20years 修正版⑧ 


「辛かったね牧野」
「そうでもなかったよ。今働いてる建設会社の社長がね、母親代わりっていうか姉代わりっていうか、そんな感じで面倒見てくれてたし、翼も片親なワリにグレることなく育ってくれたしね」

「司の息子なのに?ククク」
「もう、笑い事じゃないって!でもいつかはこんな日が来るって覚悟はしてたよ。きっとアタシの居場所なんかとっくにわかってたんでしょう?」

「さぁどうかな?」
「もう、変わらないね、そういうとこ」

ああ、こんな心地いい気分、すっかり忘れてた。

「だから美作さんが翼に名刺を渡したって聞いて、ああ来たな、覚悟しなきゃって思った」
「この場合あきらが適任でしょ」

「確かにね。でも今っていうタイミングがよくわかんないんだよね…。道明寺だったらもっと早くに無理やり見つけ出して無茶やるくらいかなと思ってたけど」
「それだけ俺達もおじさんになったってことじゃないの?」

「どう見てもおじさんには見えない花沢類の口から出ると、もう違和感しかないわ」
「詳しいことは司の口から直接聞くといいよ。俺たちが話しても意味がない」

類の言葉に、間もなく司と直接会うことになるってことがわかり、急に不安な気持ちになってきた。

「ね、花沢類。アタシ、アイツには会いたくないの」
「ここまで来て?」

「うん。どんな顔して…会えばいいのよ」
「大丈夫。ああ見えても、あ、全然見てないんだっけ?司も大人になってるよ」

「オトナになってる道明寺とか逆に怖いんだけど」
「ハイ、着いたよ」

そういわれて外を見ると、翼のバイト先の喫茶店の前。

つくしはごくりと唾をのみ込んだ。


*********


「お、着いたみたいだぜ」
窓の外を眺めていた西門総二郎がニヤっと笑った。
今日何度目かのびっくり来店のラスボスは自分の母親だったかと翼は苦笑い。

「キミが翼君?オレ花沢類。キミのママの初恋の相手かな?」
「はっ、花沢類!!」
「類、てめぇこの野郎!」
つくしと司が同時に言う。
今まで感じたことのない空気に翼は戸惑った。

「ど…道明寺…」
司は無言でつくしを見つめていた。
あきらたちはそっと翼にウインクすると、コーヒー飲ませてよーという類を無理矢理引きずって静かに店を出て行った。

「牧野…」
感動の再会からの抱擁を見せられるのかと、複雑な思いの翼だったが

「アンタ…何してんのよ」
の母のひと言で我に返る。

「母さん…俺一応バイト中なんだけど…いきなり喧嘩腰は…」
「どうせ店貸切るとかマスター買収とかそんな感じでしょ?心配しないで翼。この後は誰も来ないから」
「さすがだな、牧野」
司がにニヤリと笑う。

「母さん…この人、本当にオレの父親なの?」
「翼…今まで…黙っててごめん」

申し訳なさそうにつぶやくと、今度は険しい顔で道明寺司を睨みつけた。

「で、何よ今更。アンタ何しにココへ来たの?」
愛し合うふたりの20年ぶりの再会とは思えない喧嘩腰の会話に、翼はさっき聞いた話がウソだったのではないかと思った。

「オマエ達ふたりを…迎えにきた」
「「はぁ?!」」
さすがは親子。司は息がぴったりだなとニヤリと笑う。

「俺が翼のことを知ったのは、オマエが消えて2年経ってからのことだった」
自分たちが消えてわずか2年後に翼の存在を知り、司が何もしなかったことが不思議だったが、財閥崩壊の危機や政略結婚のこともあってどうにもならなかったのだろうと思いながらつくしは聞いていた。

「あのとき財閥の解体はしたが、結局政略結婚はしなかった。もともと俺はオマエ以外の女と結婚するつもりはなかったしな」
翼は息を殺して話を聞いていた。

「だからオレは財閥を手元に置いたまま守るんじゃなくて、道明寺から切り離して守ることを選んだ。最終的に俺の手元に残ったのは小さなネット関連の会社だけだ」
確かに最初は倒産寸前の小さな会社だったが、業績を上げてみるみるうちに大きくなったとも聞いている。

「その時にさっさと迎えに行きゃよかったのかもしんねーけど…唯一手元に残った会社も当時は不安定な状態だったしな。赤ん坊抱えて苦労してる状態よりさらに苦労かけちまうかもしれねーって時期だったし。会社が軌道に乗ったら迎えに行くつもりだった」
つくしはすんなり話を受け入れているようだが社会経験のない翼にとっては内容はわかっても違う世界の話のようだった。

「それで?」
「ところがウチで開発したソフトとネット事業が当たっちまって」

「よかったじゃない」
「どうせならもうちょっと我慢して、やってみてぇって欲が出た」
ただのバカ坊ちゃんが、経営者として成長してくれていたことがつくしは嬉しかった。

「オレ、オマエ達迎えにいくために貯金し始めた」
「貯金!?」
自分たちの世界ならごく当たり前のことだが、目の前にいるオトコの口から聞くと、不自然極まりない。

「今の会社、手放すことにしたんだ」
「手放すって…苦労して大きくしてきた会社なのに?」
黙って聞いていた翼が口を開いた。

「ああ。オヤジはあの騒ぎでコロッと逝っちまったし、お袋も引退した。財閥はオレの会社以外は人手に渡って、オレんとこも安泰ってとこまで持ってった」
「それで?貯金したお金で親子3人で遊んで暮らそうってワケ?」

「バカ、話は最後まで聞けよ。オレの貯金は2種類あんだよ。ひとつはオマエらのための…慰謝料っつーかこれまで苦労かけた分。もうひとつは…」
「もうひとつは?」

「翼と一緒に事業を始める資金だ」









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