あの無駄にデカイ体は何でできているんだろう?
ボーっとしながら進むと、何かに躓いて転びそうになる。

「きゃっ!!」
「おわっ!!」
『何か』の正体は23歳になった翼だった。

「ちょっとアンタなんでこんなトコに転がってんの?」
185cmの息子が狭いリビングの真ん中で寝転んでいた。
「イヤ…そのまぁ寝不足で…」
チラッと父と母を交互に見てニヤリと笑う。その意味をすぐさま理解したつくしは茹ダコのように真っ赤になった。

「もうっ!何なのよっ、デカいオトコが2人も家にいられちゃコッチだって堪んないわ」
バシバシと肩を叩かれ、翼は勘弁してくれと悲鳴を上げる。

デカいオトコチームの片割れと言えば鼻歌など歌いながら、オーイ飯できたぞ、などと悪びれもなく言う。
先に口の周りや手を汚してムシャムシャ食べているつぐみの世話をしてやると、司が声をかけてきた。

「オイ、今日は翼と出かけるからな。車乗って行くけどいいよな?」

つぐみが産まれてつくしは一念発起し車の免許を取得した。その時に翼の運転していた軽をつくしの通勤用にし、司が持ってきたBMWを処分して、少し大きめのワゴンを購入した。

『チャイルドシートを付けて、185のオトコがふたり乗っても狭くない安い車にしようぜ』
かつて使用人を何人も雇って暮らしていた大財閥の御曹司とは思えないほど庶民的な感覚の持ち主になっていた。

「別に構わないけどふたりでどこ行くのよ」
「まぁちょっとな」
最近ふたりしてつくしに隠れてコソコソしているのは知っていた。離れて暮らしていた親子だし、と思い、内心ムカつきながらも黙認してきた。

(ふたりで秘密持つなんてズルイ…)
一心不乱に食べ物と格闘するつぐみの世話を焼きながら心の中で膨れるつくしだった。



*********



「いいか、つくしには絶対黙ってろよ?だが金のことは心配すんな」

金のことを心配するなと言いながら行き先が図書館とはどいうことだよオヤジ?
鼻歌を歌いながらハンドルを握る父親をチラリと眺めながら翼は苦笑する。母親と出会った頃は大財閥の御曹司として、傍若無人にふるまい、贅の限りをつくしてきたらしい。
今や新聞広告を見比べて、やれどっちのスーパーが安いだタイムセールに行くぞだ、つくし以上に節約術に目覚めてしまったようだ。

「わかってるよ」

大学を卒業後、翼は就職せずに家にいる。
まさに父子ともにつくしに世話になるというニート生活が1年近く続いているワケだが、単に働きたくないわけではなく両親が結婚するとき父が提案した「一緒に事業を起こす」という約束にむかっての準備中なのだ。

「ねぇ父さん。こないだ言ってたネット関連ビジネスだけど…アレはメインが落ち着いてから副業とかのレベルで進めたほうが絶対にいいと思う」
そうなのか?と元・カリスマ経営者は興味がなさそうに答える。
一緒にやろうと誘ってきた割には自分から口を出すことなく、そうかそうかと翼の意見をニコニコしながら聞いている。

「じゃあ、結局オマエはナニが狙い目だと思うんだ?」
時折質問も交えてくるのだが
「うん、やっぱりいくら考えても高齢者介護ビジネスにたどり着くんだよね…」
ほほう、なるほど。と頷いている。

「高齢者介護ビジネスはこれまでもいろんな企業が手を出してるしな。保育所と並んで施設不足だし、よほどのことがない限り始めて大コケする事業ではないな」
「うん、高齢化社会が目の前に来ている状態で、法整備も改善の余地があるし、スタッフの報酬面でも問題点が指摘されてるけど、将来的な可能性が無限だと睨んでる。あとはターゲットをどこに絞るかってとこかな。気持ち的には貧困層って言われてる人たちに絞りたいとこだけど…ビジネスとなるとやっぱり富裕層メインかなぁと」

「オマエ、そっち方面に明るいのか?」
「いや、まったくの素人だよ」

「そうか。方向性が定まってきたなら基本的な知識を得るくらいにしてオマエは経営ビジョンを明確にしておけよ。あとは信頼できるスタッフに任せておけば現場のほうはなんとでもなる」
さりげなくアドバイスをするときの司の表情が翼はたまらなく好きだ。妻と愛娘には決して見せないビジネスマンの顔。23にもなって気持ち悪いが父親の愛情に飢えていた翼にとってつくしとつぐみを置いてふたりで出かける時間が楽しみで仕方ない。

「ただね、資金がどれだけ必要になるかがさっぱりわからない。立地とか設備とかある程度調べてはみたけど、ちょっと壁にブチ当たってるっていうか…」
するとニヤリとこちらを見てジャケットの内ポケットから何かを取り出し翼に向かってポンと投げた。

「金の心配はするなって言っただろ?」









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