絆 @花より男子二次小説 


「本当に来てくれたんだ」
牧野から吐く息が白く見える。
そんなに急ぐ必要もねぇし。
俺は怒ってねぇぞ。
お前に待たされることには慣れてしまってる。
つーか、息を切らせたお前が俺を見つけた嬉しそうに微笑むのを想像しながら待つのも悪くねぇって思えるようになった。
バイト先の店から少し距離を置いて止めた車から小走りで走って木の影に身体を隠すようにして牧野が終わるのを待つ。

「バイトなんてしなくていいだろう。俺が面倒見る」
「道明寺に世話してもらう理由なんてないから」
「お前は俺の婚約者だろう。
それなりの立場ってものが必要なんだよ」
このやり取り何度したっけ?
結局、俺の婚約者としての立ち位置が必要な場合は俺が買ってやったものには文句を言わねぇが、それ以外は絶対受け取らないと、つっぱってバイトをやめる気配はゼロ。
普通の女なら喜んで俺に面倒をみせるって思う。
頑固つーか、媚びねぇっていうか・・・
そこにも惚れてんだからどうしようもねぇか。

終わるのが10時を過ぎるって聞いて黙ってられるはずがない。
明るいから大丈夫とか、電車があるとか、そんな問題じゃなく、俺が落ち着けないだけ。
変な男に付きまとわれるとか、ナンパされるとか、アブねぇだろうが。
無防備なその声はモテないから大丈夫とかいまだに本気で言う。
自分がモテる自覚がねぇだけ。
俺が惚れた女だぞ。
あのバカ!
本気の俺をケラケラと笑うだけで冗談としか思っていない。

「迎えに行くから待ってろ」
あいつの返事も待たずに携帯を切った。

俺が本当に来るかどうか疑ってる発言すんじゃねぇよ。
迎えに来るに決まってるだろう。

「すいぶんと待った?」
すまなそうな表情は視線を下に向けた俺の手のひらを牧野の手のひらが握る。
右手を包みこむように添えた両手。
上に持ちあげた腕に牧野の顔が近づく。
手のひらに感じる暖かい吐息。

「冷たい・・・」
牧野の温もりを感じるには冷たく冷えた肌に浸潤してくるまでまだ少し時間がかかりそうだ。


「俺を凍えさせる気がないのならバイトやめろ」
「やめない」
「速攻で拒否かよ」
「だってさ、今日はもう会えないって思っていた道明寺に会えることもあるから」
手のひらに吹きかける息を吐くのをやめて牧野が顔を上げる。
すげー嬉しそうにこぼれる笑み。
俺の意表をついて時々素直になるやつ。
心の準備ができてねぇから反応に困るだろうがぁ。

「たくっ」
照れ臭そうに笑う瞳。
ほんのりと染まる頬。
くすぐった感情を見せる笑みを浮かべる唇。
その顔を見せられたらなんも言えねぇ。

頭に回した腕でそのまま牧野の頭を胸元に引き寄せる。
「バイトやめろって言えねぇな」
「でしょ?」
何が「でしょ」だっ。
俺を魅了してやまない微笑みこれ以上は見せんなよな。
我慢できなくなる。

「帰るぞ」
歩きだす俺を待ってというように牧野の手が俺の袖首をつかむ。
そこから流れるように動いた指先が俺の指先に絡まった。

ひんやりと冷えていた指先。
ギュッと握りしめるたびに互いの体温が混じりあって同じになる。
どちらからともなく無口になったまま歩く歩道。

スピードを上げてすれ違った車の音にビクつくように牧野が車道側を歩く俺を引き寄せる。

大丈夫だ。
言葉じゃなく手のひらを握り返す俺。
つないだ手に落とす視線。
俺よりも一回り小さな華奢な手が俺の手としっかりとつながったまま。
離さないとか・・・
離したくないとか・・・
もっと深いところでつながって・・・
牧野のことはすべて知ってるはずなのに・・・
牧野を抱いたときのような満足感と高揚を感じてる。

牧野にならどんなことにもすべて単純に身体中の細胞が活性化するみたいだ。

「どうかした?」
「何でもねぇよ」
無邪気な表情で俺を覗き込む牧野に今は自分の顔を見せられそうもねぇ。
これ以上俺を煽んな。

hihi.jpg


~Fin~









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