Whenever You Call  リハビリ小説第一弾 

「あちーな…」

10月も半ばだというのに、真夏を思わせる暑さに司はウンザリしていた。
仕事を終わらせ帰路につく車の中で、長い足を組みながら天井を見上げそのまま目をゆっくりと閉じる。

そして、この1ヶ月の間に自分の周りで起きたことを考えた。

ー まさか総二郎とあきらが同じ日に入籍するなんて、な。 ー

類は2年ほど前に周囲の反対をよそに結婚、春先に子供が産まれた。3人ともそれぞれ家庭を持ち始め新たな生活を始めているが自分の生活は何一つ変わらない。
ひとりの女性の顔を思い浮かべようとしても、輪郭ばかりで肝心な顔が浮かんでこない。

ー 牧野… ー

最後にあったのはいつのことだろう?
明確な『別れ』があったわけではないが、疎遠になってしまっていた。会いたいのかと言われれば会いたいに決まっているが、今更どの面下げて、というのが司の正直な思いでもあった。

疎遠になったのは明らかに、数年前の年末に他の女性と半同棲しているという記事が週刊誌にスクープされたことがきっかけだった。
世話になった人の紹介で知り合い、久しぶりに顔を合わせたのはその知り合いの葬儀の席だった。それからその女性と何度か会う機会があったが特に男女の関係になったということもなく、半同棲など全くのガセネタだった。

そもそも司とつくしの関係は、司の知名度もあって新聞や週刊誌に取り上げられることも多く、芸能人のゴシップとまではいかなくても、それなりに認知されている状態だった。
実在するのかもわからない『関係者』だという謎の情報提供者が複数現れ、司とつくしの関係が破局しただとか、司が女性と浮気したなどと面白おかしく書かれてしまい、司とつくしの距離はますます離れてしまっていたのであった。

最初のうちは連絡を取りあったり会うことももちろんあったわけだが、週刊誌に追い回されることを恐れて会う頻度はどんどん減っていく。そうこうするうちに電話やメールで連絡を取り合うことはあっても、会うことはほとんどなくなってしまったのである。

司自身、つくしと別れたという認識はない。
しかしこれだけ長く離れてしまうと、つくしの気持ちが離れてしまっていることは容易に想像できた。
それを知るのが怖くて、つくしとの距離を縮められないのだ。

さんざん傷つけて、離れてしまった心と体。

何度も何度も会いに行こうと思ってはいたが、その都度拒絶されることを恐れてさらに足が遠のいた。そんな事が何度も続くうちに、会いたいという気持ちごと封印してしまっている自分がいることに気づくのだった。
会うきっかけになることは少なくはなかったはずだ。
忙しいとはいえ、自由になる時間が皆無ということもないし、20分もあれば会える距離にいる。
今はその20分が、地球の裏側に向かう程の時間に感じられるほどになっていた。

ー いつまで俺はこんなことを続けているのだろう? ー

総二郎とあきら、そして少し前の類の結婚はつかさの心を大きく揺さぶった。
そして思うのであった。

ー このモヤモヤしたものは、俺がこの状態である限り一生続く ー

こんな状況がお互いにとっていいものであるわけがないとわかっているのだ。

「西田」
「はい、司様」
「…向かってくれないか?」
「かしこまりました」

はっきりと言ったわけではないのに、運転手に行き先を指示する西田がおかしくて

「おい、どこに向かうか言ってねーぞ」

つい笑ってしまう。

「いえ、わかっておりますので」

もうそれ以上何も言うことはなかった。
どこへ着いても、そこが司の目的地なのだろう…と思いつつ、再び目を閉じた。









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2 Comments

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2021/10/12 (Tue) 14:27 | REPLY |   

やこ  

Mikko様

コメントありがとうございます。
長らくお無沙汰しまして大変申し訳なく思っております。

気長に書いていければいいなと思いつつも、スマホに慣れてしまったのでPCのキーボード操作に悪戦苦闘しました。

今回は「自分にまだ文章を書くことができるのか?」と「果たして需要があるのか?」というふたつのことを意識しつつ書いてみました。
わかる方はわかると思うのですが、お話のモデル(というかパクリ)は真央潤なんですが、ガンガン書きまくっていた時のように、スラスラというわけにはいきませんね…。

完全復帰というわけではなく、今回のように思い立ったときに書いてみよう!というスタンスでヌルっと書いていければいいかなくらいに思っています。

頑張らず、適度に!

今後も現れては消える、と繰り返すと思いますが、末永くよろしくお願いいたします。

2021/10/12 (Tue) 14:41 | REPLY |   

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