20years 修正版⑬ 


「まったく…いい年して司も牧野も何考えてんだよ」
「総二郎…それはオレもそう思う」
お父様ぁ、と駆け寄る3人のそっくりな娘たちを抱き寄せながらあきらはつぶやいた。

「ったく、40過ぎて恥ずかしくねぇのかよ」
「いいじゃねぇか。20年も離れ離れだったんだし」
「オイ類!オマエもなんとか言ってやれよ」
本を読みながらウトウトしかけていた類が総二郎とあきらのほうを向いて言う。
「なに…?」
ズコっ

30分前の出来事を思い出し、類はクククと笑う。

息子に手を引かれてバージンロードを歩く新婦・牧野つくし39歳。
鼻の下が伸びっぱなしの新郎・道明寺司40歳。
そこにかつて大財閥を取り仕切り、きれいさっぱり整理して、残された弱小企業を復活させたカリスマ実業家の姿はどこにもなかった。
誓いのキスは神父に注意されるほど長く、式が終わってからも抱き寄せたり手を触ったり、過剰なスキンシップに目も当てられない。

「オイ翼、オマエあんな親でいいのかよ」
総二郎がイチャつくふたりをチラ見しながら言うと
もう諦めてます、とため息交じりに答える。

「年頃の青年が家にいるのを忘れて…それはもう…」
「いい、翼。もう何も言うな。オマエに同情するよ…」
片方の唇をヒクつかせながらあきらが言う。

「ついでに…オレ、どうやら兄貴になるっぽいです」
「「なんだってぇ!?」」
頭を抱えるふたりを見ながら、類が翼に微笑みかけた。



*********



『司ね、一度だけオレの前で君たちの写真を見て泣いたことがあるんだ』
コーヒーを美味しそうに飲みほすと、おかわりいい?と聞いてくる。

『オレは会いに行けばいいって言ったんだ。どうせ財閥はバラバラになってそれぞれ人の手に渡るんだしね。』
『道明寺さんがですか?』
異例のおかわり発言に再度豆を挽きながら信じられないという表情で類を見た。

『そうしたら、アイツ、牧野の気持ちを無駄にしたくない、目途がついたら必ず迎えに行くって。結局20年も経っちゃったけどね』
それオレにもやらせてよ、とコーヒーミルを翼の手から奪ってゴリゴリ挽き始めた。

『写真の中のキミを見て、『どんな声で泣くんだろうな…オレ達みたいなダチに出会えるかな』って…。そうやってつぶやいてるうちに涙が出てきてね…』
もう飽きたと翼にミルを返すとまた口を開けた。

『オレが気を利かせて部屋を出た瞬間、牧野と君の名前を連呼して大泣きしてた』




翼は類とお店で話した時のことを思い出していた。
泣く子も黙る大財閥の御曹司がワンワン泣いている光景…。聞いたばかりの頃は正直ドン引きだったが時間が経つにつれて、司の愛情の深さを感じるようになっていた。

この出来事が本当かどうかは類しか知らない。
例え類の嘘だとしてもふたりの愛情の深さや翼への思いは何一つ変わらないんじゃないかとこの両親をみてると思えてくる。




「お父さんが死んだら、どうするの?」
お父さんという言葉を発した翼をふたりは信じられないという表情で見ていた。

「翼…アンタ」
「で?どうなの母さん」

「え…ああそうだね。保険金で遊んで暮らすかな…」
「なんだと!?てめぇ!!」
すかさずツッ込む司に、うるさいわね黙ってなさいよと、パンチを入れる母。
そこに20年という空白は感じない。
まるで自分もずっとこの夫婦に大切に育てられてきたようにさえ思えた瞬間だった。

「じゃあ、お父さんにいっぱい保険金かけておかなきゃね。オレも楽したいし」
「あ…あの…翼??」
しどろもどろになりながら翼を見るつくしを横目に、

「お父さん、こんなオレ達ですけど、よろしくお願いします」
と頭を下げていた。

男前の父親は、どんな表情でも男前なのだが、あの時の口をぽかんと開けたバカ丸出しの表情はブサイク過ぎた。写真を撮っていたら間違いなく鼻毛を描いて眉毛をつなげたに違いない。

オレもまだまだ子供だな。









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