Answer 64 

「違う、それは違うよ道明寺…」
「何が違うんだよ…」

つくしは一瞬黙り込んだが、大きく息を吸うと意を決して話し始めた。

「あんたのお母さんにスカウトされた話はしたよね?」
「ああ、大学に尋ねてきたって話だろ?」
「うん。本当は、こんなこと言っちゃいけないんだけど…あんたがあまりにも社長を誤解してるから…きちんと話しておこうと思う」

司は黙ってつくしを見つめる。
つくしも司を見つめ返して言葉を続けた。

「あんたのお母さん、楓社長はあたしのことを認めてくれてたの。司法予備試験の結果とか大学での成績なんかを予め調べてたみたいで。まだあんたとあたしが付き合ってた時点で、社長は確かにあんたのことを少し頼りないって思ってたんだね…。だからあたしが経営を学び直せば、あんたとあたしの将来…つまり結婚を認めるって言われたの」
「なんだと…?」
「社長の申し出はすごく嬉しかった。だってあんなスゴイ人に実力を認めてもらえてたんだから。でもあたしは法律の夢を諦めることができなかったの」
「当たり前だ、なりたがってた夢を勝手に捨てさせるなんておかしいだろ」
「うん。だからあたしも最初はもちろん断ったよ。あの時は法律家としてだってあんたのことを支えて行けると思ってたし、なにより誰かの助けがなくたってあんたは立派な経営者になれると思ってたからさ」
「ところがお袋はそうは思ってなかった、ってことか」
「それは今となってはわからない。でもあの時点で大きくなり過ぎた道明寺をあんたひとりで支えて行くのは厳しいと思ったんだと思う。だってあの時はまだ社長も健在でバリバリ仕事してたでしょ?いつか自分がいなくなったときに、あんたひとりに重荷を背負わせるのは不憫だと思ったんだろうね。それには『家族』になって一緒に道明寺を支えてくれる存在が必要だったんだよ」
「それがあのザマか?」
「結果的に、雪乃さんは復讐の為に道明寺に入り込んでたわけだけど…あんたも言ってたように彼女はすごく仕事のできる人だった。だから結婚相手に選んだんだと思う」
「それのどこがお袋の愛情だっていうんだよ」

司は少し苛立ったようなそぶりを見せる。
肝心なことはこれから話すのに、とつくしは思いながらも丁寧に説明を続けて行く。

「でもね、あんたが社長の選んだ人、雪乃さんを結婚相手として認めたり、愛したりできないってこともちゃんとわかってたの。だから…あたしを法律家として傍に置く…つまりあんたの愛人にならないかと提案してきたんだ」
「なんだと…?」
「待って、最後まで怒らないできちんと聞いて。最初はあたしもすごく腹が立った。あの時はあたしなりにあんたとの将来もきちんと考えてたし、法律家になってあんたの隣に立って恥ずかしくない女性になりたいって。でも楓社長の中ではあんたの隣にいるべき女性は法律家じゃなくて経営に携わる人間だった。だから法律家の夢を諦めないあたしじゃダメだったんだよ」
「…」
「でもあたしたちのことはきちんと認めて…許してくれてたの。だから夫婦という関係じゃなくても傍にいられるように、法務部門であんたを法的な立場から守ってほしいって。夫婦にはさせられないけど…あんたを愛してやってほしいって…」
「お袋もお前も…勝手だな」
「そうだね。勝手だった。あんたに相談してふたりで結論を出せばよかったんだろうけど…あのときすでに社長はもう病魔に侵されて、余命2年を宣告されてたの。あたしは誰かの夫になったあんたを愛するなんてできない。でもあの時は本当のことをとても言える状況じゃなかったし、命の期限を切られた社長の願いを断ることもできなかった。だから…あの時黙ってあんたの前から逃げたんだよ」

真実を知った司の表情は険しいものだった。
拳を握りしめ、当時の怒りが再びこみ上げていたのかもしれない。

「日本の司法試験に合格して司法修習が終わってから、あたしNYにいたんだ。楓社長のお世話になって、アメリカの司法試験の勉強をさせてもらってたの」
「あの時…いたのかNYに」
「うん。NYの道明寺邸から結構近い場所でね。社長に用意してもらったマンションで暮らしてたの。あんたが活躍してる姿も知ってたし、本当にいい男になってるな、って思いながら暮らしてた」
「そういうことだったのか…」
「日本に戻って来たとき、楓社長はもうかなり具合が悪くて…でもね、あたしのことすごく褒めてくれたんだ。立派になって戻って来たって。信じられないでしょ?本当に嬉しかったんだから」
「なるほどな。納得はしてねぇが事情はわかった。で?これまでの話とお袋が俺を愛してたっていう話がどうつながるんだよ」
「えっと…そうだね。今説明した通り、あんたひとりで立ち向かうことへの手助け、これは立派な親の愛情だと思う。表現の仕方がちょっと特殊だったけど…」
「かなりな…」
「あのさ、あんたが楓社長の病気を知って、病院に初めて来た日のこと、覚えてる?」
「初めていった日?それがどうかしたのか?」
「長い間自分に秘密にされていたことに怒ったあんたは、あの時椿お姉さんと西田さんに詰め寄ったの。覚えてない?」
「あの時か…」
「そう、あの時控室にあんた達が行くときにあたし、社長のことをお姉さんに頼まれて病室に残ったの。その時に、社長からすごく素敵な昔話をされたんだよ」









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2018/12/27 (Thu) 06:59 | REPLY |   

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