Answer 59 

―あいつは無事に外に出ることが出来ただろうか?

無意識に抱きしめたつくしの温もりを思い出し、司は掌をジッと眺めていた。
憎んでるはずなのに、自分はどうなっても構わないから彼女だけは助かってほしいと願ってたのはなぜだろうか。

近くに転がっている男がうめき声をあげて意識をと戻しつつることを知ると、司は再び鳩尾に拳を突き立て完全にノックアウトさせた。

すると外が騒がしくなり、ガチャガチャと外鍵を開けるのがわかり司は身構えた。
今このタイミングでこのドアが開くということは、つくしが脱出に成功したか失敗したかのどちらかである。
ゴクリと唾を飲み込みその瞬間を待つ。

「おいいたぞ!ご無事だ!」
「よかった!急いでこの場から!」

目の前に立つ女性を見た瞬間、司はつくしが脱出に成功したのだとホッと胸を撫でおろした。

「副社長、ご無事で…」
「久我か…。すまなかった。会社は、会社はどうなった?」
「ご心配には及びません、全て丸く収まりました…」
「全部だと?」
「はい。もう大丈夫です」

正確にこの場所にいた日数はよくわからない。
それでも数日足らずの出来事であるのは確かだしその間に会社を立て直し元の状態に戻したなどとは考えにくかった。
雪乃が引き連れてきた数人の男に抱え上げられ立ち上がった。

「いったいどうなってんだ?」
「詳しいことは後ほど説明します。先ずはお体を休めるのが先です」

司はなんとなくスッキリしない状態だったが、まずはこの部屋を出ることができたことに安堵する。
よく見ると周囲には似たようなドアがいくつもあり、その1室に監禁されていたことを今更ながらに知る。

何気なく見たひとつのドアを見て、司の足が止まった。

「おい、ちょっと待て」
「何か?」
「このドア…」
「なんでしょう…?」

司が指差したドアの隙間には破けた布の切れ端のような黒いものが挟まっていた。

―まさか…

「さあ、行きましょう副社長。皆様心配してお待ちしてますよ?」

雪乃はそう言って微笑んではいたがその目は笑っていない。
そして一緒にいた数人の男がいつの間にか司を取り囲んでいた。

「牧野…牧野はどこにいる」
「牧野さんとは…法務部にいた弁護士の牧野さんのことでしょうか?」
「ふざけるな、牧野はどこだ!」
「さあ…?」

司はこの瞬間、すべてを悟った。
黒幕はこの女、久我雪乃だということを。

取り囲む男を振り切り、黒い布の切れ端が挟まったドアを力任せに開けると、そこには猿轡を噛まされ両手を後ろに縛られた状態で、涙目になっているつくしがいた。

「まったく、マヌケな男たちね。もう少しだったっていうのに…演技も下手だし、人選をミスったみたいね…」
「ふざけんな!どういうつもりだ!」
「そうね、もう隠しても仕方ないし…でもここじゃなんだからもっと広くてきれいな場所に移動しましょう。あなたにも私にも、こんな場所は似会わないでしょ、ね、副社長?」

雪乃が合図を送ると、周囲を取り囲んでいた男たちは司の腕を掴み、さらに猿轡を噛まされて身動きが取れないつくしを立たせて廊下の奥にある部屋へと押し込んだ。
廃屋かもしれないと思っていたが、今は使われていないホテルか旅館のような建物だった。
押し込まれた部屋は古いながらも豪華で広く清潔感があり、司とつくしが閉じ込められていた部屋とは用途も目的も異なる雰囲気を醸し出していた。

「古いけどまあまあね」

雪乃を睨みつけた司だったが、抵抗を続けていたため両手両足を縛られて床に座らされてしまう。
続けて大きな男の右脇に抱えられて連れて来られたつくしもまた、司のすぐ横に座らされてしまった。

つくしを庇うようにして前に出ると、目の前のソファに座ってふたりを見下ろす雪乃を睨みつけ、低い声で吐き捨てた。

「どういうことか、きちんと説明してもらおうか」
「ご想像の通りじゃないかしら?私があなたたちを連れ去ってここに閉じ込めた…」
「俺が聞いてるのはその理由だ!」
「あら、それだってわかり切ってることじゃないの?副社長…いえ司さんは私や両親が黙っているのをいいことに私との婚約をなかなか認めないし、そちらの弁護士さんは社長の遺言の内容を唯一知る人。私が目的を遂げるために必要なふたりをこちらへお招きしただけのことなのだけど…」
「なんだと?牧野は…!」
「いいえ、関係ないとは言わせません。遺言に書かれている内容は彼女しか知りえないことであって、私の願いと異なるものなら修正してもらうか破棄しなくてはならないもの」

つくしは遺言の内容を思い出す。
楓の遺した財産の一部は確かに司の「婚約者」である雪乃にも一部残される内容になっている。このまま遺言書を執行しても雪乃に莫大な財産が相続されることは間違いない。
しかしつくしの口から楓以外の人間にその内容を話すことは許されておらず、ただ黙ってこの場に座る以外につくしになすすべはなかった。









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2018/12/25 (Tue) 12:31 | REPLY |   

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2018/12/25 (Tue) 13:07 | REPLY |   

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2018/12/25 (Tue) 14:53 | REPLY |   

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