Answer 72 

「司…」
「お前たちには今回、本当に世話になった。お前等が俺のいない間に会社を支えてくれなけりゃ、今頃どうなってたかわからねぇ…。それで俺も考えた。例え俺が拉致されることがなかったとして、この危機を乗り越えることができたんだろうか、とな」

滋と類はお互いを見て、何事かという表情で再び司を見つめた。

「お袋亡き今、俺が道明寺を支えるのは無理だということを思い知らされた。だが、このまま潰れていくのを黙って見てるわけにはいかねぇんだ。可能なだけで構わない、子会社をいくつか面倒みてほしい」

司が頭を下げる姿を、ふたりは複雑な思いで見つめていた。
そして口を開き、頭を下げる司に向かって言ったのは滋だった。

「それはできないよ、司」
「滋…この通りだ!頼む…」
「いくら頭を下げられても無理なものは無理。今回引き受けた会社だって後できちんと買い戻してもらうつもりでいるし」
「俺にはどうすることもできねぇんだよ…頼む…滋…」

プライドを捨ててまで頭を下げる司の姿は痛々しかった。
しかし滋には引き受けるつもりはなかった。

「やめなよ、司」

黙って見ていた類が珍しく厳しい口調で呟いた。

「お前さ…お袋さんの遺言きちんと読んだんだよね?どうして隠された気持ちが読み取れないのかな…」
「隠された…だと…?」
「まああのお袋さんも相当不器用で難解な人だったけどさ、たぶんあの本物の遺言書に隠された本当の意図がわからないのは司と牧野だけなんじゃないの?」
「あ、それあたしも思った!」
「なんだよ、それ」
「もう、世話が焼けるなぁ…。誰も司ひとりに道明寺を支えていけなんて言ってないんだよ。いい?司が親父さんが倒れた後に3年間NYで頑張ってきたのは何のため?」
「そりゃあの時は…牧野と…」
「そうでしょ?あの時司は荒れてバカやってた時とは比べ物にならないくらい頑張ってそれなりに結果を残してきた。で、牧野と別れたあと、どうなった?」
「…」
「なんとなくわかってきたみたいだね。そう、牧野と別れて突然業績が落ち込んだの。まあなんて言ったっけ、あの元専務…あの女がひっかきまわしたってこともあるけど…。お袋さんはさ、お前が仕事を頑張るために何が原動力になってるのかをとっくに見抜いてたんだよ。でも引き裂いてしまったのは自分で司は誤解したまま牧野を憎んでる。いい?だからこそ遺言で牧野と婚約することを条件に盛り込んで…牧野に支えてもらいながら道明寺を立て直せ、ってことなんじゃないの?」
「あたしもそう思うよ司。楓社長はつくしに財産の一部も残したけど、お金が重要なんじゃない、きっとつくしと生きていくことこそが、道明寺の繁栄につながるって思ったんだね」
「そんなことは…」
「じゃあさ、司はどうなの?全部ではないけど、牧野に対する誤解はかなり解けたよね?それなのにまだ憎み続けるつもり?俺は違うと思うな。もうすでにお前は牧野を許してるし、それ以上の感情も持ってる。あとは司自身がそれを認めるだけじゃない?」
「あとはつくしが認めるだけね、類君」
「ああ、そこがまた厄介だね。じゃあ、どうする?話し合うしかないよね?ふたりで」
「話すって…」
「お前が今考えることはさ、封じ込めてる自分の気持ちを開放することじゃないかな。それを素直に牧野に伝えればそれでいい。そうだよね?大河原」
「うん!その通り」
「それじゃそろそろ飛行機の時間だから俺は行くね。素直になること、これがポイントだよ、司」

それだけ言うと類は席を立ち、専用ゲートを通って消えていった。
滋も静かに席を立ち

「さ、行こう司。つくしが待ってるよ」

そう言って司を促した。
滋の後に続いて歩く司は考える。

―俺が素直になるだと?

確かに弁護士として自分の前に現われた時に思っていたものと今ではつくしに対する感情に違いがあった。
拉致されているときはつくしに傷がつかないようにと気遣ったし、無事に戻って来ることができたことも嬉しかった。
そして何より、楓の遺言に『婚約者』という文言が記されていたのを知り、心がザワつくのを司自身も感じていた。
類の言う通り、父親が倒れてNYに来たときも、離れていたつくしと会うことだけを心の支えに、理不尽な取引やくだらない会食にも素直に応じてきた。

「俺はあいつのことを…」
「なに?司?」

司は呟きに応じた滋の肩を掴んで

「おい滋!牧野はどこにいる?」

豹変した司を見て、何かを感じ取った滋はニヤリと笑って

「任せて!しげるちゃんがつくしのところに連れてってあげる!」









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2018/12/29 (Sat) 18:30 | REPLY |   

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2018/12/29 (Sat) 19:10 | REPLY |   

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