Answer 71 

「滋。牧野はどうしてる?」

成田空港のラウンジでフランスへと戻る類を見送りに来た司は、同じように戦友の見送りに来ていた滋に尋ねた。

「マンションに引きこもってる。何度か行ってみたけど、会えずに帰ってきた。あたしじゃダメみたいだし…司あとは何とかしてね」

会社の存続に対する功労者のひとりは辛そうな表情を見せた。司はその問いかけに応じることができるのか、そんなことばかり考えていた。

「ねえ司…」

いつになく煮え切らない司に、類が苛立つようにして口を挟んだ。

「何をそんなに悩んでるの?らしくないんだよ…。お前のお袋さんがすべてとはいかないまでも、いろいろ骨を折って残してくれたものを最大限生かして、自分にしかできないことをすべきなんじゃないの?」
「……」
「司がすべての重荷を背負うことを牧野が望んでると思う?」
「あたしもそう思う、最近の司は本当に司らしくない」

類や滋に言われた司は、この二人にも相当な負担を強いたことを心苦しく思っていた。でもそれをどう償うべきかわからなかったし、これから道明寺を立て直していく自信もなかった。
そして密かに決心していたことを静かに語りだした。

「なあ、滋」
「なぁに?」
「俺は…今まで自分の力を過信していた。すべて親父やお袋が積み重ねて大きくして来たものをただ受け継いだだけで自分は何もできないってことを思い知らされた。実際主力だったお袋が死んだとたんに道明寺は危機に陥っただろ?」
「それはちょと違う気がするけど…」
「いいんだ。俺は勘違いをして威張り腐ってただけで、何もできない単なる役立たずの二世だってことに気が付いた。それをお前らに助けられたことで…俺は決めたことがある」
「やめてよ、司の決心にロクなことないっぽいし」
「大河原、とりあえず聞こう…」

類が滋を嗜めると、司は大きく息を吸って二人に言った。

「道明寺ホールディングスを解体して…子会社のすべてを大河原と花沢物産の傘下にさせてもらいたいと思ってる…」


******


次の目的地であるアルゼンチン飛び立ったあきらを見送った総二郎が西門邸に戻ると、中へ入れという使用人と揉めているつくしの姿が目に飛び込んできた。
マンションに引きこもっていると聞いて心配していた総二郎だったが、比較的元気そうに使用人と格闘するつくしを見て、安心すると同時に慌てて駆け寄った。

「牧野!」
「西門さん!」
「おい、何人んちの玄関先で揉めてんだよ、みっともないからとにかく中に入れよ」
「ごめん…西門さんがいないのに、中に入れてもらうのが気が引けて…」
「そんなのはいいから。とにかく入れよ。上野さん、離れの広い茶室開いてる?」
「はい、すぐにご用意できます」
「じゃ、直接行くから」
「かしこまりました」

そのままつくしを離れにある茶室に押し込んだ総二郎は、作法はどうでもいいとつくしに言ってとにかく落ち着くように座らせた。
何かがあった時にお茶を飲ませてくれと言っていたつくしがここへ来たということは、話を聞いてほしいと思っているか、迷っていることがあるかのどちらかだろうと総二郎は見当をつけている。
総二郎自身作法を気にすることなくお茶を点てると、つくしに差し出し「飲め」と勧めた。

「ありがとう…」
「ゆっくり飲めよ」
「うん…」

コクコクと喉に抹茶を通らせるつくしが一息ついたところで総二郎は投げかけた。

「で、外で俺を待つくらいだ。何かあったんだろ?」

つくしの身に何があったかなどすでに総二郎の耳にも入っている。
常に傍でつくしの奮闘を見守り続けた総二郎でさえ、この仕打ちは酷だと感じていた。それでも実際に起きてしまったことを乗り越えて行かねばならないのはつくし自身であり、総二郎には助言し、見守ることしかできないのである。

「西門さんも知ってると思うけど…あたし、どうしていいのかわかんないの。楓社長のこと…騙されてここまで来たことを許しちゃいけないって思うのに…どうしても憎めないし…かといってあの遺言を受け入れることもできない…」
「…」
「財産分与の件は、断るつもり。赤の他人であるあたしに受け取る資格はないし、受け取ったら社長のことを憎み続けることになる」

理由を付けているが、つくしが一番負担に思っているのはそこではないはずだ。

「本当の理由は司との結婚のことだろ?」
「……うん…」

ややこしく考えるのはもはやつくしの特技と言ってもいいだろう。
ただ、今回の件に関しては、すでに司との関係は終わったことであり、司はつくしのことを憎み続けると言っている。いくら楓の望みであるとは言え、受け入れても断ってもただでは済まないことは誰でもわかっていた。

「ひとりで悩んでても仕方ないだろ?これは当事者同士が話し合って解決しなけりゃいけないことぐらいお前にだってわかってるはずだ。お前と司がなんの問題もなく愛し合ってたのは2年以上も前のことだ。それを今更元の状態に戻せるわけがない。いいか、牧野。大切なのはこれからのことだ。F4の道明寺司との恋愛は一度終わったんだ。なら今の司をどう思って、どうしたいのかを司にぶつけてみろよ。司だってあんなことがあった直後でお前を憎んでた時と今では事情が違う。誤解が解けた分、お前に対する気持ちにも変化があったはずだ。お前がお袋さんの遺産が欲しいと思ってるなんて誰も思っちゃいねーよ。いいか?そのお茶飲んだら司のところに行って自分の気持ちをブチまけて来い!それで吹っ切れ!」









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

1 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/12/29 (Sat) 12:45 | REPLY |   

Leave a comment