Answer 57 

それからふたりは出された食事はなるべく取るように心がけた。
ただ100%信用しているわけではなかったので、毎回食事が出されるたびに緊張感との戦いだった。
外の世界で何が起きているのか、心配は尽きなかったがここから出られない以上何もすることもないし会話もない。

司は大騒ぎになっているであろう自分不在の道明寺グループを思う。
創業以来の危機だというのに自分はこんなところに閉じ込められてなすすべもない。
ある程度のことは雪乃が処理しているだろうが決定権はなく、西田や山本がいてもどうにもならないだろう。
もし生きてここを出ることができたとしても、道明寺グループが存続できるかどうかはわからない。
ただ何もできない以上、心配しても仕方のないことだと司自身も驚くほど自然に割り切ることができていた。

一方のつくしは楓の遺言書のことを考えていた。
自分が拉致された原因はどう考えても楓の遺した遺言に関係することだ。遺言の内容を知るのはつくしだけであり、もし遺言書を無効にしたいと考えている何者かがいるとすれば、最悪つくしを葬り去るかもしれない。
せめて遺言書を預けてある貸金庫の場所さえ西田に教えていれば…考えるほど頭が痛くなった。

「なあ」

沈黙を破ったのは司だった。
これまで狭い空間に閉じ込められているというのに、必要最低限のこと以外会話を交わすことがなかった。突然話かけられて、つくしはつい

「…なに…?」

副社長と弁護士という大きな壁を作っていたのに、突然の語り掛けに『道明寺と牧野』の関係が顔を出してしまった。

「聞いてもいいか?」
「答えられることなら…」
「何もこんな場所で弁護士である必要ねぇだろ。俺も副社長じゃなく道明寺司としてここに閉じ込められてんだ、普通にしてくれ」
「うん…」

正直慣れてきてはいたものの、司と向き合うときはいつだって息苦しかったし、心が痛んだ。

「なんで、あの時俺から離れたんだよ」
「……」

つくしは大学に楓と西田が訪ねてきて、道明寺の法務部門で働かないかとスカウトしてきた時のことを思い出していた。
楓もこの世を去り、話しても差し支えないことならいいだろうと、ポツリポツリと語りだす。

「まだ大学にいた頃ね、あんたのお母さんが訪ねてきて将来道明寺の弁護士になってほしいって。アメリカの司法試験の為に経済的な援助をしてもらう代わりにあんたと別れようと思っただけだよ…」
「お袋に強要されたのか?」
「違う!援助をしてもらうのに無償ってわけにはいかない…。もともとあんたとあたしは釣り合わない関係だったし…あたしも弁護士になってバリバリ働きたかった…それだけだよ」
「そんなことで簡単に俺のことを切り捨てたのか?」
「そんなことって…だって考えてみてよ、あんたは将来ある身であたしなんかと一緒にいてもろくなことがない。それならお互いの為だって思わない?」
「だとしてもいきなりあんな状態で引き裂かれて納得できるかよ」
「それは…今でも申し訳なかったと思ってるし…許さないでほしいと思ってる」
「ああ、許せねぇな」

別れてからきちんと話し合いの場を持たなかった、お互いに持とうともしなかった。
それがこんな形で実現するとはなんとも皮肉な話だ。

「あたしもあんたに許してほしいなんて思ってない。あたしを憎んであんたの為になるんだったら、喜んで悪者になるよ」
「ハッ、笑わせんなよ。どれだけ俺をコケにすれば気が済むんだ。お袋もお袋だ、別れさせるにしてももっと方法があっただろ」
「あたしのことは一生憎み続けて構わない、でも社長のことは…社長は許してあげてほしい」
「お前だってあの女には散々バカにされてきたじゃねぇか!それをなんで庇うんだよ、死んじまってざまあみろくらいのこと思ったっていいくらいだろ?死ぬ間際まで病気のことですら俺や姉ちゃんに秘密にしたのも、よほど信用してなかったか息子を信用ししてなかっ…」
「違う!!」

司が言い終る前につくしは言葉を遮り叫んだ。

「違う、違うよ…社長は…あんたのお母さんは、あんたとお姉さんのこと、誰よりも愛してた…」

涙ながらに否定するつくしを見て、司は動揺し

「お前、何を知ってるんだ…?」
「それは…」

つくしは口ごもる。
これ以上話してしまえばすべてを司にぶつけてしまいそうだと思ったからだ。

「シッ!」

すると部屋の外から物音がした。この続きは出てから聞かせてもらう、と司は小声で言うと、物音のする方へと耳を澄ませた。
カタカタと音がするのはつくしにもわかったが、話し声までは聞こえてこない。そもそも外に人がいるのかどうかもわからない状況だ。

「いいか、次に食事が運ばれてきた時俺が黒づくめをぶっ飛ばす。ノビてる間に黒づくめの服に着替えてお前だけ外に出ろ」
「え、それじゃあんたは?」
「どう考えてもふたり同時に出るのは不可能だ、俺はここに残って次のチャンスを狙う。とにかくお前が突破口を作れ」
「そんな…!」









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

4 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/12/24 (Mon) 18:29 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

本当に何日監禁されてるんでしょうね…

このお話、時間の設定かなりテキトーなんです。
だって司とつくしが別れて2年って設定ですけど、弁護士資格取ったり留学したり、結構2年のスケジュールだと厳しくないですかね?だから最近は「2年以上」とか書いて誤魔化してます(笑)
でももういいんです。雰囲気だけ伝われば!!

2018/12/24 (Mon) 21:56 | REPLY |   

やこ  

はな様(拍手コメント)

こんばんは。いつも楽しみにして下さるということで本当にありがとうございます。
怒涛の3話更新、忙しいとお叱りを受けるかと思っていましたが、喜んでいただけてると言いお声が多く嬉しい限りです。
完結に向けて必死に頑張っていますので、お付き合いくださいませ!
また応援よろしくお願い慰します!!

2018/12/24 (Mon) 23:29 | EDIT | REPLY |   

やこ  

ku***n様(拍手コメント)

こんばんは、いつも拍手コメントありがとうざいます。
母親を亡くしたばかりだと言うのに、次々にトラブルが…。
いつか母親の優しい気持ちや偉大さに気づく時間が持てるといいなと思いつつ書かせていただいてます!
また応援お願いします(^▽^)/

2018/12/24 (Mon) 23:32 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment