Answer ~Epilogue〜 

真っ白な十字の墓石に描かれた「Kaede Domyoji」の文字。
その隣には最愛の夫の墓が寄り添うようにして建てられている。

司の父親が、楓を追うようにして旅立ったのは去年の春のことだった。

ふたつの墓を見つめながら司はそっと呟いた。

「本当に、わかりにくい…ややこしい親だったな」
「そうだね。でもこうして静かにおふたりが眠る場所に立ってみると、気持ちがわかるような気がするよ」

つくしはそっとお腹に手を当てた。

楓がこの世を去り司が社長職を引き継ぐと、株価は安定し今ではV字回復したとまで評されている。実際に再起不可能とまで囁かれ、落ち込んだ株価と信頼を回復させるには血の滲むような努力が必要だった。
ところが司は無駄を省くことから少しずつ始めてていき、誰一人リストラすることなくここまで事業を回復させたのであった。

「あんたも、頑張ったよね」

かつて楓は司の力では道明寺と言う組織を率いて行くことは難しいだろうと判断し、つくしと別れて雪乃という経営のプロを呼び寄せた。
楓も亡くなり雪乃もあんな形で会社を去ったことで道明寺は危機に陥ったが、司は逆境に立ち向かい、ついに業績回復を成し遂げた。

「俺の力だけじゃねーよ」

楓の遺した遺産には、道明寺の繁栄の為に使う資金も含まれていて、その力に助けられたことも大きい。
何より隣で寄り添う女性の存在も大きかった。

「なあ」
「ん?」
「お袋は俺の原動力がお前だってこと最初からわかってたって言ってたよな?ならなんで別れさせた?」
「ああ…」

全てが解決しているにも関わらず、ひとつだけ腑に落ちないことだった。

「直接聞いたわけじゃないけど…」

つくしはそう注釈をつけた上でぽつりと言った。

「たぶん、あたしの為だったんじゃないかな。ほら、当時あたしは日本とアメリカの弁護士資格を目指してたでしょ?自分で言うのもなんだけど、短期間でモノにするには相当な努力が必要なのよ。あたしがあんたの傍で力になるのはわかっていたけど、あたしにとって集中の妨げになると思ってたんじゃないかと今は思ってる」
「なるほどな」
「あたしは恋愛と勉強を両立できるほど器用な人間じゃない。集中して最短で弁護士になるために敢えて別れさせたんじゃないかなって…」
「俺じゃなく、お前の為にってことか…なるほどな、どうりで理由に思い当たらないはずだ」

本当のところはつくしにもわからなかった。
だけど、そう考えるとすべてが丸く収まるのだ。

「お前には高校時代から、相当嫌な思いをさせてきたからな。契約を初めから守るつもりがなかったっていうなら、お前に対する謝罪の意味でそうさせたのかもしれないな」
「そうは思うけど今では感謝しかないし、結果的には大成功なんだから、もうそれでいいじゃない?」
「そうだな…」

司は両手いっぱいに抱えた花束を、それぞれの墓の前に供えて手を合わせた。
それを見ていたつくしも、同じように手を合わせる。

「冷えてきたな、そろそろ戻るか…」
「そうだね」

司はつくしの手を取ると、両親の眠る場所に背を向けた。
一度振り返ると

「また来るよ、お父さん、お母さん。今度は新しい家族も紹介する」

視線を前に戻し、つくしの肩を抱いてその場を去った。

家族を幸せに想う気持ちのカタチは様々だ。
楓の愛情表現が間違っていたとは思わない。
ずいぶんと遠回りをしてしまったとつくしは思うが、結局自分が元いる場所へと収まった。

あの時引き裂かれなければ、などと考えるのはやめ前だけを向いていくことを考える。

それがふたりの出した答えだった。

「お腹空いたぁ、今夜は何食べようかなぁ」
「お前医者に食いすぎだって言われてんだろ?自重しろよ」
「食べちゃいけないとは言われてないし」
「屁理屈ばっかいいやがって…」

今はお互いの笑顔さえ見ていられればそれでいい。
司はつくしの小さな手を握しめると、前だけを見つめ、ゆっくりと歩きだす。


~fin~









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3 Comments

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2018/12/31 (Mon) 06:34 | REPLY |   

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2018/12/31 (Mon) 07:38 | REPLY |   

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2018/12/31 (Mon) 09:53 | REPLY |   

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