20years 修正版⑦ 


「花沢類…」
優しくつくしを見つめる目は20年前となにひとつ変わらない。お互いにそれなりに年を取ったというのに、英徳の非常階段と同じ空気がつくしを包み込んだ。

「どうして…?」
「牧野、どうして?はこっちのセリフだよ。どうしてあの時俺を…俺たちを頼ってくれなかったの?」
類の口から出る言葉は決してつくしを責める口調ではないが、それが却ってつくしの気持ちを苦しめた。

「どう…頼ればいいのよ」
沈黙が流れる。窓からつくしを見つめる類と、類の顔をまともに見ることができず、アスファルトばかり眺めるつくし。

「牧野。とにかく、乗って」
「ま…まって、アタシ…行かなきゃいけないところがあるの」

「大丈夫。今から一緒に行こう」
類はドアを開けて、あの頃と全く変わらないひんやりとした手でつくしの手を優しく引く。
余計なことは一切聞かず、20年ぶりだと言うのに近況報告もし合わない。
ただ車に乗せられた時からずっとつながっている手が、何も言わなくてもいいよ、という類の気持ちのように感じられた。

どれだけの時間そうしていただろうか。
車は目的地を目指しているわけではなく、つくしが落ち着くのを待つように、あてもなく走り続けているようだ。

「東京とは違って、何もない田舎でしょ?」
やっとのことで絞りだした言葉。

「そうだね。でもオレこういう風景好きだよ」
ああ、そうだ。花沢類はそういう人だったっけ。
会話はそれ以上続かない。さらに時間が経ちつくしは少しずつ話し始めた。

「花沢類も…知ってるんでしょ?」
「…」

「最初は…逃げたくてここに来たわけじゃなかった」
「……」

「翼がお腹にいるってわかったとき、自分の取り巻く環境とかナシにしてすっごく嬉しくて…」
「うん…」

「道明寺に喜んでもらえるって、早く報告したい気持ちだった」
深呼吸をして言葉を続ける。

「でもね、タイミング悪く道明寺財閥があんなことになってしまって、道明寺にも婚約の話が出たじゃない?」
「うん…」

「ホントはすべて投げ出してアタシのところに来てほしいって何度も思ってた」
「うん」
余計なことは一切言わず、決して聞かない。類の優しさがありがたかった。

「道明寺の向こう側には、何千人何万人っていう人の生活があった。それがね、あの時のアタシに見えちゃったんだよ…」
「そうだね。確かに司の会社はあの時もう限界だった。財閥を維持させるためにあの母親は懲りずに司を政略結婚させようとしてたし」

「そうでしょ?だからアタシは翼のことを誰にも言わずに道明寺から離れたんだ。道明寺のためにも、働いてる人たちのためにもね。みんなに頼ってしまったらさすがに決心鈍るし。とか言って実は自分のためだったのかも」
そういって少し笑った。

「今の…39歳のアタシなら、人生経験積んでズルくなってるし、なんかうまい方法考えたかもだしみんなに頼ったかもしれない。でも18歳のアタシはまっすぐで道明寺とその周囲で起きてることが大きすぎたんだと思う」
一呼吸置くと、決心したように言葉を放った。

「だから、誰にも言わずに、逃げてきた。ココに」



*********



「ハイ…??」

目の前にいるギリシャ彫刻のような美しい男が発した言葉を、瞬時に理解できるはずはなかった。すると口元をヒクヒクさせた西門総二郎が

「おい司…いきなりソレはないだろう…」
後ろで心配そうにしている美女2人も口をポカンと開けている。

「なんでだよ、自分の息子に父親だと名乗って何が悪い」
「いやいやいや、悪いとかじゃなく、物事には順序ってもんが…」

「うるせぇ!!俺はそんなまどろっこしいことはしたくねぇ。」
「ちょ、ちょっと司…アンタのことはとりあえず置いといて…翼君のことよーく考えてみようよ」
「そうですよ道明寺さん、滋さんの言う通りです」
たまらずに美女2人が口を出す。

「あ…あのすみません、質問いいっすか?」
誰が答えるべきか、全員が顔を見合わせていると

「いい、俺が全部答えてやる」
司が言うと、全員の表情がこわばった。

「あの…まず皆さんと母の関係は…」
「牧野は俺の女だ」

「司、まずそこからきちんと説明してやろう。俺らはそれで通じるが、翼君には意味不明だ」
美作あきらが頭を抱えながら言った。
道明寺司は面白くなさそうにするが、じゃ面倒なコトはオマエが説明しろ、と引き下がった。

「俺たちが出会ったのは、牧野が高校2年、俺たちが3年のことだ」
つくしと司が出会って恋に落ち、どのように別れに至ったかを道明寺司以外の4人がかわるがわる説明していく。ときおりオレは別れてねぇぞと口をはさむオトコがいる。

つくしがセレブ学校に通っていたことはつい最近美佐子に聞いて知ったが、セレブ学校にいた唯一の貧乏高校生だということもわかった。

「道明寺財閥って知ってるか?」
「ハイ、経済の講義で名前と概要だけは。オレがまだ小さいころ解体した巨大財閥で…ってえ?ええ?」
翼が動揺し始めると西門総二郎は親指を道明寺司に向けた。

「その総帥の長男が司だよ」
最初に名乗られた時から、道明寺財閥とのつながりを疑ったが、まさか中心人物だったとは。

「で、オマエは俺の息子だ」
美作あきらが口元をヒクつかせながら

「司、まだ早い」
「ちっ」
「ちょっと待ってください。母が貧乏なくせしてセレブ高校に通って皆さんと出会ったことはわかりました。それから母が道明寺さんにベタ惚れだったことも」
「翼君、ソコ違うね。司がつくしにベタ惚れだったんだよ」

「滋、黙ってろ」
「道明寺さんの猛烈アタックを含めて、数々の苦難を乗り越えた二人はやっと想いが通じ合って…ま、翼君ももう大人だから話すけど、そういう関係になってあなたがデキちゃったということなのよ」
ウエーブ美女さん、すごくわかりやすい説明ですけど、できれば親のそんなリアルな話はききたくなかったっす、という翼の思いは桜子には届かない。

一通り話を聞いて、何とか理解できた翼は思い切って道明寺司に問いかける。

「それで、今になって父親と名乗り出た理由を教えてください」









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