Take it easy! 第11話 


ドンっ

バシッ



力任せにチーフを突き飛ばし、そのままの勢いで頬を叩いた。



「ってえ…」



かなり力が入っていたらしく、頬はみるみるうちに赤くなり唇も切れている。



「ひどい!いきなりこんな!!アタシ、謝りませんからっ」



ここまで来たらもう引けない。チーフとは徹底的に戦ってやる。

こんなの、許せるわけがない。

親指で切れた唇を拭うとニヤリと笑ってこちらを見る。



「ますます気に入ったね」

「なっ…!」



このオトコ、人の話を全然聞いてない!!



「とりあえずこの退職届は俺が預かっておく。受理されるかどうかはオマエ次第ってとこか」



殴った勢いて床に落ちた退職届を拾い、飲みかけのコーヒーを持って会議室を出ていった。

今日、勝負に出たつもりだったがのに全く逆の方向へ話が進んでしまった…。

油断してた…。






全然スッキリしない状態で職場を後にする。

この後優紀と待ち合わせをしているが、足取りも気も重い。

いっそ後日にしてもらおうかとも思うが、今日を逃すと今度はいつになるかわからない。


店内に入ると優紀が予約してあったようで、奥の個室に案内された。

すでに優紀が中で待っていて、笑顔で迎えてくれる。



「ごめん、遅くなった!」

「大丈夫だよ、あたしもついさっき来たところだし」



席に座ると先ほどの疲れがドッと出たようで、優紀が心配そうにアタシの顔を覗き込む。



「つくし…なんだか疲れてるみたいだけど大丈夫?」

「ああ、うん平気。ごめんね」



優紀にはこれまでチーフの愚痴を散々聞いてもらってきた。

退職届を出したらキスされた、なんてことはとても言えない。



「ほら、とりあえずお茶でも飲んで落ち着いて」



運ばれてきたお茶を飲むと、だいぶ落ち着いてきた。



「でも珍しいね。優紀がこんな落ち着いたお店選ぶなんて」

「うん、つくしも言いたいことたくさんあるんじゃないかと思って。個室のあるお店にしたの」



優紀のこういう気遣いはさすがというしかない。

いつも待ち合わせをするような賑やかなお店では落ち着かないのは確かだ。

テーブル席だが個室の雰囲気は和風。

社会人1年目のアタシには似合わないお店だけど、落ち着いた雰囲気は正直ありがたい。



「道明寺さんのこと…ずっとつくしに黙ってたお詫びに今日は御馳走するから何でも頼んで!」

「え、いいよ。アタシだって学生の頃とは違ってそれなりに稼いでるし」

「でも退職しようとしてるでしょ?」

「あはは、確かにね」

「ちょっとメニュー見て待ってて!あたしお手洗い済ませてくるね!」

「うん、わかった」



優紀が個室から出ていくと、メニューを見る。

うわっ、高いな…。これから無職になるっていうのに大丈夫かしら。

そんなことを思いながらあれこれメニューを眺めていると、個室の外が急に騒がしくなった。

なんだろ。ま、いっか。

すると個室のドアがカチャリと開く。

外で何かあったの?と口を開きかけたアタシは、そこに立つ人物を見て愕然とした。



「ど…どうして…」









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