Answer 67 

つくしが部屋に到着すると、すでに司と椿がソファに腰かけ、その周囲にはそれぞれの秘書が固めており「その時」を待っていた。

「牧野弁護士、この度はご足労いただきありがとうございました。遺言書の公開にあたり諸注意などはございますでしょうか?」

西田がそう言ってつくしを席に座らせた。
つくしは緊張のあまり、言葉に詰まったが

「ご親族以外の方は、ご退席いただきたいのですが」

それだけをなんとか言うことができた。

「別にいいじゃねぇか、俺たちは別にかまわねぇよな?姉ちゃん」
「ええ、司が構わないというなら私に異論はありません」
「ちょうど主役も来たみたいだぜ?始めてくれよ」

司が示す方向には、行方をくらましていた雪乃の姿があった。

「生前、社長から…口頭ではありましたが遺言書の開示の際、同席してほしい方のお名前を指定されておりました。久我専務のお名前もありましたので、お探ししてお呼びしました。あと1名お呼びしているのですが、先ほど少し遅れるので始めていてほしいとの連絡が入りましたので、牧野様公開をお願いします。」
「わかりました…」

つくしは絶望的な気分だった。
自分の手で司を地獄に突き落とさなければならない。楓の遺言書の作成を請け負ったことを後悔し始めていた。
しかしすでに公開の時を迎え、こうして関係者が集まってしまった。
つくしは恐る恐る公開を始める旨を立ち合っている人に宣言し、封筒を開封した。

「では、読み上げます…」

部屋に流れていた空気が、全て止まる。
それまでソファがきしむ音、咳払いの音、様々な音が部屋の中にあった。なのに今は物音ひとつせず、呼吸する音すら聞こえない。
そんな緊張感の中、つくしは遺言書を読み始めた。

「遺言書…遺言者・道明寺楓はこの遺言書により次の通り遺言する…1・長男 道明寺司に次の財産を相続させる 1・土地…… 2・建物…… 3・有価証券…… 4・普通預金…… 尚、以上の財産は道明寺楓の所有する全財産の1/2とする」

なんとかここまでは順調に来たとつくしは安堵した。
次に椿とその子供達に遺す財産についての開示をし、ついに司を地獄に突き落とす瞬間を迎えようとしていた。
つくしは咳払いをして、意味のない時間稼ぎをしようと思うのだが空しいだけだった。

「次に…」

読み上げようとしたときだった。
部屋のチャイムが鳴り、西田がドアへと向かって行った。雪乃は鼻で笑うような仕草をし、司は心なしか安堵の表情を浮かべる。椿はハラハラと落ち着きなく周囲を見回していた。

「大変遅くなり申し訳ございません」

その場にいた全員が、部屋に入ってきた男性をジッと見つめ何事かと不思議な表情を浮かべている。
ひとりの男性を除いては…。

「と、父さん…」

そう男性を呼んだのは、司の第一秘書の山本だった。

「どうして父さんが…」
「申し遅れました。私行政書士をしております、山本幸三と申します」

男性を見て一番驚いたのはつくしだった。
なぜなら先ほど、化粧室に案内し名刺を受け取った男性こそ山本幸三と名乗る目の前の男性だったのだから。
よく見ることもなくポケットにしまい込んだ名刺を取り出すと

『行政書士 山本幸三』と書かれていた。

そして山本幸三はつくしに近づき、今まで読み上げていた遺言書をサッとつくしの手から抜き取ると、内容をフムフムと黙読して再びつくしに手渡した。

「え…あの…」

その場にいた全員が呆気に取られて幸三を注視していたが、まるで雑誌でも横取りするかのように遺言書を盗み見たのを見てさすがのつくしも苦言を呈した。

「これは大変重要な書類で…まだ関係者の方々にすべて開示したわけではないんです。行政書士の方ならお分かりのはずです…」
「もちろん、遺言書のことでしたらお若いあなたよりも私のほうが場数も踏んでますし専門知識も豊富です」
「父さん、失礼だよ…」

山本が制するのも気にせず幸三は言葉を続けた。

「この遺言書の日付を見てください。〇〇年〇〇月〇〇日となっていますでしょう?」
「それが何か…」
「実はね、その日付よりも後に作られて、楓社長の直筆サインと実印が押された遺言書を私が持っているのです」









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2018/12/28 (Fri) 09:26 | REPLY |   

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