Answer 52 

つくしはできるだけいつも通りの生活を送ろうと努力していた。しかし司や道明寺のピンチに自分だけがこうして無関係を装って平気でいられるわけがなかった。
ジッとしていられず部屋の中をただウロウロとしていても気分が晴れるわけもなく、もどかしい気持ちでいた。

すると元々持っていた自分の携帯電話が着信していることに気が付いた。
話が出来れば誰でもよかったつくしは相手を確認することなく電話に応答した。

『つくし?!』
「し、滋さん?」
『うん!つくし今どこ?』
「マンションにいるよ。ちょっと家から出れなくて退屈…してたとこなの。連絡くれてすごく嬉しいよ」
『じゃ、時間はあるのね?今から出て来れる?』
「今から?大丈夫だけど…どこに行けばいい?」
『タクシー向かわせるから、それに乗って来てほしいの。20分後くらいでいいかな?』
「わかった、準備して待ってるね」

滋の態度はいつもと変わりないように見えたが、言葉の端々に焦りを感じられ単にお茶やランチで息抜きしようというものではなさそうだ。
部屋着から手早く着替えを済ませ時計を見ると、約束の時間が近づいていることに気づきつくしは施錠して表に出る。
外の空気を久しぶりに吸ったような気がして、つくしの気分は少しだけ晴れたような気がしていた。
暫く待っていると黒い車がつくしの前に到着し、ドアが開く。

「牧野様ですね?」
「あ、はい」
「どうぞ」

さすが大河原のお嬢様である。約束の時間ピッタリに、マンションに車を寄越すあたりは流石だった。
つくしが車に乗り込むと、後方からもう一台タクシーがマンションに横づけされるのが視界に入ったが、つくしは特に気に留めることもなくドアを閉め、ゆっくりと動き出した車のシートに深く腰を沈めた。

「…し…くし…!つくしっ!!!!」

かすかに名前を呼ばれた気がして後ろを振り返ると、後方に入ってきたタクシーから降り、大声を出してつくしの車を追いかける滋の姿が見えた。

「え?滋さん??どういうこと??すみません、停めていただけますか?」

乗る車を間違えてしまったのか、つくしはそう言って運転手に車を停めるように言うが、運転手は聞こえているはずなのに応じない。

「あの…聞こえてます?間違えみたいなんで降ろして…」

その時だった。運転手がつくしの方に振り返り、身を乗り出すつくしの口に白い布を押し付けた。

「ううっ!んっ… …」

―しまった!

そう思ったときにはもう手遅れで、つくしはそのままシートに倒れ込んでしまった。

「つくしーっ!!ちょっと!!待ちなさいっ」

滋が叫ぶ声もつくしの耳にはすでに届かない。


******


会社幹部に楓の死去とグループ全体の危機について話すと、今後どういう対策を取るべきかで意見が割れた。
細かい意見の違いはあったが、おおむねこのまますべてを公表して危機を乗り越えるか、楓の死去を隠したまままずは会社を立て直すのを優先すべきという意見に分かれ、双方の歩み寄りが見えない。
これだけ大きな会社の危機ともなれば慎重にならざるを得ないのは仕方のないことで、意見が二分するのは司にもわかっていた。

「埒が明かねぇな、続きは明日にしよう」

会議室から外へ出る幹部を見送りながら、司は頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。
楓がもう少し早く病気のことを自分に知らせ、こういう状況になった時どうすればいいのかを伝えてくれればこんなことにはならなかったものを、と。
右手の親指と人差し指を使って目頭を押さえていると、雪乃がコーヒーを司に手渡した。

「お辛いですね」
「ん?ああ、まあこうなっちまったもんは仕方ねぇけどな。流石にキツイ」
「少し副社長も休まれた方がいいかと。お体壊してしまっては元も子もありません」
「いや、もう少し今後の展開に目処がつくまでは…」
「私もできる限りサポートしますので」
「お前は…経営のプロフェッショナルから見てこの危機をどう思う?」
「そうですね、社長の死去を今のタイミングで知らせるという個人的な意見は理解できますが、リスクがかなり大きいかと思います。分散する意味でももう少し待ったほうがいいのかもしれないと思いますが…」
「だが、すでに幹部連中には公表した。口止めしてても漏れる可能性はある」
「確かにそうですね。それもあるので慎重に考えなければ…」
「参ったよ…」

珍しく弱音を吐く司を見た雪乃は、司の肩に手を置き

「大丈夫、そのために私が来たんです。少しゆっくり休みましょう」

雪乃の言葉に頼もしさを感じた司は、肩に置かれた雪乃の手の甲をポンポンと叩くと立ち上がった。

「今夜は少し休むか…」









拍手ボタンにオマケがあります
今日の運試し再び


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

あなたのポチが力になります
応援お願いします!
関連記事

1 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/12/23 (Sun) 10:11 | REPLY |   

Leave a comment