Answer 58 

「そんなのいやだよ!こんなところにあんただけ残して逃げるなんてできない。食事もくれて殺す気はないみたいだし、誰かが助けに来てくれるのを待つか、一緒に逃げる機会を待ってから…」
「そんなの待ってられっか。先にお前だけでも逃げろ」
「絶対にいや!それで道明寺がどうにかなったりしたら…」
「その時はその時だ。いいか、良く聞け。お前が無事に逃げられて…もし俺が死んだりしたら…その重荷をお前は一生背負って生きていけ。俺はお前を許す気はない。お前も許されるつもりがないならそれくらい平気だろ?」
「そんな…」

そう言ってはみたものの、司の本心ではない。
つくしにされたことを許したわけではなかったが、ここから生きて逃げてほしかった。

―まだ俺はこいつを愛してるっていうのか?

司は浮かんできた思いを打ち消すように頭を振る。

「いいな?次の食事の時だ。上手く逃げられたらすぐに助けを呼んでくればいいだけのことだ」
「でも…」
「つべこべ言うな!しっかりしろ!お前にはまだやるべきことがあるんだろ?」
「そんなの、あんただって一緒じゃない!」
「俺はお前の次でいい、とにかく言うとおりにしろ!」
「こんなの違う!ちがっ…!!」

次の瞬間、司は無意識につくしを抱きしめていた。

「頼む、言うとおりにしてくれ…この通りだ…」
「道明寺…」
「いいか、一瞬だ。俺が黒づくめを気絶させた時だぞ?」
「…わ…わかった…絶対…絶対助けに来るから…」
「期待しないで待ってっから」
「絶対に来るから…」

絶対に助けに来る、本当に助けに来られる保証なんてない。
それでもつくしは司を助けたかったし、司はつくしを逃がしたかった。

司はつくしの目をまっすぐに見つめ、つくしも司の目を見つめ返す。
そして司はもう一度つくしを強く抱きしめた。

「お前ならできる」


******


間隔を考えると、次の食事は夕食。上手くいけば暗闇に紛れることもできるが、外がどんな状態の場所かを知るすべがないことを考えるとそれなりにリスクはあった。

カタカタ…と物音がする。

黒づくめの男が食事を運んできた証拠だ。
司はドア横の壁に背中を押し付けると正面につくしを立たせた。両方の手をジグザグに組み、その時を待つ。

カチャリと鍵を開ける音がすると、ふたりは目を合わせて頷き合う。

―わかってんな?
―わかってるわよ

ドアが静かに開くと同時に、黒い影が部屋の中に入ってきた。
つくしが食事を受け取るのを確認し、司が渾身の一撃を後頭部に振り下ろすと黒づくめの男はバタリと床に倒れ込み、意識を失った。
念のため、体をひっくり返して鳩尾に一発食らわせると

「急いで着替えろ。準備出来たら決行だ」

つくしは黙って頷き、着ていたものを脱ぎ始めた。
司はこんな時なのになぜか照れくさくなり、顔を背けて着替え終わるのを待っていた。

「OK、できた」
「よし、それじゃ行くぞ」

つくしは大きく深呼吸をしてなんとか自らを奮い立たせようと必死になっている。

「世話の焼ける女だな」

苦笑いをし、外鍵を手渡すとつくしの背中を押して部屋の外へと追い出した。

―頼むぞ

司を心配そうに見つめるつくしから目を逸らし、ドアを閉めて下着姿になった男を部屋の中央に引きずり込んだ。

躊躇っていたところを無理矢理外に追い出されたつくしは、我に返って打ち合わせた通りに外から鍵をかけた。
古いアパートのように思っていたのに、意外にも部屋の外にはあちこちに似たようなドアがある。キョロキョロとしながら先へ進むと、人の話し声が聞こえてつくしは身構えた。
どこか逃げ道はないか。
物音を立てないようにそうっと歩くと非常階段のようなものが視界に入る。
きっとそこを出ればなんとかなる、根拠のない期待に胸を膨らませるとつくしは一歩一歩先へと進む。
ガラスの扉を開けて、音を立てないように降りて行く。あと数歩で降りきることができる、というところまで来た。
つくしは緊張しながら最後の一歩を踏み出そうとした。

「待ちなさい…逃げようとしても無駄」

背後から声が聞こえ、つくしは全身を強張らせゆっくりと声のする方へと振り向く。

「あ、あなたは…」

その姿を見て、その場に座り込んでしまった。









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2018/12/25 (Tue) 06:17 | REPLY |   

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2018/12/25 (Tue) 07:33 | REPLY |   

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2018/12/25 (Tue) 08:12 | REPLY |   

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