Answer 53 

つくしがゆっくりと目を開けると白い天井に数本の蛍光灯が灯っていた。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、上体を起こして周囲を見回す。

生活空間と言うよりは古い会社のオフィスに使われていたような作りで、広くはなかったが事務机がひとつと、つくしが眠らされていたベッドがひとつあるだけ。
頭を押さえながらあちこち見て回ったが、まず入口と思われるドアは外側から鍵がかけられているのか、中から開けることはできなかった。
小さな窓らしきものもあるが、しっかりと閉ざされて今が昼なのか夜なのかも判断できない。

そもそもなぜ自分がこのような場所に連れて来られて、閉じ込められているのか。
滋から電話があってすぐに会いたいからタクシーを向かわせると言われ、迎えに来たと思ったタクシーに乗り込んだ結果、こうしてこの場にいる。
後方にいたタクシーに滋が乗っていたことを考えると、つくしが乗り込んだ車は滋の寄越したものではなく、つくしをこのような目に遭わせている黒幕が用意したと思うのが自然だ。

当然のことだがつくしが持って出た荷物は見当たらず、外部に連絡を取ることはできない。水道とトイレは備え付けられているし、体を拘束されてるわけではないのでまずは今の状態で何ができるかを考えなければ、つくしはそう決めた。

つくし自身がこうして狙われる理由、それはおそらく楓の遺言書のことに違いない。
しかし世の中で楓が亡くなったことを知る人はそれほど多くはなかったし、例え赤の他人が遺言書の内容を知ったところで、どうにかなるものでもない。

まだボーっとする頭でいろいろと考えを巡らせてはみたが謎は深まるばかりだった。

「とにかく、どうにかしなくちゃ…」


******


「なんだって?!牧野が?!」
「そうなの、本当にごめんなさい。まさか目の前で連れ去られるなんて…」

呼び出したつくしが目の前でつら去られて行く光景を何もできずに見ていた滋は、その足で総二郎に連絡を取って西門邸に向かった。
詳しいことは滋にもよくわからないと言い、念のため連れ去られた車のナンバーを覚えてはいたが、おそらくナンバーから足取りを追うことは難しいだろう。

「牧野が連れ去られた理由は恐らく道明寺と近しい他人だからだろう、俺達にも話せないくらいの重要機密を弁護士の立場で知っているからだろうな」
「どうしよう、つくしに万が一のことがあったら…」
「バカなこと言うな!無事に助け出す!」
「でもどうやって…」
「お前のところの兵隊はどれくらい動かせそうだ?」
「いくらでも出せるけど…機密を握ってるってことはそんなに大袈裟にできないよね?」
「俺のとこもそんなには無理だな…」

総二郎は頭を抱えてしまう。
まさか滋の目の前でつくしが連れ去れてしまい、行方をくらますなどとは思ってもいなかった。

「俺のほかに、このことを知ってるのは誰だ?」
「ニッシーだけ…類君やあきらくんは向こうに戻っちゃったし…日本ににるのはニッシーだけだもん」

つくしを交えてみんなで顔を合わせたあと、類とあきらはそれぞれの役割の為に日本を発った。例え桜子を巻き込んだとしてもあまり成果は上げられそうもない。

―類とあきらがいてくれれば…

「「そうか!」」


******


つくしが拉致されたという一報は、つくしに付いていたSPから西田に入っていた。
西田はこの事実を楓亡き今、目の前で繰り広げられている創業以来の経営難に立ち向かう司に伝えるかどうか迷っていた。
しかしどう考えてもつくしが拉致されたそもそもの原因は道明寺や楓に関わることだろう。
もしつくしの身にもしものことがあれば…西田は背筋が凍る思いだった。

水面下でどれだけ迅速に動くことができるか…
そんなことを思っていると、電話が鳴った。

「はい、西田でございます」

電話の相手は西田にも馴染みのある人間。
信頼できる相手であることが確認でき、安堵する。

「はい、そのことはSPから報告が…。そちらにはどういう経緯で…はぁなるほど…そう言うことでしたか。…こちらもどう対応すべきか…迷ってる時間はその分牧野様を危険にさらすことになりますし…とにかく足取りを探っていますが…」

そこまで言ったところで西田は目を瞠り言葉を失った。

「どういうことだ、牧野が危険にさらされるって…」

すぐにかけ直すと告げ電話を切ると、目の前に立つ司と雪乃に向き合い、ここまで来てしまえばどうにもならないと覚悟を決め、

「牧野様が何者かによって拉致されました」

そう静かに言った。









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2 Comments

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2018/12/23 (Sun) 13:06 | REPLY |   

やこ  

ごんた様(拍手コメント)

拍手コメントいただいておりながら返信が遅くなり大変申し訳ありません。
これまで朝っぱらからモヤモヤとしたお話ばかりで逆に申し訳ないなと思うばかり。
1日3話更新に変更して、楓さんが亡くなったあたりからお話がグーンと前進したようにお感じになられていると思います。
モヤモヤした気持ちのまま年を越すのは私もイヤなので、一気に公開にふみ切り気持ちのいい状態で新しい年を迎えましょう!
応援よろしくお願いします。

2018/12/24 (Mon) 13:08 | EDIT | REPLY |   

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