Beautiful days

花より男子を愛する自称永遠の乙女の妄想  ※現在、ブロとも申請を休止中
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20years 修正版⑩


突然の父親登場に続き、とんでもない大財閥の創業者の血を受け継いでいることを聞かされた翼の混乱は言うまでもない。
どうせ貸し切り状態にされて誰も来ない喫茶店。
冷静になる時間が必要と判断し、司とつくしは店を出た。

とはいえつくしは司と一緒に行動を共にするつもりはなく、できればここで別れてしまいたかった。

「牧野」
「なによ」

「オイ」
「だから何?!」

きちんとふたりで話し合わなきゃならないことが多いのに、この20年でパワーアップした意地っ張りな自分が常に邪魔している。

「俺達、キチンと話し合わなきゃなんねーことあるよな?」
「そうだね」

「なら話そうぜ」
「ねえ、それ今日じゃなきゃダメなの?もっと時間をおいて落ち着いてからだっていいじゃん」

「お前はあれこれ考えるなよ。ややこしくなるだけだ」
「……」

「オマエが住んでるとこに連れていけよ」
「なんでよ。話ならそこらのファミレスだっていいし歩きながらでもいいじゃん」

「オレが落ち着かねーんだよ」
急ぎ足で歩いていたつくしは、ぴたりと足を止めた。

「知るかっつーの!あのね、アタシは朝からずっと落ち着かない状態が続いてんの。わかる?こっちの都合も考えもせず、アンタたちが突然現れたせいで!」
「悪かったな!」

「この20年、お金はないけど平穏に暮らしてきたのに、いきなり父親が登場して…。どれだけ翼が混乱したかわかってんの?」
ああでもないこうでもないと押し問答していうちにふたりで住んでいる家の前に着いてしまった。

「ここに住んでるのか?」
「そうだよ。田舎だからアパートじゃなくって戸建ての借家のほうが多いし便利なの。そんなことどうでもいいからもう今日はとにかく帰ってよ」

「なあ牧野…」
もう疲れ果てて、話し合わなきゃならないことがたくさんあるのに、今日は帰ってほしかったし、ひとりになりたかった。だから道明寺の呼びかけにも無視を決め込んだ。

「オイ」
「……」

「返事しろよ」
「……」

「なんなんだよオマエ!!!」
「うるさい!!お願いだから帰ってよ!」

だんだん声も大きくなり、言い争っていると前の家の玄関が開いてこちらを伺っている。

「お茶一杯飲んだら帰ってよ。ここじゃ近所迷惑だから」
「ああ」

「悪いけどアンタのとこみたいに広くないし、出すお茶もいいもんじゃないから」
「オレのとこだって、今はそんなに広くねーし質素な生活してんだよ」

以前に比べれば規模はだいぶ小さくなっているが有名な企業の社長だ。田舎の借家暮らしとはワケが違う。質素?目の前のオトコに似合わないことこの上ない。

「はい、これ飲んだら帰ってよ」
「ああサンキュ」
安物のお茶を一口飲んで顔をしかめるのがわかったが年齢を重ねただけ大人になったようで、その後は顔色も変えずに飲んでいる。

「なあ」
「…」

「翼のこと…悪かったよ」
「…」

「産んでくれて…育ててくれて…感謝してる」
「別に当たり前でしょ、自分の子なんだし」

「今まで、何もしてやれなくて悪かった」
「…」

「オレのこと、父親にしてくれんだろ?」
「父親なんだから『してくれる』も何も…」

「俺が言いてぇのはそういうことじゃねぇよ」
「さっきから何が言いたいのかよくわかんないよ」

「20年経っちまったけど…オレ達やり直さないか?家族として」
「……」

「オマエはどう思ってんだよ」
「アタシは…」

「…」
「アンタが父親としてこれまで翼にしてやれなかったってことがあるなら、これから親子として付き合っていけばいいんじゃないかと思ってる」

「そうか!」
嬉しそうに表情を輝かせる。

「でも勘違いしないで」
嬉しそうな表情はつくしの発した「でも」という言葉によって一瞬で崩れる。

「アンタと翼のことと、アンタとアタシとのことは全く別問題だと思ってほしい」
「なんだよそれ」

「たしかにアタシは20年前アンタを愛してたから身を引いたし、勝手に翼を産んで育ててきた。でももう20年も前のことだよ?アタシにはアタシの生活があるし、捨てられないものだってある。今更アンタと家族になんてなれるわけがない」
「年数なんて関係ねぇよ」

「アタシはあの時のアンタと恋愛がしたかったし、家族になりたいと思ったこともあった」
「だから迎えにきたじゃねぇかよ」

「20年だよ?遅すぎたんだよ。今からアンタとアタシが翼を囲んで家族になるなんて考えられないし、未来なんか描けない」
「20年だろうが100年だろうが翼は俺とオマエの息子だし、俺はオマエと家族になりてぇ。オマエとの未来も描けるぜ?オマエ達を迎えに来るためだけにこの20年間必死で働いてきた。確かに欲も出たし遠回りもしてきた。オマエに出会って好きになったときと気持ちは全く変わってねーし、死ぬまで、いや死んでもこの気持ちは変わんねぇよ」

「だからもういいんだってば。これからは自由に生きていってほしい。アタシとは一緒にいちゃいけないんだよ。この20年間はアンタはアタシたちや会社の犠牲になって働いてきた。これからはアンタが好きなことをして、自由に生きてよ。アタシたちが恋愛してたほんのちょっとの時間なんかのために、アンタの人生これ以上無駄にしてほしくない」
「オレ、オマエの言ってることわかんねぇ」

「そうかもしれないね」
「オレはオマエのことだけしか愛せないし、他のオンナなんてオンナだとも思えねぇよ」

「別に今から好きな人を無理矢理作れって言ってるわけじゃないよ。翼を見て辛い思いするなら会わなきゃいいし、父親として翼と向き合いたいって言うならどんどん会えばいいと思う」

「オマエ、残酷だな」
「そうだね。残酷かもね。でもアンタはアタシのいない20年、会わなくてもしっかりと生きてきたじゃない…」

つくしがそういい終わるか終わらないかといったときに司はつくしの肩を掴んで思いっきり抱きしめた。つくしの目から涙がこぼれた。

「なんで泣く」
「泣いてない」

ああ、道明寺に抱きしめられている。あの時と同じ香り、同じ声、ちょっと年を重ねて白いものが見え隠れするクルクルの髪。

(アンタにもう一度会えてこうして抱きしめてもらえて、アタシはそれだけで十分だよ…)

ぎゅっと抱きしめられていた腕の力が抜け、両肩にその手が乗せられると。ゆっくり体を離していく。そのかわりに年を重ねても美しさの変わらない顔がつくしに顔に近づき重なった。



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