Answer 56 

司がつくしの元へやって来てから丸1日が過ぎた。
ふたりとも出された食事には相変わらず手を付けず水分だけでなんとか凌いできたが、先に閉じ込められたつくしの体力は限界に近かった。
立ち上がってもフラフラしてまっすぐ歩くこともできず、倒れそうになる始末。
数回目の食事の差し入れの時、司はつくしに呟いた。

「食わなきゃそのまま餓死、食って毒でも入ってりゃ服毒死、どっちにしたって死ぬ。なんにも入ってないなら生きられんだ、食えよ」
「い…イヤです…」
「マジで死ぬぞ?」
「…」

確かに司の言う通りだった。このまま何も食べずに閉じ込められていれば惨めに餓死することは避けられない。だけど出された食事に手を出すことへの恐怖もぬぐえなかった。

「俺は食うぜ」
「え…」
「別に俺が死んでもお前にはカンケーねぇだろ?それよか何も入ってないことに賭けて体力付けて逃げ出す方法考える」

それだけ言うと、司は出された食事に手を付けた。

「あ…!」

それほど量が多いというわけではない。しかしよほど空腹だったのか、一瞬にして皿の上の食べ物は司の胃袋へと消えていった。

「グフッ!」
「ちょっ…!」

突然司が咳き込みだし、やはり何か盛られていたのだとつくしは真っ青になった。

「吐き出して!ねえ、死なないで、お願い!」
「グホッ、ゲホゲホ、ケホケホ…」

ハアハアと荒い息をしながら涙目になる司を見てつくしは続ける。

「ねえっ、お願いよもう!心配させないでよ!」

呼吸が楽になった司は胸を叩きながらつくしに言う。

「ちょっと気管支に入っただけだ。この通り、とりあえず何も入っちゃいねぇみたいだ。お前も食っとけ」
「でも…」
「バカか、俺が死ぬ覚悟で毒見してやったんだ!つべこべ言わずに黙って食って体力温存しておけ!」

司の迫力に根負けし、つくしはゆっくりと皿を引き寄せ恐る恐る口に運ぶ。
数日何も口にしていない体にいきなり詰め込んでも苦しくなるだけだと、ゆっくりとよく噛んでから飲み込んだ。

「おいしい…」

味が美味しいかどうかなどは関係なかった。
数日ぶりの食事に本能から出た言葉だったのだろう。
それを見た司は、

「プッ、こんな時でも美味そうに食うなんて、お前どうかしてんな」

そう言って微笑んだ。

司の笑顔を見るなんて何年ぶりのことだろうか。
つくしは思わず口を両方の掌で抑え、こみ上げてくる嗚咽を必死で堪える。瞳からは大粒の涙がこぼれ落ち、それを見た司は激しく動揺した。

「おい、どうした?!なんか入ってたのか?!」

―違う、そうじゃないの、あんたの笑顔を再び見れるなんて…

言ってしまえばどれだけ楽か。つくしは必死で嗚咽とこぼれる涙を抑え

「大丈夫、大丈夫です…」

それだけ言うのが精いっぱいだった。


******


「そうか、まだ見つからねーのか」

総二郎とあきらは防犯カメラからの追跡に行き詰っていた。コンビニやガソリンスタンドなどの防犯カメラにつくしを乗せたと思われる車が映っていたが、次第に田舎道へ入っていったようで防犯カメラのない場所へ向かったようだ。

「西田さんから何か手掛かりの連絡は?」
「ねーな。クソッ、どこへ連れていきやがった…」

悔しそうに唇を噛む総二郎を見つめたあきらは、彼の気持ちの変化に気付いていたが、何もいうことはできなかった。
恐らく総二郎もつくしをどうこうしようなどとは思っていないだろう。総二郎が気持ちを抑え込もうとしているのであれば、それを敢えて邪魔する必要もないしそんな資格もない。

「滋の奴、ナンバーより車種記憶してくれてりゃよかったのに」
「確かに、牧野はともかく司みたいな大男をどこかで乗せ換えるのは至難の業だ。きっと1台で移動してるだろうから司のほうから探ってみようぜ」

司の体格のことに触れた総二郎を見て、あきらはひとつのことに気が付いた。

「なあ、いくら司が疲れてても国産の乗用車に乗ると思うか?」
「そう言われてみればそうだな。ここ数年のあいつのことは知らねーけど、運転席と後部座席に壁があるゴツイ車にしか乗ってなかったよな?」
「そうか、そこから探れば見つかるかもしれない!あんなの日本に何十台もあるわけじゃないだろ?よし、それで行こう!」

なぜそんなことに今まで気づけなかったのか。突破口になるかどうかはわからないが、ふたりはかろうじて希望を見つけた気分だった。









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2 Comments

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2018/12/24 (Mon) 13:36 | REPLY |   

やこ  

スリーシスターズ様

ちょっとスリーさん!こんなところで泣いちゃダメですよ!
っていうか私の書くお話で泣く人っているんでしょうか?だとしたらすごく嬉しいなぁ。
だって感情を揺さぶれているってことですもんね。書き手冥利につきます!!
でもまさか子供たちの前では泣けませんもんね…。
母ちゃん何泣いてんの?(笑)
そういう私は、西郷どんの最終回を号泣しながら見てるとき、隣の嫁がネギもってやって来てとても恥ずかしい思いをしましたけど(笑)
今必死で終わらせようとしてますが、年内完結ギリギリでいけるか。。。

大晦日、5話更新とかになったらごめんなさい。

2018/12/24 (Mon) 21:53 | REPLY |   

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