Answer 73 

総二郎に促され、半ば引き摺られるように車に乗せられたつくしは窓の外を見ていた。
楓の財産が欲しいわけじゃない。むしろ断ってしまったほうがどれだけ楽かと思っていた。

しかし楓からの手紙を読み、自分が利用されたことを腹立たしく思うよりも、楓の家族への愛情が胸に突き刺さった。
それがいつまでも抜けないトゲのようで、つくしはスッキリとしない気分だ。

「なあ牧野」
「何?」

ハンドルを握る総二郎はいつになく真面目な表情だ。

「お前はどうなんだ?司のこと…好きなんだろ?」
「好きか嫌いか…そういう次元ならたぶん好きだと思う」
「なら受け入れてもいいんじゃねーかって俺は思う」
「そんな簡単に…なんか嫌なのよ、だって受け入れたら道明寺をお金で買ったみたいだし」
「ふっ、お前らしい言い分だな」
「なによそれ…」

総二郎はちょっと神妙な顔で会話を続けた。

「いいか、お前が司の母ちゃんを憎もうがどうしようがあの人はもういない。かなり回りくどいやり方ではあったが、あの女専務のことを道連れにして死んでいったよな?一生憎んでいくのはお前の勝手だけど、そこに司は関係ないことはわかるな?」
「うん…」
「ここから先はお前が決めることだ。俺はこうして司のところにお前を連れて行くことしかできねー。いいな?くだらないことを考えねーで、たまには司を見習ってイエスかノーで考えてみろ。わかったな?」
「努力…します…」

そうこうするうちに車は見覚えのない街の路肩に停まった。つくしがキョロキョロと周囲を見回していると総二郎がシートベルトを外した。

「お前は降りなくていい。ちょっとここでそのまま待ってろ」
「え?あ、うん」

目的地とは到底思えないような一般道の路肩でいきなり車を降りた総二郎。つくしはいわれるがままに車で総二郎が戻るのを待っていた。

5分くらいその状態が続いた頃。

人影が見えて、運転席のドアが静かに開いた。

「おかえ…り…!」
「ベルトはしてんな?それじゃ行くぞ」
「え?ええっ?」

シートベルトを素早く付けると、司はギアをドライブに入れた。


******


「粋なことするねニッシー」
「まーな。これでも女の喜びそうなことは熟知してるつもりだけど」
「ふーん…」

滋は走り去っていく赤いスポーツカーを目で追っていた。
助手席に座る男をチラリとみると、何故か満足気だ。

「ニッシー、なんかいい顔してるね」
「いい顔?」
「うん、なんかスッキリした顔してる」

ルームミラーを無理矢理自分のほうへ向けると、顎に手を当てて自分を眺めてみる。

「いい男にはかわりねーけど…スッキリっちゃどういうことだ?」
「うーん、しいて言えば…便秘が解消された時みたいな」
「汚ねー令嬢だな…」
「ほかに表現のしようがないんだもん」

つくしにとって今夜は勝負の夜だろう。

―あいつは一度司と向き合うべきなんだ。

総二郎はそんな風に思っていた。高校生の子供じゃない、きちんと自分の気持ちに整理をつけて、始めるのか終わらせるのか、ハッキリさせて自分の前に現われてほしい。

「大丈夫、いつだってあのふたりは乗り越えてきた。今回はちょっと大きな山だったけど…お互いにちょっと素直になるだけで簡単に乗り越えちゃうよ」
「滋」
「ん?なに?」
「お前、類と仕事しただけあって、短期間で類に似てきたな」
「はぁっ?」

根拠のない自信を口にすると妙にこちらが安心できるという技を持っているのは類だった。
今夜はなぜかそんな役割を隣で無邪気に笑う滋が担う。

―そうだな、誰かが欠けたって誰かがその穴を埋められる。俺たちはそういう強い絆で結ばれてんだ!

自分は司と類とあきらの役目を果たそうとした。
欠けた誰かを補えていたのかはわからないが、隣に座る女のおかげで、自分がしてきたことが全くの無駄じゃなかったことに気づかされた。

「滋、お礼にどっか連れてってやる!どこにする?」
「え、ニッシーとデート?うーん、ホテルとかじゃなければどこでもいいけど…」
「安心しろ、絶対にそういうことにはなんねーから」
「なんか何気にヒドイし…」

総二郎の気分は晴れやかだった。









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2018/12/30 (Sun) 08:51 | REPLY |   

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2018/12/30 (Sun) 09:52 | REPLY |   

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